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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト2:史上最強の候補生・リボン!
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セクション06:ゲイザー暴走!?

「教官!」

「何だ、ツルギ」

「ゲイザーが!」

 早速指を差して知らせるツルギ。

 それに、フロスティも含む全員が反応する。

「あいつ、何やってるんだ。歩哨に追い払われるのがオチだぞ」

 だが、フロスティの態度は冷淡だった。

 この程度なら、大きな問題は起きないと思っているのだろう。

「全く、これだから子供は――全員、ここで待ってろ」

 フロスティはゆっくりとゲイザーの元へ向かい始めた。ゲイザーを呼び戻すためだろう。

 その様子を、一同は黙って見送るのみ。

 そんな中、ラプターに向かっていたゲイザーは、予想通り歩哨に阻まれていた。

「君、これ以上は立ち入り禁止だ」

 アサルトライフルを片手に、警告の言葉を発する歩哨。

 だが、英語が不得手なゲイザーに通じた様子はない。

 ゲイザーは、ただ歩哨の顔を見上げて、

「通シテ」

 と、一言だけ告げた。

 全く動じていないようにも見えるその態度に、歩哨は僅かに怯んだように見えた。

「ダメだ。立ち入り禁止だと言っている。聞こえなかったか?」

「……? モイッカイ」

「立ち入り禁止だと言っているだろう! お前、バカにしているのか!」

 声を荒らげる歩哨。

 だが、声が大きいだけではゲイザーには届かない。

 その事を、事情を知らない歩哨が知る由もなく、苛立ちを募らせている様子だ。

「ダカラ、モイッカイ」

「いい加減にしろっ! とにかく出て行け!」

 とうとう、アサルトライフルの銃口を向ける歩哨。

 一瞬、驚きで目を見開くゲイザー。

 途端、彼女の表情が変わった。

 獲物を捕えた猛獣のように、目付きが鋭くなったのだ。

 それからの行動は早かった。

「――っ!?」

 アサルトライフルの銃身を、掴んだのだ。

 歩哨が驚いている隙に、ぐい、とアサルトライフルを逸らし、腹に足を振るった。

「が――っ!?」

 一撃で後方へ突き飛ばされる歩哨。

 その手に、アサルトライフルはない。

 ゲイザーの手にあったそれは、乾いた音を立ててアスファルトへと投げ捨てられた。

 予期せぬ出来事に、歩哨はもちろん、見ていたフロスティやツルギ達も目を疑う。

 そんな彼らの視線をよそに、ゲイザーは身構えると。

「ハッ!」

 すかさず、歩哨の懐へと飛び込んだ。

 その顔面目掛け、素早く拳を振るう。

 とっさに右手をかざしてガードする歩哨。

 続けざまに振るわれた左の拳もガードしたが、さらに繰り出された右足は防げなかった。

 先程と同じ腹に一撃を浴びて怯んだ隙に、さらに回し蹴りが飛ぶ。

 頬を蹴り飛ばされ、倒れ込むも何とか姿勢を立て直す歩哨。

 そんな彼に、尚も殴り掛かるゲイザー。

「おい、何のつもりだ!」

 さすがのフロスティも、この状況には驚きを隠せず、すぐさまゲイザーの元へと駆け出した。

 一方の生徒達も、突然起こった乱闘騒ぎを前にどよめき出す。

「ツルギ、あたし達も!」

「あ、ああ!」

 ストームがすぐさま、車いすのハンドルを握った。

 理由はわからないが、こんな事態が起きたとなれば委員長としてしっかり止める義務がある。

 ツルギはストームに車いすを押され、ゲイザーの元へと急ぐ。

「面倒な事になったわね……あたしも行く!」

 さらに、リボンも続いた。

 そうこうしている間にも、乱闘はさらにエスカレートしている。

 事態に気付いたもう1人の歩哨が駆けつけ、ゲイザーを捕えようとしている。

 ゲイザーは彼さえも敵と認識し、殴り掛かっていく。

 驚くべき事に、彼女は自身より大きな男2人を相手にして、格闘戦で圧倒していた。

 振られる拳と足は、全て相手の急所目掛けて素早く的確に振るわれている。

 しかもその動きに、一切の無駄がない。

 相手の拳はまるで見透かしているように最低限の動きでかわし、逆に手堅い反撃を浴びせる。

 その動きは、どう見ても洗練された格闘術。

 ツルギ達でさえ学んでいないそれを、一体どこで彼女は身に着けたのだろうか。

「何なのあいつ、空手家か何かなの?」

「それは僕が聞きたいよ!」

 リボンの質問に答えるツルギ。

 だがそうこうしている内に、ゲイザーは1人の歩哨を回し蹴りでノックアウト。

 残った1人にも足払いをかけ、転倒させた。

 完全に勝負はついてしまった。

 だが、ゲイザーは尚も攻撃を止めない。

 懐から、黒く光る何かを取り出し、倒れた歩哨のこめかみへと向け――

「いい加減にしろっ!」

「――ッ!」

 フロスティの平手によって、弾き飛ばされた。

 乾いた音を立てて落ちたそれは、ツルギ達の元へと滑って行く。

 それに気付いたリボンが、足を止めて拾う。

 ツルギとストームも、彼女の元へ駆け寄ってそれを確かめる。

「ちょっと、これって――!」

 見た途端、3人は驚いた。

 それは、ピストルだった。

 ボディ全体が黒塗りで、グリップの部分には星のマークが描かれている。

「中国製の92式じゃない。なんでモデルガンなんて――」

 そうつぶやきながら、さりげなくグリップのマガジン部分をいじるリボン。

 すると、がちゃ、とマガジンが飛び出した。

 それに気付いたリボンは、取り出して中身を調べてみる。

「ちょっと、これって――!」

 途端、顔色を変えるリボン。

 彼女が、マガジンの中から取り出したもの。

 それは、金色の弾丸。

 つまり――

「ほ、本物……!?」

 ツルギは戦慄した。

 このピストル――92式手槍で、ゲイザーは歩哨を本気で殺すつもりだったと気付いてしまったが故に。

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