表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
59/78

セクション17:雑草優等生

「とんでもなく目がいい……!?」

「飛んでいるハエの足の数がわかるって、ええ――!?」

 ストームとツルギは、揃って声を上げてしまった。

「ねえツルギ、飛んでるハエの足の数がわかるって、どのくらい目がいいのかな……?」

「いや、僕に聞かれても……」

『視力か? 検査した時は「測定不能」だったって話だぜ』

「そ、測定不能!?」

 さらに2人の声が重なる。

『まあ当然さ。ゲイザーちゃんの目はいろいろ武勇伝があるからな。2キロ先の人の顔がわかるとか、屋上からでも地上にある本の中身がわかるとか――』

 息継ぎもなく得意げに、早口で具体的な説明を続けるサンダー。

 信じがたい話ではあるが、信じられない話でもない。

 彼女は、肉眼で見えないはずの遠く離れた軍艦を、見えると語った。

 彼女は、肉眼で見えないはずの遠く離れたラプターを、変な飛行機として見つけた。

 それも、驚異的な視力によるものなら全て説明が付く。

 視力は、パイロットにとってなくてはならないものだが、ここまであるとなれば規格外だ。

 どうやらバズとラームは、とんでもない相手を敵に回してしまったようだ。

『くそっ、こうなったら――!』

 ツルギらの話など聞いている余裕もない2人の機体は、相変わらずゲイザー機に置きかけ回されている。

 それに痺れを切らしたバズは、最後の手段とばかりに、機体を左へ降下旋回。

 その先にあるのは、床のごとく広がる白い雲。この中へ飛び込もうという算段のようだ。

 だがゲイザー機は、追いかける事なく機首を上げ、上昇旋回へと転じる。

 2つに分かれる2機の軌跡。

 バズ・ラーム機が雲の下へ潜っていくのを、ゲイザーはじっと見届ける。

 そして後を追うように、機体をダイブさせた。

 だが、その方向はバズ・ラーム機が消えて行った方向よりも、かなり右側だった。

 海に飛び込む水鳥のように、雲の中へと消えていくゲイザー機。

 以降、無線は何も入らない。

 雲海の上は、何もなかったかのように静寂を取り戻す。

「……どうなったんだ?」

 息を呑んで、ツルギは事の成り行きを見守る。

 そして。

 雲の下から悠然と浮上したのは、ゲイザーのシャオロンだった。

『……ゲームセット! ウィナー――スパーク2!』

 ピース・アイが、ゲイザーの勝利を告げる。

 雲の下での静かな戦いを制したのは、ゲイザーだった。

『さすがだぜゲイザーちゃん! 雲の下に行く時の動きまで読んでたんだな!』

『……アリガト』

 早速機体を合流させて褒めてくるサンダーに、ゲイザーはそれだけ答えた。

『くっそー、雲の下にまで行けばはぐらかせると思ったんだがなー』

 一方で、悔しそうに吐き捨てるバズの声もする。

 彼の心情を表してか、バズ・ラーム機は一向に雲の下から出てこない。

『バーカ、どうせ潜る直前に操縦桿動かしてたんだろ。ゲイザーちゃんはそれさえ逃さないんだからな!』

『くうっ、何も言えねえ……っていうか、なんでそんな事がお前にわかるんだよ!』

『そりゃ長い付き合いだからさ、ゲイザーちゃんとは。とにかくわかっただろ? これが戦争してる国としてない国の違いってヤツさ』

 宣言通りゲイザーが勝利を収めたせいか、サンダーは機嫌よくバズを罵ってくる。

 当の敗者であるバズは何も文句は言えず、ツルギもそれを擁護できない。

 ゲイザーの真の力を、目の前で見せつけられてしまったが故に。

『はは、まさに雑草優等生ですね……アフリカにもこういう候補生がいるとは、恐るべし……』

 ただひとり、ピース・アイだけが苦笑しながら言っていた。

『ゲイザーちゃん、1対1ならあのアメリカさんにも勝てるよな?』

『……エ、何?』

『だから、あのアメリカさんに、勝てるだろ、ゲイザーちゃんなら!』

『……ウン』

 サンダーの問いに答えるゲイザーの声は、ぼんやりしていてどこか頼りない。

 だが、それを聞いたサンダーは、そうだよな、と確信しているかのように、ふふっ、と笑ったのだった。


 かくして、留学生達の最初の模擬戦は終了した。

 ツルギ達の脳裏に焼きついたのは、レポートで書くべきシャオロンの性能よりも、それを操るゲイザーの、常人離れした能力――視力を駆使した戦いぶりだった。


 フライト3:終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ