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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
ラストフライト:激突! リボンVSゲイザー!
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セクション12:二度の混乱

 すぐさまフレアを撒いて、回避運動を行うリボン。

 動揺したせいか、かなり急激な回避運動になった。

 すぐに周囲を見回す。

 ミサイルを撃ってきた敵は、意外とすぐに見つかった。

 青空にきらりと翼を閃かせる、小柄な戦闘機。

 シャオロンだ。

 その機首は、明確にラプターへと向けられていた。

『……見つケタ』

 パイロットのたどたどしい言葉。

 それで、リボンは乗っているのがゲイザーだと理解した。

 こちらのレーダーの探知範囲外から回り込んで攻撃してきたようだ。

 だが、どうやって。

 いくらこちらのレーダーの範囲外から回り込もうとは言っても、探知できなければ何の意味もない。

 だが、シャオロンにIRSTが搭載されているという話は聞いた事がない。

 こちらを攻撃したという事は、何らかの形で探知ができているという事になるのだが、偶然にしては、あまりにもできすぎている。

 ラプターが他の敵を撃っている間に回り込み、懐へ飛び込むなど、計画的な動きと言わず、何と言う――?

「あいつ――どうして!?」

 リボンは混乱し始めていた。

 そんな中で、ロックオン警報が鳴り響く。

 シャオロンのレーダーは、既にこちらを捉えている。

 肉眼で見えるほど近づかれてしまっては、ステルス性能も無意味になる。ステルス機はどんなに近づかれてもレーダーで探知不能という訳ではない。

 こうなってしまっては、ラプターも『普通の戦闘機』として戦わざるを得なくなるのだ。

「ち……っ!」

 上等だ、とリボンは舌打ちした。

 急旋回で機首をシャオロンに向け、正対する。

 その直後、両機は一瞬で真横をすれ違った。

 リボンはシャオロンのコックピット内に、異様にその存在を主張する緑のスカーフを見た。

 たちまち、互いの背後を探り合う巴戦へと突入する両機。

 機動はほぼ互角で、なかなか背後を譲らない。

 いい機動性じゃない、とリボンは感心した。F-16より性能が高いと評された事があるという話を聞いた事があるが、あながち嘘ではないようだ。

 だが、それでも負ける気はなかった。

 ラプターは格闘戦でも最高峰の機体なのだ。簡単に負けはしない。

 その意志を証明するように、ラプターは、徐々にシャオロンの背後へと詰め寄ってきた。

 HUDの中に、ゆっくりとシャオロンの後ろ姿がスライドしていく。

「どうやったのかは知らないけど、あたしを見つけた事は褒めてあげる」

 リボンの戦意を表すように、ラプターの胴体両側面が開いた。

 中から現れたのは、2つのミサイルランチャー。片方には、サイドワインダーの模擬弾が搭載されている。

 そのシーカーがシャオロンを正確に捉え、ロックオン。

 甲高い信号音が、勝利宣言とばかりに鳴り響く。

「でも、ここまでよ! ミサイル発射(フォックス・ツー)!」

 迷わずリボンは発射ボタンを押した。

 だが、シャオロンの反応は早かった。

 すぐにフレアを撒いて、ラプターの正面から急旋回で逃れる。

 見えないミサイルは、リボンの意に反して呆気なく回避されてしまった。

「面倒臭い……!」

 ち、と舌打ちしながらリボンはつぶやく。

 ラプターに搭載できるサイドワインダーは、2発だけ。

 先制発見(ファースト・ルック)先制攻撃(ファースト・シュート)先制撃破(ファースト・キル)をコンセプトとするラプターにとって、優先度の低い武装だからだ。

 次で確実に当てなければ、『最後の手段』たる機関砲を使う羽目になってしまう。

 ラプターがドッグファイトをするとなれば、何かを間違えたのだ。そんな言葉がリボンの脳裏に浮かぶ。

 そんな矢先、聞き慣れない警報音がリボンの耳に入った。

「えっ!?」

 こんな時にマシントラブル?

 リボンは反射的に計器のディスプレイに目を下ろした。

 T字に並んでいる4枚のディスプレイの内、一番下には胴体の断面が表示され、ウェポンベイの状態を見られるようになっている。

 その中の、先程開いた両側面のウェポンベイで、エラーが表示されていた。

「閉まらなくなってる!? なんで!?」

 本来ミサイルを撃てばすぐに閉じるはずのウェポンベイが、閉じないのだ。

 開きっぱなしになっても、抵抗が増えるだけで飛行そのものに支障はない。

 だが問題は、一番の武器であるステルス性が大きく損なわれてしまう事だ。

 ウェポンベイに武装を収納するのは、高いステルス性を維持するためにある。故に、通常は武装を放った後すぐにウェポンベイは閉じる仕組みになっている。

 それが正しく動作しないという事は、ステルスという最大の武器が封じられたに等しい。

 リボンはすぐさまマニュアル操作で閉鎖を試みるが、相変わらず動かない。

 何度操作しても、結果は変わらない。

「もう、なんでこんな時にっ! 閉じてよこのっ!」

 リボンは、苛立ちを隠せず、思わずディスプレイを叩いた。

 だがその間に、シャオロンはラプターの正面を抜け出し、一転して背後に回り込んでいた。

 リボンが自ら反撃のチャンスを与えてしまったと気付くのは、ロックオン警報が鳴り響いてからの事であった。

「しまった!」

『発射』

 感情をまるで感じないゲイザーの声。

 直後、シャオロンから、()()()()()()弾丸がラプター目掛けて放たれた。

 赤い閃光が、コックピットの真横を掠めていくのを、リボンははっきりと見た。

「ええっ!? ちょっとまさか、実弾!?」

 リボン、二度目の混乱。

 模擬戦でまさか、本物の弾丸が飛んでくる事など、想像もしていなかったが故に。

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