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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
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セクション15:ストーム&ツルギVSサンダー

 青空の中に、ぽつりと浮かび上がる1つの機影。

 それが、向かってきているサンダー機だ。

 音速を超える相対速度。

 機影はあっという間に大きくなっていき、刹那の内にすれ違う。

 それが、模擬戦開始の合図となった。

『遅れながらラウンド1、スタート!』

 ピース・アイが高らかに試合開始を告げる。

 早速2機は、互いに旋回して背後を探り合う巴戦へと突入。

 だがそれは、1分たりとも続かない。

 ウィ・ハブ・コントロールは、あっさりとサンダー機の背後を取り、流れを掴む。

『へへっ、しっかりついて来な!』

 だが。

 それさえも、サンダーは待っていたかのようだった。

 サンダー機は、ウィ・ハブ・コントロール号の狙いを定めさせないように、左右への切り返しを繰り返す。

 その動きは、暴れ馬のごとく激しい。

 さしものストームも、追いかけるのに苦労している様子だ。

「もうっ、何なの、この機動性……!」

「こりゃ、F-16と、いい勝負だ……!」

 血が上らない頭で思い起こすのは、かつてファングが操縦していた戦闘機、F-16。

 その機体の機動性も相当なものであり、ファング自身の技能も相まって多くの生徒達が苦しめられた。

 フォルムも似ている事もあり、自然とその姿がシャオロンと重なる。

 だが、相手は教官ではない。

 その機動性に飲み込まれさえしなければ、勝機はあるはず。

「降下だ!」

「ウィルコ!」

 ツルギの指示で、ストームは追跡を中断し、降下に転じる。

 相手の機動に乗せられるのを避けるためだ。

 旋回を繰り返して消耗した速度エネルギーを、降下して勢いをつける事で補う。

 降下を止めて水平に戻すと、機体は水上機のごとく、雲の海へと着水した。

『どうだ――ん? いない?』

 サンダーは、ウィ・ハブ・コントロール号が追いかけていない事に気付いたようだ。

 だが動きが緩んだ所を見ると、見失っている様子。

「今だ撃て!」

 ツルギの一声で、ストームが顔を上げる。

 その視線がサンダー機を捉えたと同時に、ヘルメットのバイザーがミサイルをロックオン。

ミサイル発射(フォックス・ツー)! ばーん!」

 ミサイル模擬発射。

 見えないミサイルが、サンダー機目掛けて上昇していく。

『な、どこから――!?』

 動揺したサンダーの声。

 そのせいか、サンダー機は回避運動を一切行わず、見えないミサイルをもろに浴びる事となった。

 撃墜を知らせる電子音。

 模擬戦は、予想以上に呆気なく終わってしまった。

『ゲームセット! ウィナー、ブラスト1!』

「やったあっ――痛っ! 勝ったーっ!」

 ストームは思わず突き上げた拳をキャノピーにぶつけながらも、喜びの声を上げる。

『ちっ、下にいたのか……そうか、ヘッドマウントディスプレイ! スルーズにはそれがあったか……!』

 そしてようやく起きた事に気付いて、舌打ちしながらつぶやくサンダー。

『おいおい、あんな大口叩いといてその程度かあ? 話にならねえなあ、サンダーよお?』

 そんな彼を、バズが煽ってくる。

 バズ・ラーム機は、一連の戦いをより高い高度から見守っていたのだ。

 おいバズ、とツルギは注意したが。

『……ふふ、いいさ。オレは別に負けてもいい。オレの敗北を持って作戦を成功とする……』

 サンダーは、負け惜しみなのかどうかわからない言葉を、自嘲するように口にした。

 ツルギは首を傾げてしまう。

 自分の負けで作戦の成功、という言葉の意味を測りかねて。

『後は、頼むぜ、ゲイザーちゃん……!』

 最後にそう言い残し、サンダー機が離脱する。

『リョーカイ。げいざー、攻撃開始』

 それと入れ替わるように、新たなシャオロンが姿を現す。

 ゲイザー機だ。

『よし、俺達の出番だな! 行くぞシルヴィ!』

『はい!』

 すぐさま、バズ・ラーム機が迎え撃つ。

 赤いバンドが描かれた右翼を翻し、ゲイザー機へと向かっていく。

 それを、ウィ・ハブ・コントロール号は距離を取って見守る。

『行けーゲイザーちゃん!』

「サンダー、余計な口出しはしないで」

 ツルギは声を上げるサンダーを注意する。

 そんな中で。

『ではラウンド2、スタート!』

 ピース・アイの言葉を合図にするように、正対した2機はほぼ真横ですれ違う。

 直後、バズ・ラーム機は素早く垂直上昇に転じる。

 それに合わせるように、ゲイザー機もまた上昇に転じる。

 2機は、ほぼ同じ速度で宙返りし、その頂点で再度正対。

『向こうも、上昇してます!』

『そうか、上等だ!』

 バズとラームが確認し合う中でも、ゲイザーは黙ったまま。

 今度は背面の姿勢で、2機がすれ違う。

 バズ・ラーム機は、そのまま宙返りを続行。

 降下に転じ、軌跡が大きな弧を描く。

 だがその先に、ゲイザー機はいない。

 バズ・ラーム機と異なり、宙返りを続行していなかったのだ。

『シルヴィ、どこ行ったかわかるか?』

『……あ、上です!』

 ラームに指摘され、頭上を見上げるバズ。

 そこにあるのは、かんかんと照りつける太陽。

 その光を後光のように受け、急降下してくるのはゲイザー機。

『ソコっ!』

 ゲイザーの叫びと共に、まるでトビウオのようにバズ・ラーム機目掛けてダイブした。

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