インフライト2
冷たい鉄格子の向こう側。
ゲイザーは1人、退屈そうにベッドに座っていた。
見上げるのは、やはり鉄格子で覆われている窓から、僅かに見える夜空。
廊下から聞こえてくる足音を気にする事もなく、ゲイザーは夜空を見つめ続ける。
そんな時、がちゃ、と音を立てて、鉄格子の扉が開いた。
「出ろ」
聞き慣れた声に、初めてゲイザーが反応した。
ドローニンだ。
彼の姿に引き寄せられるように、ゲイザーは立ち上がる。
「ヴァル……」
「よ。しばらくの牢獄生活どうたった?」
見れば、サンダーやメイファンの姿もある。
サンダーは、何気なく会った友人のように軽く挨拶している。
一方のメイファンは、何も言わずに何やら複雑な眼差しでゲイザーを見つめていた。
「反省、したか?」
牢獄を出ると、ドローニンが厳しい目で問いかける。
ゲイザーはどこか物悲しそうな目をしつつ、無言でうなずく。
それを確かめると、ドローニンはゲイザーにある物を手渡した。
92式手槍。
ゲイザーが持っていた、ピストルである。
「次からは、気を付けろ」
威圧感のあるドローニンの言葉に、黙ってうなずくゲイザー。
そして、その言葉の意味を確かめるように、ピストルを懐へとしまった。
「じゃ、行こうぜゲイザーちゃん。ちょっと面白いものがあるから見せてやるよ」
「面白い、モノ……?」
「いいから見りゃわかる」
早速、サンダーがゲイザーの背中を押して、去っていく。
その姿を、ドローニンはしばし見送った後。
「ふう。これで二度目か……」
そんな事を、口にした。
「……あの、ドローニンさん」
その言葉に反応したのか。
メイファンが、ここに来て初めて口を開いた。
「何だ」
「どうして――ゲイザーは、ピストルなんて持ってるアル?」
ドローニンは答えない。
まるで、その質問が来る事を最初からわかっていたかのように。
「ゲイザーだけじゃない、サンダーだって持ってるって言ってたアルよ! この学園じゃ、銃の所持は認められてないんじゃなかったアルか? それじゃ、まるで――」
「民間人の君には、答えられない」
メイファンの言葉を遮り、ドローニンはようやく答えた。
「これはカイラン軍の機密に関わる事だ。いくら戦闘機の整備に関わる君でも、説明する事はできない」
機密。
その言葉に、メイファンは僅かだが怯んだ様子を見せる。
「で、でも、ドローニンさんだって、傭兵――」
「言い訳は聞かん」
ドローニンは、これ以上言う事はないとばかりに顔を戻すと、
「彼らの事は、外部には黙っておけ。命が惜しければな」
そう言い放ち、歩き出した。
メイファンは唖然とした様子でしばし動けず、間を置いてからドローニンの後を追いかけたのだった。
夜の牢獄に、静寂が戻る。
その空気は、ゲイザーらに課せられたものを表しているかのように、重く冷たかった。




