表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
ラストフライト:激突! リボンVSゲイザー!
69/78

セクション09:現れたのは――

 眼下に広がる雲海の切れ目からは、僅かに青い海とそこに浮かぶ小さな島が見える。

 戦いの舞台となる、フリスト諸島上空に到達したのだ。

『戦闘空域に到達しました! 皆さん、作戦開始です!』

 ピース・アイの陽気な管制はいつも通り。

 だが、それを受けるツルギ達はというと、いつも通りではない。

『……あれ? もしもーし? 皆さーん、聞こえてますかー? 無線機の故障ですかー?』

 ピース・アイが不思議そうに問いかけてくる。

 自分の言葉に、何のリアクションが来ない事が不安になったのだろう。

 無理もない。

 空気が重い。

 ツルギでさえ、今は陽気なピース・アイの相手をする気には、どうしてもなれなかった。

 既に戦闘空域に入っていながら、未だ対戦相手たるラプターの姿は捕捉できていないのだ。

 もしかしたら、すぐそこにいるかもしれない。

 いや、まだ来ていないかもしれない。

 相反する推測に挟まれつつ、一同は揃ってレーダー画面をにらんでいた。

『聞こえてるぜ管制機さんよ! こいつらみんなテンパりまくってるけど心配すんな! オレ達がきっちり戦果上げて帰って来るからさ!』

 唯一答えたのは、サンダーだった。

 相変わらず勝利を確信する根拠のない自信が、その言葉から窺い知れる。

『さあさあ、打ち合わせ通りにやろうぜ姫様! いつでも指示を!』

『え? ええ、そうね』

 彼に催促される形で、ミミもようやく口を開いた。

 今回、6機編隊の指揮は、生徒会長たるミミに任されされている。

 彼女は、軽く咳払いをしてから、指示を下す。

『各編隊は、3方向に散開。探知の範囲を少しでも広げます』

『スパークリーダー了解!』

「あ、ブラスト1了解!」

 サンダーに少し遅れて、ツルギは慌てて返事をした。

 編隊は、機種毎に3つに分裂。指示通り3方向へと散開した。

 こうすればそれぞれのレーダーがカバーできる範囲が広がり、より広範囲を探査できるようになる他、まとめて撃破されるのを防ぐ意味合いもあるのだろう。

 ラプターには、最大で6発のAMRAAMを搭載できる。しかもそれを、相手に気付かれずに撃てるのだ。そんな相手を前に固まっていれば、たった一射で全滅してしまいかねない。

 そういう意味で、彼女の判断は妥当と言えた。

 離れていくミラージュとシャオロンの機影が、どんどん小さくなっていく。

 ツルギはしばしそれを見送ってから、計器のディスプレイに顔を戻した。

『固まったらやられるっつーけどさ、こんなんじゃ逆に分断されて各個撃破されそうな気がして嫌だなあ……「空では何が起こるかわからない」っつーしさ』

 バズが、スルーズ空軍空戦十箇条の1つを引用してぼやく。

『そういう時のためのデータリンクシステムですよ。電波妨害にも強いですし、そう簡単に切れたりはしません。データリンクシステムはまさにハートです。例え離れ離れになっていても、ハートとハートは繋がっている……うーん、かっこいいですねえ――』

 それを受けて、ピース・アイが励ますようにつぶやいた直後。

『あ、レーダー反応をキャッチしました! これは――敵性航空機です!』

 彼女の声色が、急に変わった。

「え、敵性航空機?」

「ラプターが見つかったの?」

 それは、耳を疑う言葉だった。

 シチュエーション・ディスプレイを見れば、確かに正面にピース・アイが捉えたものと思われる1機の機影が映っている。

 早期警戒管制機の目すら潜り抜けるラプターが、あっさり見つかってしまったというのか。

 だが、IRSTを使わなければ見つけられなかった相手が、こうもあっさり見つかってしまうものなのだろうか。

 ツルギが抱いたのは、そんな疑問だった。

『いえ、違います。これは――』

 案の定、ピース・アイが否定した。

 ウィ・ハブ・コントロール号のレーダーが、遂に機影を捉えた。

 レーダーはすぐさま、その電波反射特性から航空機の種類を導き出す。

 その結果を見て、ツルギは目を白黒させた。

「F-20タイガーシャーク!? これって――」

 ツルギが離陸前に飛んでいくのを見た、タイガーシャークだった。

 これに乗っているパイロットは、当然ながら1人しかいない。

「フロスティ教官!?」

 そう、ストームの言う通り。

 今向かってきているのは、リボンではなくフロスティ教官という事になる。

 それを証明するかのように、ミサイル警報が鳴り響いた。

「まずい、回避だ!」

 驚いている間に、先手を取られてしまった。

 タイガーシャークは中射程空対空ミサイルを使える事を、失念していたのかもしれない。

 2機のイーグルは、とっさに編隊を解いて急旋回し回避運動。

 その最中にチャフを撒き、何とかミサイル警報を消す事ができた。

『おいおいおいおい! フロスティが出てくるなんて聞いてねえぞ!』

 たまらないとばかりにバズが口を開くと。

『言ったはずだぞ。今回の敵は1機だけではないと!』

 タイガーシャーク――フロスティから、そんな通信が入った。

 直後、散り散りになった2機の懐へ、タイガーシャークが文字通り獰猛なサメのごとく飛び込んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ