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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
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セクション06:ハンデキャップマッチ

『さー、皆さんお待たせいたしました! 史上最強の候補生リボンと、姫様率いるアイスチームとのハンデキャップマッチ、いよいよ始まりです!』

 無線を通じて流れてくる、陽気なナレーション。

 恐らく、駐機場(エプロン)にも流れているのだろう。

 その声は、なぜか聞き覚えがあるものだった。

『実況はわたくし、みんなを上から見守る早期警戒管制機、ピース・アイが地上からお送りします!』

「えっ、ピース・アイ!? なんでここにいるんだ!?」

 その名前に、ツルギは耳を疑ってしまった。

 普段ここには姿を現さないという彼女が、ここにいるというのか。

 今までここではほとんど素顔を見た人がいないだけに、彼女のサプライズ登場には集まった生徒達も驚いている様子だった。

『では、ルールを説明しましょう! 今回、史上最強の候補生リボンは、練習機T-38に乗って飛行します! 加えて相手は戦闘機2機! この二重のハンデキャップを持って、戦っていただきます! ただし、T-38には火器管制装置が付いていないので、5カウント相手の真後ろについた時点で撃墜と判定します!』

 ピース・アイが説明している間に、タロンとミラージュは滑走路に到着した。

 タロンは内側の13R、ミラージュ2機は外側の13Lだ。

『おっと、忘れていました! 空中戦は離陸したらすぐ始まります! しかしリボンはこれまたハンデキャップとして、アイスチームより少し先に離陸してもらいます! つまり、リボンは最初から後ろを取られやすい状態になる訳です! あ、ならハンデキャップは二重ではなく三重ですね! 訂正致します! なお、離陸後は最低高度を50メートルに制限します! これ以上下がると、自動的に墜落と判定されます!』

 説明が続く間にも、リボンやミミ達はもくもくと最終チェックを行っている。

 それをツルギは、ただ見守るのみ。

 外には、これから始まる模擬戦に胸を躍らせているであろう生徒達の姿が小さく見える。

 ナレーションと相まって、もはや見世物になっているが、この模擬戦は訓練という鳥ある種のデモンストレーションなのでおかしくないと言えばおかしくない。

「ふふ、いよいよ離陸ね。まさかガイを後ろに乗せて飛ぶ日が来るなんて――」

 とはいえリボンは緊張する様子もなく、逆に普段と異なるフライトを心待ちにしているようだった。

「まあ僕もリボンと同じ飛行機に乗るなんて思いもしなかったけど、今日は遊覧飛行じゃないからな?」

「わかってる」

 どこか上機嫌な様子のリボン。

 だがそれを聞いて、うー、と唸る声が。

『ツルギ、やはりリボンの味方をする気満々じゃないですか!』

 ミミだった。

「え、これだけで味方になっちゃうのか!?」

『当然です。どちらの味方にも付かないと宣言したのなら、助言は控えてください』

「いや、あれ助言になっちゃうのか……?」

 いくら戦闘中はいない扱いされるとは言っても、ミミがこれでは何も喋るなと言っているようなもの。

 ちょっと神経質になりすぎだと、ツルギは思ってしまう。

「ジェラシーも甚だしいわね。何でもかんでも助言に聞こえちゃうなんて」

『何ですって!?』

 リボンの挑発めいた発言に、またしても声を上げるミミ。

 それこそ、すぐに機体から降りて殴り込みでもしてきそうな剣幕で。

『姫様が妙に機嫌悪いと思ったら、あんたの仕業だったのね! 無礼者っ! もっと敬意を払いなさい!』

「ん? 残念だけどあたし、この国の人間じゃないし。敬意払えって言われても困るんだけど」

『何ですって!?』

 さらにフィンガーも加勢してくるが、それでもリボンは挑発の態度を崩さない。

「リボン、そのくらいにするんだ!」

 このままだとエスカレートしそうなので、ツルギがリボンを慌てて止める。

 そんな中、遂に離陸の時間となった。

『では、離陸10秒前!』

「キャノピー閉めて!」

「わかった!」

 ピース・アイの合図で、ツルギはリボン共々キャノピーを手動で閉める。

『……いいわ。これからコテンパンにしてやるんだから!』

『ええ!』

 一方、ミミとフィンガーが妙に意気投合している。

 この後の模擬戦が、不安になってしまうくらいに。

 しかし時間は、無情にも過ぎていく。

『5秒前! 4、3、2、1――』

 カウントダウンと共に、スロットルを押し込む。

 エンジンの出力が上がり、タロンの小さなノズルのアフターバーナーが点火された。

『ゴー!』

 そして、ブレーキを解除した。

 タロンが先に滑走路を駆け出し、加速していく。

『フィンガー、行きますよ!』

 数秒間を置いてミラージュも滑走を開始した。

 タロンよりはるかに大きいアフターバーナーを点火し、後を追いかけ加速していく。

 まずはタロンが浮かび上がった。

 素早く車輪(ギア)を格納。

 そして、ゆっくりと左へ上昇旋回。

 まるで、アイスチームの前に自ら出るような形で。

 ミラージュ2機が浮かび上がったのは、ちょうどその頃だった。

『ふっ、随分と余裕そうですね……!』

 当然、ミミ機はタロンの後方に食らいついた。その後にフィンガー機も続く。

 ハンデのためとはいえ、いきなりアイスチームが主導権を握る展開になった。

『さあ、早くもアイスチームが後方に着きました! 姫様はこのまま一気に勝負を決めに行くのでしょうか!』

 ピース・アイの実況が熱を帯び始める。

『フィンガー、援護を! このまま決めますよ!』

『了解です、姫様!』

 早くも巴戦に突入する3機。

 まだ真後ろにつかれてはいないが、少しでも操縦を誤ればその言葉通りに勝敗がすぐついてしまう。

『それは、どうかしらね……!』

 だが。

 リボンは、そんな状況でも余裕の声を上げていた。

 まるで、全ては計画通りに進んでいると言わんばかりに。

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