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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
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セクション05:女難の相

「わ、私をバカにするつもりですか! そこまで私は公私混同などしません!」

「なら、別にいいでしょ。反論するなら、もっと正当な理由でする事ね、お姫様」

「そ、そちらこそ、ツルギを選んだ正当な理由を語ってないではないですか! 何かよからぬ事でも企んでいるのではないですか!」

 2人の言い争いがエスカレートしていく。

 嫌な予感が増していくツルギをよそに、ミミの表情が怒りの色を増していく。

「何、ジェラシー? あんた、何でもかんでも恋愛と結び付けたらろくな事にならないと思うけど? ちょっとはストームを見習ったら? あいつは、普通にガイを私に預けてくれたんだけど?」

「……っ、言わせておけば――っ!」

 我慢ならないとばかりに、ミミが飛び出す。

 その腕を、ツルギはとっさに捕まえた。

「よすんだミミ! 僕はただのオブザーバーなんだから、どっちかの味方につく訳じゃないんだ!」

「わかってます! なら、尚更私と一緒でも――」

「もう決まった事なんだからしょうがないだろ!」

 何とかミミをなだめようとするが、彼女は食い下がってくる。

 どうしてこんな時にどの機体に乗るかで揉めなきゃならないんだ、とツルギは思わずにいられない。

 すると、2人の様子を見ていたリボンは、くす、と笑い。

「ま、文句があるならこの後空で聞いてあげるから、遠慮なくぶつけてきなさい」

 そんな言葉を投げかけた。

 それを聞いたミミは、ツルギの手を乱暴に振りほどくと。

「いいでしょう。その宣戦布告、受けて立ちます。ツルギを選んだ事を、必ず後悔させてやりますからね!」

 扇子を突き出しながら、宣戦布告の言葉を発した。


 イーグルのコックピットに慣れてしまったせいなのか、小型機であるタロンのコックピットはツルギにとって狭く感じた。

 しかし練習機だけあり、席が高めに配置されているお陰で後席からの視界はいい。

 計器には一応多機能ディスプレイが2つ設置されているが、それでも未だ残っているアナログ計器からは、半世紀使い込まれた凄みを感じさせる。

「全く、面倒臭い事になっちゃったな……どうしてあんな挑発するような事言ったんだよ、リボン?」

 ヘルメットを被り準備を整えたツルギは、前席のリボンに問いかけた。

 リボンは、振り向かずに答える。

「何か、迷惑そうにしてたでしょ」

「迷惑そうってな……だからってあんな喧嘩になりそうな事しなくたっていいじゃないか。もっと穏便にやってくれ」

「あいつ、ガイの事好いてるみたいだったけど、嫌なら嫌だってはっきり言ってやればいいのよ。やっぱあれ? 元カノって別れてもいろいろ愛着湧いちゃうものなの?」

 そう問い返されて、ツルギは僅かに動揺した。

 そういえば、そんな話をどこから聞いたのかを聞いていない事を思い出す。

「っていうかリボン、僕とミミの事を一体どこで聞いたんだ?」

「まあ、風の噂ってヤツ? 中等部の頃一緒に寝たって話もあったわね」

「ちょ、リボン――!?」

 そんな事まで聞いていたのかと、ツルギは動揺してしまった。

 すると、様子がおかしい事に気付いたのか、リボンが振り返る。

「あれ? もしかして図星だった?」

「――っ、リボンって、ちょっと地獄耳すぎないか……?」

「さあねー。ま、あたしが来てからはあたしとも何かよからぬ関係じゃないのかって噂が出てるみたいだし、ガイには女難の相があるのかもね。気を付けなさい。あんたには一番大事な人がいるんだから」

 顔を戻したリボンは、ん、と親指で左側を指差した。

 何かと思ってその先を見ると、いつの間にかストームの姿があった。

 こちらに元気よく手を振っている。

 普段通りの彼女の姿に不思議と安心したツルギは、自然と手を振り返していた。

「じゃ、行くわよ。キャノピーの閉め方は大丈夫?」

「ああ、大丈夫」

「あたしが指示するまで、閉めないでね。じゃ、エンジン始動よ」

 マスクを着けたリボンは、頭上で両手を合わせる合図を送った。

 すると、機体に接続された小型のコンプレッサーが整備員によって始動され、ホースを介して機体に空気を送り始めた。

 続けてリボンは右手の人差し指を立てて、右エンジンの始動スイッチを押す。

 甲高いタービン音と共に、右エンジンが回り始めた。

 エンジン回転計も、始動に合わせて針がゆっくりと回り始めている。

 同様の手順で、左エンジンも始動。

 タロンは何のトラブルもなく、エンジン始動を終えた。

 ツルギはマスクを着用しつつ、向かい側にいるミラージュに目を向けた。

 ミミと、そのパートナーのフィンガーの乗機だ。

『あのう、姫様……何だか、妙に気合入ってますね……』

『ええ! ステルスに乗ってないこの機会に、あの妖精の鼻をへし折ってやります! このっ! このっ!』

 スイッチを操作するのにいちいち声を出している様子からして、やはり怒りは治まっていないらしい。

 大丈夫なのだろうか、とツルギは少し不安になる。

 そうこうしている内に、点検は終了。

 遂に、離陸へ向かう時が来た。

「じゃ、行くわよガイ。アリエル1、離陸に向かうわ!」

 リボンがスロットルをゆっくり押し込むと、タロンはキャノピーを開けたままゆっくりと移動を開始した。

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