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第2話「理解不能な言葉」

「さてさて、ネロ様の可愛いお姿も見れたことだし、仕事をしますか」


 目立たぬよう、暗めの服に着替えた僕、タージは森の中を進んでいた。時折襲いかかってくる魔物――まぁ野良犬のようなものだ、それを蹴り飛ばして進む。



「人間を見るのは久しぶりだなぁ……」


 森の端まで辿り着いた僕は、近くの大木に登ってまだ遠くに見える人間の大群を眺めていた。

 オルタロスはまだ森の中だ。オルタロスの到着を待つ間、木の上で横になり未だ止まない雨を降らす鼠色の空を鬱陶しげに見上げた。




----



「ルディ、どうなると思う?」


 城に中で、タージの帰りを待つ私は側に控えるルディに声をかけた。

 ルディは200年前の激動の時代の経験者、私にとっては外の世界を知る頼りになる男だ。


「人間が何か新たな力を身につけておらず、200年前と変わっていなければ、オルタロス10匹は突破されるでしょう。それでも、向こう側には少なくない被害が出ると予想されますが」


「チッ、暇を持て余していたのは確かだがこんなのは望んでないぞ」


 私は生まれてこの方戦争というものを経験したことがない。多少の暇つぶしは望んでいたが、戦争など望んではいない。

 好き好んで人を殺めるようなことはしないのだ。それでも自分や仲間に害をなすとなれば話は別だが。

 

「まぁこのままでいても仕方が無い……か」


 そう言ってタージの連絡を待つ間、皆を落ち着かせるため、説明をして周り始めた。




 それから暫くの時が経ち、ある程度説明を終えた私は自室へと向かっていた。

 その途中で一組の親子がいた。どうやら子どもが泣いているようだ。


「大丈夫かなぁ……怖いよぉ……」

「安心しなさい、今ネロ様やルディ様が対策を立てている筈だから」

「そうだな、安心しろ!」

「ネロ様!」

「今、タージが情報を集めている。もう少し待っていてくれ」

「分かりました……。どうかよろしくお願いします」


 怖がっている子どもを見て思わず声をかけてしまったが、正直何をすればいいか分からない。

 激動の時代を知るルディやタージはともかく、私にとっては今回が初めての戦いだ。

 面倒くさいからぶちかます、という手がなくもないが、自分の強さがどれ位か分からない。人間がこの月日のうちに進化していたとしてもおかしくはない。

 情報がなければ動こうにも動けないのだ。


「……タージの帰りが遅い」

「おかしいですね、もうとっくに帰ってきていてもいい筈ですが……」


 もう既に雨はやみ、日付けはとっくに変わっている。辺りは闇に包まれつつも、東の空は微妙に黒が薄まっていた。

 自室へと入り、周りの者に聞かれぬよう声を小さくしてルディに聞く。


「まさか捕まった、とか?」


「どうでしょう。あのタージがそうやすやすと捕まるとは思えません。何かあったのでしょう」


 昔読んだ本では、オルタロスはC~A級冒険者(冒険者ランクはF〜SS)が3~5パーティ程集まって討伐する魔物だった。

 それが10匹。そう簡単にはやられず、適度に時間を稼ぎ、相手の強さを測るには丁度良いレベルだ。

 しかし幾ら苦戦したとしても、もうとっくに倒されていていい筈だ。なのにタージは帰ってこない。

 捕まった、あるいは相手に何か動きがあり探っているのだろうと当たりをつけたが、タージの隠密性を思い出し捕まったという考えを消した。


「ネロ様。後は私に任せてお休みになって下さい」


「いや、だがな…………分かったよ」


 正直まだまだ起きていたいのだが強引にベッドに寝かされる。1日の疲れもあり、思ったよりもあっさりと意識を手放してしまった。




----



 その男は、軍の先頭を歩いていた。後ろには何万という兵達が続いている。歩みを進める先には、森。様々な樹木が生い茂り、多くの生き物が生息しているであろうと予測されるその森は、奇妙な静けさに包まれていた。


「ここまでは予定通りだな」


 男は近くの兵達を眺め、まだそこまでの疲れは溜まっていないことを確認し、歩みを進める。そして再び目を森へと向けた時、黒く大きな何かが動くのを視界の隅に捉えた。


「なぁ、何か大きな魔物がいなかったか?」


 得体の知れない悪寒を感じたその男は近くを歩く男に声をかける。


「魔物……?そんなのどこに……いや、いるぞ。結構大きいか……?」


 鬱蒼と茂る木々の隙間から覗く眼を捉えたその男は、軍に魔物発見の知らせを告げる。そして再び顔を前へと向けた時、男の両眼は、森から歩み出す黒いとても大きな狼のような魔物の姿を捉えた。


「……!? オルタロスだ! しかも10匹!」


 幸か不幸か、その男はオルタロスを知っていた。男は周囲へ警戒を促し、気を引き締める。しかし、足は震える。本能は誤魔化せなかった。




----


 次の日、目が覚めて部屋から出てみると何やら玄関が騒がしい。

 何かあったのかと思い玄関に向かうと、たった今帰ってきたのであろうタージが靴を脱ぎ、皆に質問攻めにされていた。今……何時だろう。お昼前くらいだろうか、こんな時間まで外にいたとは。


「タージ、 無事だったのか」


「うん……僕は大丈夫」


 若干心ここに在らずな感じだ。少しそのことを訝しんだが、肝心の情報が聞けていない。


「それで、どうだった?」


「それが……」


「……?」


「滅んだ」


「うん?」


「パピロン、多分滅んだ」

 

 ……ソウデスカ。






「ちょっと待って、何がどうしてそうなった?」


 ショートした思考を復活させ、活動を始めた私は城の中、執務室にいた。

 再びタージを呼び、詳細を聞くためだ。先ほどの理解不能な言葉を理解するのを止め、何が起こったのか事細かに聞くことにした。


「僕もまさかあんな事になるとは思わなかったんだけど……」


 そう言ってタージは事の顛末を語り出した。



第2話です、どうだったでしょうか^^;

誤字脱字などありましたらお知らせ下さい。

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