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ウィ・ハブ・コントロールG! シーズン1:留学生・アフリカの魔女  作者: フリッカー
フライト2:史上最強の候補生・リボン!
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セクション02:どんな関係?

「えー、では続きまして、エリカ・カザモリさんの挨拶です」

 ツルギは緊張を抑えつつ、穏やかに司会を進めた。

 ここは、普段利用している食堂。

 だが今夜だけは、普段とは違う雰囲気に包まれていた。

 多くの生徒達が集まり、テーブルの上には多くの料理が並べられている。

 今この場は、彼女を含む学園への来訪者を出迎える、親睦会の真っ最中なのだ。

「初めまして。あたしがエリカ・カザモリです。リボンにはこだわってる方なので、リボンって呼んでください。まあここで長々と話しても退屈するだけでしょうし、挨拶はこれくらいにしておきます。どうぞよろしくお願いします」

 マイクの前に立つ、ズボンスタイルの制服を着た少女――リボンは、若干髪のリボンをいじりながらあっさりと挨拶を済ませ、日本式の礼をした。

 拍手が起こると、リボンはどこかぎこちない足取りで、そそくさとマイクの前を去っていく。

 ツルギの背後を通り過ぎる直前、

「ああ、この後会食かあ、面倒臭いなあ……」

 心底嫌だと思わんばかりに、そんな事を口にしていた。


 挨拶が終わり、いよいよ会食の時間となった。

 多くの男子生徒がリボンの元に集まり、さまざまな質問を浴びせている。

 だが当のリボンはというと、苦虫を噛み潰したような顔をしつつ、ひたすら料理を皿に取るだけで答えようとしない。

「……あのさあ、あんまり話しかけないでくれる? あたしなんかより、向こうの留学生さんの相手してあげたら?」

 挙句、そんな事まで言い出す始末。

 自身とは別に親睦を深めるべき相手である留学生、ゲイザーとサンダーを指差しながら。

 リボンは、あそこまで人付き合いが悪い方だっただろうか。

 ツルギは食事を進めつつ、過去の彼女の姿を思い返していたが。

「なあツルギ、お前あいつとどういう関係だよ?」

 ふと、バズに声をかけられた。

 にたりと笑っているその顔からは、嫌な予感しかしない。

「……あいつって、リボンの事か?」

「ああ。何かお前の事、前から知ってたみたいじゃねえか。もしかして、幼馴染か?」

 薄々来ると思っていた質問だった。

 どこかで、誰かががちゃん、と食器を乱暴に落とした音がしたが、気にしない。

「何言ってるんだ。30%くらいしか正解してない」

「お、おい、7割も外してるかのよ……じゃあ何だって言うんだ?」

「確かに古い知り合いには変わりないけど、幼馴染ってほど長い付き合いじゃないぞ。そもそも僕は生粋の日本人だ。アメリカで生まれ育った訳じゃない」

 説明して、顔を逸らすツルギ。

 だが、ここで引き下がるバズではない。

「じゃあ、あいつといつどこで出会ったんだよ? どういう関係だったんだよ?」

「そ、そんな事聞いてどうするんだ? ネタにする気ならノーコメントで通すぞ」

 問い続けるバズから、目を逸らし続けるツルギ。

 湧き上がる嫌な予感を信じつつ。

 その予感は、すぐに的中してしまう。

「ほほう、言えないほどの関係だったのかー……おーいストーム! 聞いたかー! リボンってツルギの元カノだったんだってよー!」

「バ、バカ!」

 バズがそんな事を叫び出したので、慌てて止める羽目になった。

 何とか口を塞ごうとするも、バズの背の高さと車いすとの差が、それを阻む。

 車いす生活の不便さを恨みつつ、そんなじゃないって、勝手に関係をねつ造するな、と反論するツルギ。

 幸い、離れた場所でラームと料理を選んでいたストームは、何を言ったのか聞き取れていない様子で首を傾げていた。

 だが。

「話は聞かせてもらいましたよ」

 事態が、別の意味で嫌な方向へ向かってしまった。

 骨付きチキンを片手に現れたミミは、体から発する凄まじい剣幕を表すように、骨付きチキンをがぶり、とかじり言い放つ。

「彼女と一体どういう関係だったのか、詳しく説明してくださいますか……?」

「いや、別に説明するほど大したものじゃ――」

「なら、普通に説明しても後ろめたい事はありませんよね……?」

 なだめようとしても、骨付きチキンを刃物のように突き付け、ミミは問う。

「う……」

 反論できない。

 さすがにこんな状態のミミの前で、ごまかし続けるのは無理か。

 そう判断したツルギは、観念して説明する事にした。

「親の転勤でアメリカにいた時の、同級生だよ。それ以上でも、それ以下でもない」

「それ以上でもそれ以下でもない、と言いますと?」

「ほんの半年程度の付き合いだったんだよ。そりゃ、話とかはしたけど、リボンって言うのはその時からみんなに呼ばれていたあだ名だったし、特別親しい間柄とかには、なってない」

 少し顔をうつむけながら、ツルギは答えた。

 それこそ、変な方向に解釈されるのを恐れてか。

「ほほう、あの()()()()()ステルスの妖精ちゃんとお前に、そんな繋がりがあったとはな――」

 案の定、何か企んでいそうな顔を浮かべるバズ。

 だが、彼の言葉が少し引っかかった。

 今、義足、という言葉を使ったような――?

 すると。

「ガイ」

 突然、背後から声がした。

 驚いて振り向くと、そこにはいつの間にかリボンがいた。

 手には、多く料理を盛り付けた皿が。

「ちょっと話がしたいんだけど、外に来てくれる?」

「へ?」

 突拍子もない提案に、ツルギは目を白黒させる。

 な、と動揺した様子を見せるミミと、お、と期待に目を輝かせるバズ。

「あんな面倒臭いヤツら抜きで、お話しましょ。ちょっとこれ預かってて」

 リボンはそう言うと、一方的にツルギへ皿を渡す。

 そして、勝手に車いすのハンドルを握って押し始めた。

「あ、ちょっと、いきなりどうしたんだよ!?」

「説明は面倒臭い」

 戸惑いもそっちのけで、ツルギは食堂から退場させられる。

 そんな2人の様は、多くの生徒の視線を集めていた。

「やはりあの2人、普通の関係ではなさそうですね……!」

 無論、ミミが悔しそうに骨付きチキンをかじっていたのは、言うまでもない。

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