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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト3:カイランの翼・シャオロン飛翔!
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セクション03:ミグの血筋

『す、すげえ……2回連続ミラクルとか、何か持ってるぞあいつ……』

『私も、凄い技量だと思います……でも、これって本当に、技量……?』

 バズとラームが、そんな感想を漏らす。

 技量によるものなのか、それとも幸運を引き寄せたのか。

 2回連続で標的そのものに命中させたとなれば、単なる偶然とは思えない。

『ま、また当てちゃったアルか!? まあ、吹き流しはどの道切り離すものだからいいアルけど……そんなに、標的壊したいアルか?』

 メイファンも困惑している様子だ。

 とはいえ、吹き流しは元々使い捨ての部分。本体に影響はなかったためか、前回ほどショックは受けていないようで、怒る様子も見せない。

『二連続で当てるとかやっぱすげえなゲイザーちゃん! もしパイロットになれなかったら陸軍に行ってスナイパーにでもなれよ!』

『……アリガト』

 サンダーの早口な褒め言葉に、やはり謙虚に片言で礼だけ言うゲイザー。

『見たか! ゲイザーちゃんの射撃精度! 思い知ったか!』

『まあ、データはしっかり取らせてもらったアルよ……』

 自分の事のように自慢するサンダーに、苦笑しながら答えるメイファン。

『今のちゃんとカメラに取ったよな? ここでカメラ動いてなかったとかないよな?』

「あ、ああ……心配ないよ……」

 急に話を振られたツルギも、戸惑いながら答えた。

『よーし! 帰ったらビデオ片手に学園中に自慢してやるぜ! ゲイザーちゃんの実力をな!』

 早くもそんな事を宣言するサンダー。

 そんなに周りに自慢して、当の本人は迷惑しないのだろうか。ツルギは思わずにいられない。

 先程からゲイザーは無言を保っており、本心は全くわからない。

 もしかしたら、何を話しているのかもわからないのかもしれないが。

 ともあれ、これで実弾射撃テストは終了となる。

「さて、実弾射撃テストは終わりだ。帰ろう」

「え? あたし達はやらないの?」

「何言ってるんだストーム。そもそも弾積んできてないだろ」

「あ、そうだった。でも、あんなの見たらあたしもやりたくなっちゃったなあ……」

 ストームとそんなやり取りを交わしつつ、ウィ・ハブ・コントロール号は帰路に着いたのだった。


     * * *


「どうだったアル? シャオロンの性能は」

 帰還後。

 ツルギ達ブラストチームは駐機場(エプロン)で、メイファンからそんな質問をされていた。

 場所は、駐機されたシャオロンの前。ゲイザーとサンダーは先に帰っている。

「うーん、悪くない飛行機だと思うよ。飛び方もおかしくなかったし」

「大体ゲイザーの射撃能力にいい所持ってかれた感はあるけどな」

 素直に感想を述べたツルギに対し、バズは少し笑いながらそう答えた。

「あれで、シャオロンについてのレポート書けって言われても困るよなあ。なあツルギよお」

「まあ、まだフライトはあるから大丈夫だよ」

「ゲイザーちゃんの事なら今からでも書けそうだけどな」

 普段のように、そんなジョークを飛ばすバズ。

 そんな彼をラームの冷たい視線が射抜いていたが、ツルギは見なかった事にした。

 今回、ツルギ達がゲイザー達のフライトに同行したのは、課題をこなすためだ。

『カイラン空軍の新型戦闘機であるシャオロンの基本性能についてまとめよ。ただし、軍事機密に触れない範囲とする』

 この課題をこなすために、シャオロンのフライトに同行していたのである。

 もっとも、ツルギがビデオ撮影をしていたのは、あくまでカイラン側の要望によるものであり、課題とは一切関係ないものなのだが。

「それにしても、これが元々ロシアの戦闘機だったって本当なの? えーっと――」

MiG(ミグ)-21だよ、ストーム。それにロシアじゃなくて旧ソ連」

 ストームがそんな疑問を投げかけ、ラームが補足する。

 すると、メイファンの目が待ってました、とばかりに輝く。

「いい質問アル! 正確には、そのMiG-21のライセンス生産モデル・J-7アルよ」

 メイファンは、手にしたソフトヌンチャクを教鞭のようにストームへ向ける。

「MiG-21フィッシュベッドと言えば、世界最多の生産数を誇るジェット戦闘機。冷戦時代の東側勢力を象徴する、皆さんご存知の戦闘機アル。それを中国では、独自の改良を重ねながら生産してきたアル。その血を受け継いだのが、このシャオロンアル!」

 メイファンの解説が熱を帯び始める。

 そして自慢げに、教鞭代わりのソフトヌンチャクをシャオロンへと振るう。

「開発コードネームは『スーパーセブン』! つまり目指したのは究極のJ-7アル! 一番の魅力たるシンプルさと扱いやすさを引き継ぎつつ、最新鋭のテクノロジーを設計に盛り込んでパワーアップさせたアルね! 特に機首に備えた空気取り入れ口(エア・インテーク)! これはステルス性を高めた『ダイバータレス超音速インレット』で、シャオロンが世界で初めて量産戦闘機に取り入れたアルよ!」

 注目、とばかりにシャオロンの機首にある空気取り入れ口(エア・インテーク)を差すメイファン。

 彼女の説明は、傍から見ても興奮しているとわかるものだった。

「それで、こんな戦闘機に変わり果てたのか……全然面影が残ってないよな……?」

「何言ってるアル! よーく見るアル! 背中にちゃんと面影が残ってるアルよ!」

 バズの言葉に、いつの間にか持ちかえていた模型を手にツッコミを入れるメイファン。

 小さなデルタ翼に鋭い後退角を持つ尾翼が特徴的で、どこか矢のような印象を持つJ-7の模型。

 その背骨が浮き出た胴体のデザインは、確かにシャオロンと通じるものがある。

「あっ、ほんとだ!」

「これは、気付かなかった……」

 ストームとラームが、感心した様子で模型とシャオロンを見比べる。

「でしょでしょ? 機体だけじゃなくて、中身も最新鋭アル! 今は電子機器がものを言う時代アルからね。あたしも作ってみてわかったけど、本当に現代風って感じで凄いアルよ!」

「なるほど――って、今あたしが作ったって言わなかったか?」

 そしてツルギは、メイファンの説明でおかしな事に気付いた。

 メイファンは、当たり前の事のように。平然と答える。

「あれ、言ってなかったアルか? あたし、ここに来る前はシャオロンのソフトウェア開発やってたアルよ」

 ちょっとだけだけど、と付け足すメイファン。

 それでも、事実はツルギにとって充分驚きに値するものだった。

「ソフトウェア開発って、ええ――!?」

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