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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
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セクション16:ゲイザーの力

『まずっ!』

 とっさに右へ転身するバズ・ラーム機。

 その腹を、まるで体当たりするような勢いで通過していくゲイザー機。

 だが、このままでは終わらない。

 急降下した勢いのまま、上昇して再度バズ・ラーム機に襲いくる。

 完全に一度上手を取られてしまった事が、裏目に出てしまっていた。

『兄さん、後ろにつかれます!』

『ちっ、狙われたら終わりだぜ……!』

 ロックオン警報。

 背後を取られ、追い詰められたバズ・ラーム機。

 それに足掻こうと、突如右への横転(ロール)を開始。

 ランダムな機動を行う事で、機関砲の狙いをつけにくくするのだ。

 まるでプロペラのように、ぐるぐると何度も回る。

 ゲイザー機も、それを真似するように横転(ロール)を繰り返す。

 2機の追いかけっこは、こう着状態に陥った。

 いくら有利な位置を取ろうとも、自機・目標共に安定しなければ、正確な射撃は望めない。故にゲイザーは攻めあぐんでいる。

 その間、バズとラームは反撃のチャンスを窺う。

 そして。

『今だ!』

 バズは、好機とばかりに操縦桿を水平に戻す。

 バズ・ラーム機の横転(ロール)が、背面になった所で一瞬止まる。

 さらに、バズは操縦桿を奥へ倒す。

 するとバズ・ラーム機は、()()()()()()()で急上昇した。

 所謂、逆宙返りだ。

 通常は機首上げ――つまり背の方向へ向けて行う宙返りを、機首下げ――つまり腹側へ向けて行う宙返り。故に逆。

 機体強度の関係で通常の宙返りほど激しくはできないのが難点だが、意表を突くには充分有効だ。

 バズ・ラーム機に合わせて横転(ロール)していたゲイザーから見れば、急に真下へ消えたように見えただろう。

 それを証明するように、ロックオン警報が切れた。

 ある程度上昇した所で、操縦桿を緩めるバズ。

『へへ、どうだ! これで振り切れただろ――』

『兄さん!』

 ラームの驚きの叫びが、バズの確信を遮った。

 直後、再度鳴り響くロックオン警報。

 バズは驚いて振り返る。

 そこにいたのは。

『まだ追って来ています!』

 フェイントに乗せられたはずの、ゲイザー機であった。

『何!?』

『発射』

 ゲイザー機がトリガーを引いたのと、バズが操縦桿を倒したのは、ほぼ同時だった。

 間一髪、見えない弾丸は回避された。

 だが、ゲイザー機は尚もバズ・ラーム機に追いすがる。

『あのフェイントに引っかからなかったなんて、やるなあいつ!』

『それよりどうするんですか兄さん!』

 バズとラームの劣勢は、依然として変わらぬまま。

 それからというものの、バズ・ラーム機は何度もさまざまな機動を試みるが、どの機動にもゲイザー機はしっかりとついてくる。

 どうやっても振りきれない。

 バズとラームは逃げ回るのが精一杯の状態だ。

 それは一体なぜなのか。

 空戦の様子を見守るツルギは、それがわからなかった。

 だが。

「ねえツルギ」

「どうした?」

「なんかゲイザー、バズ達が旋回する前から動いてない? 一瞬だけど」

 ストームが、気になる言葉を口にした。

「旋回する前から……?」

 ツルギは改めて、ゲイザー機の機動を注視する。

 確かに、ゲイザー機の機動のタイミングは、バズ・ラーム機の動きとほぼ一致している。

 ストームの言う一瞬の差はよくわからないが、あまりにもタイミングが良すぎなのはわかる。

 それこそ、完全にシンクロと言ってもいいくらいだ。

 どうしてそんな事ができるのだろうか。

 相手の動きが最初からわからない限り、そんな事はできないはず――

「まさか」

 そこまで考えて、ツルギは1つの結論に行きついた。

「全部、読めているのか……?」

 そうとしか考えられない。

 ゲイザーは、バズ・ラーム機の行動を全て先読みしている。

 だが、どうやって。

 初見であそこまで正確に行動を読めるパイロットなど、ベテランでもいるかどうかわからないというのに。

『そうさ! ゲイザーちゃんにはあいつの動きなんて全部御見通しなんだよ!』

 すると、サンダーが得意げに語り始めた。

 ストームが、彼に問いかける。

「御見通しって、どうして?」

『舵とかの動きを見てるからさ』

「え……?」

 サンダーの言っている事が理解できなかったのか、ストームが声を裏返す。

 だがその気持ちは、ツルギも同じだった。

『どんな飛行機も動く前には必ず予備動作があるだろ? 舵を動かして初めて旋回とか上昇とかできるし、エンジンもふかして初めて加速できる。だからそれを見れば、これからどう動くかはわかるのさ』

 サンダーが語る理屈は、よくわからない。

 ツルギは、思わず疑問を口にしていた。

「じゃあ、なんでそんな事ができるんだ……?」

 彼の語る事は、確かに舵などの動きが見えればできる事だ。

 だがそんな事、普通のパイロットにできるはずがない。

 飛行中の機体の舵の動きを見るなどと、普通の空中戦ではまずできないはずだ。

 仮に見える位置まで近づいたとして、そこに意識を向けられるパイロットなどいるのだろうか。いや、いるはずがない。

「それこそ、そんなのが見えるとしたら――」

 だが。

 そこまで言い掛けて、気付いてしまった。

 舵の動きが見える、という事は。

 それができるだけの能力を、ゲイザーが有しているという事。

 見えるという事は、つまり――

『ああ、そうだ。ゲイザーちゃんはとんでもなく目がいいんだよ! 飛んでいるハエの足の数がわかるくらいにな!』

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