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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
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セクション09:ゲイザーと夕食

「ツルギ、もしかして怖いの?」

「あ、あのなあ……あんな騒動が起きた後なら、普通誰だって抵抗感じるぞ?」

「大丈夫だよ。なんかあたし、ゲイザーは悪い人じゃない気がするから」

 ストームは、意外な発言をした。

「悪い人、じゃない? どうして?」

「うーん、うまく言葉にできないけど、そんな気がするの。直感?」

 どうも信用できない理由。

 ストームは、自分にはわからない何かを感じ取っているのだろうか。

 そんな疑問を抱いていると。

「何ノ、話……?」

 ゲイザーに不思議そうに声をかけられ、ツルギは現実に引き戻された。

 彼女は恐らく、自分達が何の話をしているのかを理解していない。

 現れた途端、急に訳のわからない話を目の前でし出したら、誰だって不安になるだろう。

「いや――何でもない。ストーム、食べようか」

 仕方ない。

 ここはいい機会だと思って、彼女の話に耳を傾けてみるか。

 ツルギは疑問を棚上げして、状況を受け入れる事にした。

 ストームによって、車いすがゲイザーの向かい側へ移動される。

 その隣の席に、ストームが腰を下ろす。

「とりあえず、ゲイザーが好きそうなもの買ってきたよ。どれ食べる? 選んで選んで!」

 ストームは、置いたトレーからゲイザー用と思われるものをテーブルに置き、ゲイザーの前に次々と差し出す。

 ゲイザーは、しばしそれをじっと見ていたが、

「……ア、よーぐると」

 真っ先に目を付けたのが、ヨーグルトだった。

 迷いなく手を伸ばし、容器の蓋を開けると、思い出したように席を立つ。

 そして間もなく戻って来た彼女の手には、スプーンとなぜか飲み物用の砂糖の袋が複数握られていた。

 席に着くと、すぐさま袋を全て開け、山盛りとなった砂糖をヨーグルトに混ぜてから、スプーンでもくもくと口に運び始める。

 表情はあまり変わっていないが、その目は心なしか輝いているようにも見える。

「ゲイザー、ヨーグルト、好きなんだ?」

「……ン」

 子供をあやすように言うストームに、スプーンを頬張ったままうなずくゲイザー。

 ストームの言う通り、もしかしたらゲイザーはヨーグルトが気に入っているのかもしれない。

 とはいえ、砂糖の袋を7つも開けるのは、いくら何でも入れすぎである。

 それでも平気な顔をしている辺り、結構な甘党なのだろうか、とツルギは思ってしまった。

「えーっと……」

 さて。

 まず何について話そうかとツルギは考える。

 いきなりあの騒動についての真意を聞く訳にもいかない。

 とはいえ、彼女が答えてくれそうな世間話というのも、なかなか浮かばない。

 ツルギ自身も、まだゲイザーの事はよく知らないのだ。

 悩んだ末、1つ話題が思いついた。

「待ってる、間、ずっと、空、見てたのか? 何もない空、見ても退屈、しない?」

「平気。目ノためダカラ」

 ゲイザーはそれだけ答えた。

「目の、ため?」

 ツルギには、その理由がわからない。

 空を見上げた所で、目には何もいい事ないんじゃないか、と考えてしまう。

 やはり、彼女は何を考えているのかわからない。

 そんな中、ゲイザーが目を付けたのは。

「コレ、何?」

 ストームが持ち出していた、ハンバーガーだった。

「それは、ハンバーガー、っていうんだよ」

「はん、ばーがー……」

 ストームの言葉を、ゆっくりと繰り返すゲイザー。

「はい」

 包みを開けて、ゲイザーの前に差し出すストーム。

 ゲイザーは手に取るとすぐに、不思議そうにいろいろなアングルから観察し始めた。

 どうやら、ハンバーガーは初めて見るようだ。アフリカ人なら仕方ないかもしれない。

 食べ方がわからないのか、上のパンを1枚取ってしまう。

「ああ、ちょっと! パンだけ食べてもダメだよ」

 ツルギはとっさに待ったをかける。

 ん、とゲイザーの不思議そうな視線が、ツルギに向く。

「えっと――そうだ、こうやって、一辺に、食べるんだ」

 ツルギは、とっさにもう1個あったハンバーガーを手にし、そのまま被りついた。

 実演を見て納得した様子のゲイザーは、すぐにパンを戻して実演通りに被りつく。

 そして、じっくりと味わうように、何度も噛んでいる。

「どう? 西洋の味は?」

「……オイシイ」

 ストームに対して、素直な感想を言うゲイザー。

 どうやらお気に召してもらえたようだ。

「でしょー! あ、ツルギ、口にまだついてるよ?」

「え?」

 そんな時、不意に何か湿ったものがツルギの口元に触れた。

 見れば、いつの間にか間近にある、ストームの顔。

 触れたものの正体は、ストームの舌だったのだ。

「あ、こっちにも――」

「こ、こら……! ゲイザーの前でそれは、やめろって……!」

 なおも顔を近づけてくるストームを、ツルギは顔を熱くしながら引き剥がした。

 全く、油断も隙もない。そう思いつつ。

 一方で、そんな2人などお構いなしとばかりに、ハンバーガーを味わい続けるゲイザー。

「そ、そうそう! 味が物足りないって思ったら、そこにある塩コショウとか使っていいからな!」

 ツルギは口元を拭きつつ、テーブルの隅に並べられた調味料のボトルを指差して言う。

 だが、言い終わってから早口になっていた事に気付いた。

 ゲイザーはボトルをしばし眺めた後、何を思ったか赤いボトルを手に取った。

「コレ?」

「いや……それは、ハバネロだぞ」

「はばねろ?」

 不思議そうに、ハバネロソースのボトルを見つめるゲイザー。

 この子はハバネロも知らないのか、と内心呆れつつも、ツルギは端的に説明する。

「辛みだよ、辛み。一滴だけでも、辛くなるんだ」

「……ナンデ、一滴だけ?」

「え!?」

 彼女の素朴な疑問に、ツルギは声を裏返した。

 そんな事まで説明しなきゃならないのか、と驚いてしまった故に。

「いっぱい入レタら、ダメ?」

「そ、そんな事、したら、滅茶苦茶、辛くなるぞ」

「メチャクチャ……どのクライ?」

「それは――多分、死ぬほど」

 あくまで落ち着いて、言葉を区切りながら答えるツルギ。

 ここで慌ててしまって、通じなかったら元も子もないと自分に言い聞かせつつ。

「死ぬ、ホド……」

 ゲイザーは改めて、ハバネロのボトルを見つめる。

 とりあえずは納得してくれたようだ、とツルギが胸を撫で下ろしたのも束の間。

 何を思ったか、ゲイザーはボトルを開け、ハンバーガーにハバネロを思いきりかけた。

「そんなものより――って、ゲゲゲ、ゲイザー何やってるの!? かけすぎだよ!?」

 それを見た途端、目を見開いて声を上げるストーム。

 はて、何か変な事をしたのだろうか、と言わんばかりにゲイザーは首を傾げるだけ。

 その間にも、ハンバーガーは見る見る内に赤く染まっていく。

「な、何やってるんだ! 無茶にもほどがあるぞ!」

「辛すぎて喉おかしくなっちゃうよ!?」

「……? モイッカイ」

 ツルギも加わるが、通じていない。

 そこで、自分が早口になっていた事に気付き、落ち着いて伝える事にする。

「それは、かけすぎだ! 死ぬほど、辛くなるって、言ったじゃないか!」

「ダカラ、食べてミル。やってみなキャ、ワカラナイ」

 だが。

 ゲイザーは平然と答え、赤く染まった狂気のハンバーガーを手に取る。

 どうやら彼女は、本気で食べるつもりらしい。

「だ、ダメだゲイザー!」

「ダメだよーっ!」

 2人が止めるのも聞かず、ゲイザーは寸分の迷いも見せずにハンバーガーを口に頬張った。

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