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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
ラストフライト:激突! リボンVSゲイザー!
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セクション01:メイファン特製リンクシステム

・フライト3までのあらすじ

 練習機タロンを駆っても尚、2機の戦闘機を手玉に取る実力を発揮するリボン。

 一方で、ゲイザーらカイランの留学生が使用する戦闘機・シャオロンが遂に飛行可能となった。サンダーは、ゲイザーならツルギ達に余裕で勝てると宣言し、2人でブラストチームらとの模擬戦に挑む。

 ストーム・ツルギと対峙したサンダーは敗れるも、バズ・ラームと対峙したゲイザーは、驚異的な先読み能力で勝利。彼女は驚異的な視力の持ち主であり、相手の舵の動きから行動を予測していたのである……

「でーた――りんく?」

 格納庫で翼を休めるシャオロンの前。

 説明を聞いたゲイザーが、子供のように首を傾げた。

「そう、データリンクアル! このメイファンが手塩にかけて改良したリンクシステムを、遂に搭載したアルよー!」

 彼女の前で説明するのは、メイファン。

 相変わらずジャージという場違いな姿で、高揚した様子で説明を続けている。

「シャオロンがデフォルトで搭載していたリンクシステムは、スルーズが使用している西側規格のリンクシステムには当然ながら対応していなかったアル。でもあたしが受信だけならできるように改良したから、これで航空学園のメンバーとも共同戦線が――」

「おいメイファン。テンション上げるのはいいけどさ、ゲイザーちゃんが訳わからんって顔してるぞ」

 サンダーが制止に入る。

 はたと気付いたメイファンが、改めてゲイザーの様子を見ると、彼女は何が何だかわからないと言わんばかりの顔で、メイファンを無言で見つめていた。

「そ、そうアルね……もっとゆっくり喋らないと、聞き取れないもんね……」

 参ったなあ、と言うように頭を掻きながら、視線を泳がせるメイファン。

「じゃあ、とりあえず――使い方、教えよっか」

「……ン」

 迷った末に出した言葉に、うなずくゲイザー。

 じゃあこっち来て、とメイファンはシャオロンのコックピットにゲイザーを招き入れる。

 マニュアルと思われる書類を手にしつつ、コックピットに入ったゲイザーに説明を始めた。

 しかし、どうもうまく行っていないようで、メイファンは説明に難儀しているようだ。

 言葉が通じにくいのなら、致し方ない事なのかもしれないが。

「何の話してるの?」

「シャオロンに新しいデータリンクシステムを作って搭載したんだって。スルーズが使ってるリンク16を受信だけできるようにしたっていう」

「自分で作っちゃったの!?」

「ああ、ソフトウェア開発に関わってたってだけはあるよ、本当に」

 それを傍から見ていたツルギは、ストームに概略を説明する。

 一方で、ゲイザーへの説明にかかりきりになってしまったメイファンを見て、サンダーは退屈そうに両腕を後頭部へ回し、

「データリンクかあ……こんなの覚えた所で使うとこあんのかなあ……」

 と、いかにも勉強を嫌がる小学生みたいな事を、天井を見上げながらつぶやいている。

 すると、

「何言ってるアル、サンダー! カイランだって今、防空システムの近代化進めてるアルね! 中国が提供してるのは戦闘機だけじゃないアルよ!」

 怒りの視線を向けたメイファンの注意を受ける事となった。

 一瞬、びくっと身を震わせたサンダーであったが、

「ああ、そーだったのか、うちでもネットワーク戦やる気あるのね。はいはい」

 苦笑しながら、肩をすくめてそう言ったのだった。

 普段の実習でも日々世話になっている、データリンクシステム。レーダー基地や他の戦闘機などとネットワークで繋ぐ事で、探知した目標データを共有する。これによってこれまで言葉で伝えていた目標情報を瞬時に共有できるようになり、まさに現代戦に欠かせないものだ。

 しかしその規格は、出自が異なるスルーズ軍機とカイラン軍機では当然異なる。

 スルーズが使用しているリンク16は、NATO諸国を始めとする欧米の軍隊が共通規格として採用しているものであるが、そもそも欧米規格とは異なる中国製の航空機であるシャオロンのものは当然ながら対応していない。

 それでは共同作戦に支障をきたすという事で、メイファンが独自の改良を施したという事だ。

 これで、限定的ではあるが今後の共闘が容易になるだろう。将来カイラン軍もデータリンクシステムを防空システムに導入するとなれば、ゲイザー達にとっても決して無駄にはならない学びになるだろう。

 そんな時だった。空からジェットエンジンの轟音が聞こえてきたのは。

「ん?」

 ふと、ツルギは車いすを反転させて、若干雲が多めな空を見上げる。

 滑走路の右側――東側から、編隊を組んで飛んでくる戦闘機の姿が、そこにあった。

 イーグルの4機編隊。

 斜め一列――エシュロン隊形を組んで飛来した4機は、先頭から1機ずつ編隊からゆっくり右旋回して離れていく。

 着陸のための編隊解散、オーバーヘッド・アプローチだ。

 1機ずつ海側を旋回して着陸態勢へ入って行ったイーグルは、どれも軽装だった。

 実習飛行から戻ってきたらしい。

 乗る学生達がどんな実習をして来たのか、ツルギには知る術がないが、間を置かずしてやってきたもう1機の機影が、答えとなった。

 単機でやってきたそれは、ラプターだ。

 先程のイーグル編隊とは異なり、より高速かつより低めに進入してくる。

 くるりと素早く1回横転(ロール)すると、そのまま同じように右へ旋回。

 ただ角度は急で、そして上昇しながら行っていた。

 コンバットピッチと呼ばれるその機動からは、どこかいい事があってうきうきしながら帰ってきた子供のような感情を感じた。

「また勝ってきたみたいだな、リボン」

 ツルギは、ラプターとその乗り手たるリボンが、また空の戦いを制した事を容易に推察する事ができたのだった。

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