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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト2:史上最強の候補生・リボン!
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セクション12:かくれんぼ開始

 楔形のノズルから、赤いアフターバーナーの炎が噴き出す。

 その加速力を得たラプターは、僅かな助走で揚力を得、滑走路から浮かび上がった。

 その後に続いて、ブラストチームのイーグル2機もアフターバーナーを点火し離陸開始。

 今まで何度も行っていた離陸なのに、やけに助走が長く感じた。

 新世代の戦闘機であるラプターは、エンジン出力がイーグルを上回っている。

 故に、離陸滑走もラプターの方が短くて済む。

 離陸という僅かな時間で、機体の大きな性能差を見せつけられた瞬間だった。


 ラプターを先頭にした3機編隊は、雲を突き抜けて飛んでいく。

『ガイ、聞こえる? いい眺めよね』

 先頭を行くラプターから、リボンの通信が流れた。

『ここにいれば、足がなくたって関係ない。重力に逆らって、自由に動き回れる……』

 その声は、フライト前よりも明らかに活き活きとしている。

 それを表すように、ラプターはくるりと横転(ロール)した。

『ここにいる間は、障害なんて関係ない。誰だって自由に飛べる。ガイもそう思わない?』

「そうだね。僕もそう思う事あるよ」

『ああ、空はほんといいわ……地上なんて重力に縛られた世界なんかよりずっといいわ……できるなら、ここでずーっと暮らしたいものね……』

「でも、調子に乗ってまた気を失ったりするなよ」

『平気よ、スーツのバルブは交換してもらったから』

 リボンとの会話が自然と弾む。

 下半身の自由を奪われながらも、こうして空にいるという経験を共有しているからだろうか。

『おいおいストーム、いいのかよ? 浮気されるかもしれないぞ?』

「平気だよ。リボンは友達だって言うし、そもそもツルギはそんな事しないから」

 一方で、バズがストームをからかうも、ストームは平然とそう返していた。

 そんな時。

『青い空、白い雲……延々と広がるこの世界こそ、俺達パイロットが駆け抜ける青春――』

 わざとらしく低い声を演じる少女の声が聞こえてくる。

『なーんて一度は言ってみたいですよね! という訳で、こちらは24時間いつもあなたを上から見守る早期警戒管制機、ピース・アイです!』

 ピース・アイだ。

 彼女は相変わらず陽気な声で自己紹介した。

『本日は私も、ささやかながらステルスのかくれんぼにご協力させていただきます! ステルスというものがどんなものか、レーダー画面上で見させてもらいますよ!』

『ご協力感謝するぜ、ピース・アイちゃん』

 今回のフライトでは、ピース・アイも捜索に参加する事になっている。

 彼女のような早期警戒管制機のオペレーター候補生にとっても、ステルス能力に触れる貴重な機会だからだ。

『ではステルスの妖精リボンさん、始める前に意気込みをどうぞ!』

『意気込み? そうね、あんたにも見つかるつもりはないから、覚悟する事ねピース・アイ』

『おおー、何という自信満々なコメント! そう言われてしまうとまるでディフェンディングチャンピオンみたいで、ちょっと尻込みしちゃいますねー』

 まるでインタビューのような、リボンとピース・アイとのやり取り。

 リボンはラジオパーソナリティのようなピース・アイとも、意外と馴染めているようだ。

 地上なら面倒臭いと言い張りそうなものだが、やはり空の上だからだろうか。

『じゃ、そろそろ始めましょうか』

 話を終えると、リボンが一同に話を切り出した。

『手順は普通のかくれんぼと同じ。あたしが10数える間に逃げるから、その間は追いかけないでよね。数え終わったら、どんな手段でもいいからあたしを見つけてみなさい』

「わかった」

『ブラスト2も了解しました』

 ツルギとラームがうなずくと。

『じゃ、あたし行くからね』

 ラプターが早速、加速し始めた。

 アフターバーナーを使っていないにも関わらず、それを使っているかのようにどんどんブラストチームとの距離が離れていく。

『お、おい、何かアフターバーナー焚いてないのに速いぞ!?』

『アフターバーナーなしでも音速超えられますからね、ラプターは』

『そうか、超音速巡航(スーパークルーズ)って奴か……』

 驚くバズに補足するラーム。

 普通、戦闘機はアフターバーナーの加速力を借りなければ音速突破ができない。当然、その間は燃料消費が増すので超音速飛行が可能な時間も限られる。

 だが、ラプターはアフターバーナーを使わずとも音速突破を可能にし、それを維持したまま飛行を続けられる、超音速巡航(スーパークルーズ)という能力を持っている。

 これによって、燃料消費を抑えつつ音速を超える事ができ、かつ長時間の超音速飛行を可能としているのだ。

 超音速巡航(スーパークルーズ)能力を持つ新世代戦闘機は他にもいるが、出せる速力でラプターの右に出るものはいない。

『じゃ、行くわよ。いーち、にーい、さーん――』

 リボンがゆっくりと数え始める。

 その間に、ラプターの姿は先にあった雲に隠れて見えなくなった。

 そして。

『しーち、はーち、きゅーう、とう! さ、今あたしがどこにいるか、探してみなさい!』

 空のかくれんぼが、切って落とされた。

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