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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト2:史上最強の候補生・リボン!
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セクション04:リボンとフロスティ、意外な関係

「ファング教官の事、知っていたのか?」

「知っているも何も、アメリカ空軍であの人の名前を知らない人は――って、今『教官』って言った?」

 リボンが問い返す。

 どうやら、この学園で教官をしていた事を知らないらしい。

 その事を説明しようと思った矢先。

「こんな所で何をしている?」

 冷たい男の声が、2人のやり取りを遮った。

 驚いて振り返ると、そこにはいつの間にかフロスティの姿があった。まるで悪人を見るような冷たい視線で、ツルギとリボンをにらんでいる。

「フ、フロスティ教官!?」

「親睦会からいなくなったと思えば、こんな所で逢引か?」

「そ、そんな! とんでもありません!」

 冗談なのかわからない問いかけを、ツルギは慌てて否定する。

 一方、リボンはフロスティを見て少し驚いていたが、すぐに不愉快そうな表情を浮かべる。

「おかげで貴様の事を心配している輩が約1名いるぞ」

「え?」

 フロスティが肩越しに背後を見る。

 するとそこから、姿を現す1人の少女。

 ストームだ。

 きょとんとした様子で、こちらを見ている。

 その姿を見て、ツルギは慌てた。

「ストーム!? いや、勘違いしないでくれよ!? ぼ、僕は、リボンに呼ばれて来ただけなんだ! バ、バズみたいに、変な事する気は全然ないからな!?」

 あらぬ誤解をされまいと、ツルギは回らない口で説明する。

 もしこんな所で騒動を起こされたら、と憂いつつ。

 だが。

「うん。何か無理やり連れて行かれたって聞いて、フロスティ教官と一緒に飛んできたんだけど……何か、しみじみした空気だったね?」

 ストームが発した言葉は、ツルギの予想外のものだった。

 どうも彼女は浮気という言葉に鈍感らしく、嫉妬している様子を見た事がない。

 だが、心配をかけた事に変わりはないので、ツルギは謝る事にする。

「ま、まあ、そうだったな。あんな話だったし……ごめん。せめて一言言って出て行けば、変な心配かけなかったんだけど……」

「いいよ。嫌がってたら助けようかなって思ってたけど、そんな感じもなかったし。嫌がる事はしなかったんでしょ?」

「まあ、そうだね……」

「なら、よかったよかった!」

 すると、安心したようにストームはツルギに抱き着いてきた。

 あっ、ちょっと、とツルギが戸惑っても、彼女は離れる気がない。

 そんな2人の様子を見たフロスティは、ふう、とため息をつくと、

「こんな1人の男とうつつを抜かしてる暇があるなら、ちゃんと親睦会に参加しろ。親睦を深めるべき相手がいなくなっては本末転倒だろう、エリカ」

 ツルギにではなく、リボンにそう言い放った。

 彼がリボンの事をファーストネームで呼んだ事を、ツルギは少し疑問に思った。

 一方、当のリボンはゆっくりとベンチから立ち上がり、

「……面倒臭い。重力に縛られた世界であんなヤツらと話しても、何の意義もないわ。昔の友達にちょっと古い話の相手でもしてもらう方が、よっぽど有意義よ」

 フロスティをにらみつけ、そう反論した。

 多くの生徒達が怯んでしまう冷たい彼の視線にも、全く怯まぬその姿勢。

 それは、彼の事をずっと前から知っているような態度だった。

「そんな理屈が通じるか。世界は貴様の思い通りに動いている訳ではないんだぞ。多くの生徒達と交流し、見識を広めなければ、交流に来た意味がないだろう?」

「どの道、空で戦えばわかる事よ。それに――」

 リボンは少し間を置くと、にやりと不敵にわらって言い放つ。

「エミリアさんとの親睦に失敗して、あからさまによけられているあんたには言われたくない。ねえ、()()()()?」

 リボンが呼んだ言葉に、ツルギは驚いた。

 それは敬称ではあるが、嫌味が込められた言い方で敬意が全く感じられない。

 いや、問題はそんな事ではない。

 彼女はなぜ、フロスティの事をそう呼んだのか。

「え、おじさま!? ちょっと、それって――」

「何か、フロスティ教官の姪っ子なんだって」

「め、姪……!?」

 ストームの説明に、ツルギは目を丸くした。

 だが、よく考えてみれば、別におかしな事ではない。

 2人の苗字は同じ「カザモリ」。日系アメリカ人である事も同じ。

 ならば、同じ家系であっても何も不自然な事はない。

 今更ながら、ツルギはその事実に気付いた。

「く、貴様……!」

 フロスティが、感情を露にし始める。

「あたし、今でも恨んでるんだからね。エミリアさんを『おばさま』って呼べる日が来なかった事をね。悔しかったらもう一度ハートを射抜いてみなさいよ、この軟弱者」

 目上の人に対するものとは思えないほどの、辛辣な言葉。

 どうやら2人は、仲があまり良くないようだ。空気が一瞬で、冷え込んでしまう。

「貴様、誰に向かってそんな口を――!」

「他でもないあんただからよ。じゃ、あたしはこれで」

 リボンは残った最後の料理を口に運んで、立ち上がった。

 もう飽きた、と言わんばかりに。

「ガイ、悪いけどこれ返してきて」

 リボンは、ツルギの膝上に食器を置く。

 面倒臭いからなのが見え見えの投げた態度ではあるが、食器の置き方自体は雑ではない。

「えっ、ちょっと――」

「それと」

「ん?」

「よかったわね、いい彼女ができて。お似合いじゃない」

 最後に笑みを見せて言い残し、その場を去って行くリボン。

 エリカ、と叫ぶフロスティに、一切顔を向けずに。

「何か、フロスティ教官と仲悪いみたいだね。何があったんだろ?」

「まあ、根は悪い人じゃないんだけど――」

 疑問符を浮かべるストームを、フォローするツルギ。

 両足を失った反動なのだろうか。

 結構あの頃と変わったな、と思いつつ。

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