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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト2:史上最強の候補生・リボン!
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セクション10:次のフライトはかくれんぼ

 午後。

 天候は午前と変わりない。

 午前中に起きた乱闘騒動の影響は少なく、フライトは予定通り行われる事になった。

「えーと、これからフライトについて説明するわね。これからやるのはステルス性を実感してもらうための――」

「ちょっと待ってリボン。まだバズ達が来てない」

 ここは、格納庫前付近の駐機場(エプロン)

 全員揃わない内に説明を始めたリボンを、慌てて止めるツルギ。

 ここにいるのは、彼らの他にストームだけ。無論、全員フライトスーツを着て、ヘルメットも用意している。

「えー、面倒臭い。遅れてくる方が悪いんだからいいでしょ?」

「そ、そんな事言わずに」

 不快な表情を浮かべるリボンを、何とかなだめる。

 確かに、2人は時間になっても来ていないから、説明を聞き逃しても文句は言えない。

「じゃあ、連れてきなさいよ。あんたリーダーなんでしょ?」

「ま、まあ、そうだけど……」

「あっ、来たよ!」

 そんな時、ストームが声を上げた。

 彼女が指差す先――格納庫の陰から、大柄な少年と華奢な少女が姿を現した。

 バズとラームだ。

 2人は歩きながら、何やら話をしている。

 その視線は、ツルギ達ではなく、海側――駐機場にある巨大な航空機に向けられていた。

「――あのKC-135は、元々スルーズ空軍で使われていた機体なんです」

「え、あの機体がか? どうしてわかるんだ?」

「スルーズ空軍は、KC-135をリース形式で使用していまして、契約満了後はアメリカに返還されたんです。製造番号(シリアルナンバー)を見て、あれがその機体の1機だと気付いたんです」

「そっか、借りて一度返したヤツがスルーズにまた帰ってきたって訳か。凄え偶然だなあ」

「でしょう? 私も知った時は驚きました」

 2人の会話は、どこか楽しそうだ。

「じゃあ、あの近くに行けば何かいい出会いがあったりして――」

「でも女子学生はいないみたいですよ」

「そ、そんなあ……」

 ラームの指摘にうなだれるバズ。

 どうやら、時間に遅れている事には気付いていないらしい。

 仕方なく、ツルギは声をかける事にした。

「おーいバズ、ラーム! 遅れているぞー!」

「……え? あ、ほんとだ! やばい!」

 呼びかけでようやく時計を見た2人は、慌ててツルギ達の元へ歩みを急ぐ。

 かくして、ようやくブラストチームの全員が揃った。

「全く、こんな時に遅刻するってどういう神経してるの?」

「悪い悪い。いつもはこんな事しねえんだが……」

 頭を掻きながら笑い、謝るバズ。

「面倒な事かけたお詫びに、夜一緒に食事でも――」

「ごめんなさい、あたしそういうのオコトワリしてるの」

 そしていつものようにナンパしようとし、あっさりと退けられた。

 いつものように耳を引っ張ろうと身構えていたラームも、少し驚いている。

「え、な、なんでだよ!? ツルギとは普通に話してたじゃないか!」

「まあ昔の友達だからね、だから?」

「なら友達の友達繋がりで――」

「なんでそんな関連付けで付き合いしなきゃいけない訳? 誰と付き合おうとあたしの勝手でしょ。友達の友達なんかに興味はないわ」

 完全に、リボンの方が上手だった。

 言い負かされたバズは、がっくりと肩を落とし、

「すまねえシルヴィ、いつもみたいに俺の耳引っ張ってくれ……」

 自虐的に、そんな事を言った。

 さすがのラームも、それには戸惑っている。

 少し悩んだ末、ラームが口にしたのは、

「……じゃあ、私が代わりに食事に付き合ってあげます」

 そんな、優しい言葉だった。

 驚いて、バズが顔を上げる。

「え、シルヴィ?」

「耳引っ張りは免除しますから、その代わりに私を食事に連れて行ってください」

「そ、そんなんで、免除してくれるのか?」

「でも、勝手にメニューを変えないでくださいね。私はただの『代わり』なんですから」

 戸惑うバズに、ラームは微笑みながらそう言った。

「あの2人、兄妹なの? 全然似てないけど……」

「いや、ラームの方は養子で、血の繋がりがないんだよ」

 耳元で疑問をささやくリボンに、ツルギはそう答える。

「あの眼帯の子が……ま、いっか。じゃ、改めて説明するけど、いい?」

 リボンが告げると、バズとラームはようやく話を止めた。

「もう二度と説明してやんないから、心して聞いてよね。これからやるのは、ステルス性を実感してもらうための体験フライトよ」

「体験フライトって、どんな事やるの?」

「一言で言えば、かくれんぼ」

「かくれんぼ?」

 ストームが、首を傾げた。

「そう。レーダーで私が飛ばすラプターを探してもらうの。だからかくれんぼよ。シンプルでしょ。ミサイルの模擬弾もあるみたいだから、見つけたら撃っちゃっても構わないわ」

「へー、何だか面白そう! やっぱりそっちは、隠れるのに自信があるんだ?」

 ストームの問いに、当然よ、と返すリボン。

「言っとくけど、簡単に見つかるつもりはないからね。こっちは実戦と同じ形で飛ばすから。その分見つけたら高評価もらえるらしいから、ま、せいぜいがんばる事ね」

 リボンは得意げに、笑みを浮かべて言った。

 そんな事はないだろうけど、と言わんばかりに。

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