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セクション08:ゲイザーを探せ!

 かくしてツルギは、生徒会長たるミミや仲間達と連絡を取り、総出でゲイザーを探し出す事となった。

 学園だけでなく、寮や飛行場なども含めた基地の敷地は結構広いので、人出が多くなければしらみ潰しに探し出す事などできないのだ。

 手がかりが全くない中、ツルギも車いすを走らせてゲイザーを探した。


 そんな中。

『ツルギ君、食堂で見つけたよ』

 最初に連絡が入ったのはラームだった。

「食堂に? ゲイザーはそんな所で何してたんだ?」

『さあ……』

「とにかく、今そこにいるんだな? すぐそっちに行く!」

『うん!』

 携帯電話を切り、ツルギはすぐさま食堂へと向かった。

 意外と簡単に見つかったな、と一安心しつつ。

 だが。

「ごめんツルギ君、ちょっと目を離した隙に――」

 到着した頃には、既にゲイザーはいなくなっていた。

 一瞬にして捜索が振り出しに戻ってしまった瞬間だった。


 しばらくして、今度は。

『ツルギ、校舎にいましたよ』

 ミミから連絡が入った。

「校舎に? そんな所で何してたんだ?」

『さあ、うろうろしていただけでよくわかりませんが……』

「とにかく、今そこにいるんだな? すぐそっちに行く! それまで見張ってて!」

『はい!』

 携帯電話を切り、ツルギはすぐさま校舎へと向かった。

 今度こそ見つかったな、と一安心しつつ。

 だが。

「ごめんなさい、逃げられてしまいました……」

 到着した頃には、またしてもゲイザーはいなくなっていた。

 再び捜索は、振り出しに戻ってしまった。


 しばらくして、今度は。

『ツルギー、格納庫にいたよ!』

 ストームから連絡が入った。

「格納庫? そんな所で何してたんだ?」

『うーん、何か探してるみたいだったけど……』

「とにかく、今そこにいるんだな? すぐそっちに行く! 絶対目を離すなよ!」

『ウィルコ!』

 携帯電話を切り、ツルギはすぐさま格納庫へと向かった。

 今度こそ大人しくしていてくれよ、と願いつつ。

 だが。

「ごめんツルギ、逃げられちゃった……」

 到着した頃には、またしてもゲイザーはいなくなっていた。

 捜索は三度、振り出しに戻ってしまった。


     * * *


 かくしてツルギは、ストーム、ミミ、ラームの3人を公園に集めて、一旦態勢を立て直す事となった。

「もう、何なのですかあの留学生は……?」

「落ち着きがないというか、逃げ足が速いというか……」

「あそこまでして、何がしたいのかな……ツルギ、わかる?」

 ミミ、ラーム、ストームが参ったとばかりに語る。

「確かに、ゲイザーの意図が何なのかわからないと、動きが掴めないな……」

 ツルギも頭を抱える。

 これまで3人が見つけた場所には特に共通点がある訳でもなく、ゲイザーの意図を掴むのは簡単ではなさそうだ。

「これも、あなたの一つ目が呼んだ不幸ですか、キュクロプス……!」

 ミミが、全ての元凶とばかりにラームをにらみ付ける。

「……!」

 途端、ラームが一瞬動揺した様子を見せた。

 キュクロプス。

 この国では、ラームのように生まれ持って隻眼の人物は、そう呼ばれる不幸を招く存在という古い慣習がある。ミミ自身も、それを信じる人物の1人らしい。

 実際、彼女自身にもそのジンクスはあり、何度も苦しめられている。

「人のせいにしている暇があったら、何か対策を考えたらどうですか、会長?」

「うっ、考えていますよ、それくらい! まだ、思いつきませんが……」

 だが意外にも、ラーム自身が気丈にミミに反論した。その正論にはさすがのミミも黙るしかない。

「はあ、こんな時に携帯が使えたら……」

 そうツルギは思わずにはいられない。

 ああいうどこへ行くかわからない人物にこそ、携帯電話を持たせるべきだと思うのだが――

「そうだ! いい事思いついた!」

 と。

 いきなり声を上げたのは、ストームだった。

「追いかけてダメなら、こっちからおびき出せばいいんだよ!」


 道路の真ん中に投げ捨てられた、1台の携帯電話。

 それを、4人は木陰からこっそりと監視している。周りから見れば不審極まりない行動だ。

「……なあストーム、これでうまく行くのか?」

「大丈夫、うまく行くよ!」

 ストームはこの作戦に自信満々のようだ。

「ゲイザーって、車いすも知らない田舎の人なんでしょ? きっと、携帯電話を持ってないのは、携帯電話の事知らないからなんだよ! だから道端に落ちていたら、絶対拾うはず! その隙に――!」

 というのが、ストームの作戦らしい。

 ちなみにゲイザーを釣る餌として投げ捨てられているのは、ツルギの所有物である。

「そううまく行くものか……?」

「私はいいと思いますよ。あなたも意外と頭が回るのですね」

 意外にも、ミミはストームの作戦に賛成している。

 こういう時一番冷静なのはミミだと思うのだが、そのミミが賛成する理由がツルギには理解できない。そこまでゲイザーに参っているのだろうか。

「でしょー? だから大丈夫だよ!」

「いや、でもさ――」

 やはり納得できないツルギであったが。

「あっ、来ました!」

 監視していたラームが静かに声を上げた。

 見ると、携帯電話に向かってくる影が。

 ゲイザーだ。

 彼女は最初から携帯電話が落ちている事に気付いていたようにやってきて、携帯電話をじっと見下ろしている。

(ひ、引っかかった――!?)

 思いの他うまく行ってしまった事に、ツルギは驚いてしまう。

「ほらね。じゃ、行くよ!」

 ストームが早速、自らの携帯電話を操作する。

 途端、餌役の携帯電話から、ポップな音楽が流れる。

 着メロだ。

 ちなみにツルギ自身が使っているものではない。気を引きやすい音楽として、ストームが勝手に設定したものである。

 ゲイザーはそれに少し驚いた様子を見せたが、迷う様子もなく携帯電話を拾い、操作した。

「……モシモシ?」

 そして、何と電話に出てしまった。

 意外にも携帯電話の操作はできるらしいが、誰のものかわからない電話に勝手に出るとはどうかと思ってしまう。

「はーい、あたしストーム。今あなたの後ろにいるのー」

 ストームはわざとらしく、そんな事を言う。

「……? モイッカイ」

「だーかーらー、あなたの後ろー」

「後ロ……?」

 言われた通りに振り向くゲイザー。

 直後。

「かかれぇぇぇっ!」

 電話に出た隙に忍び寄ったストームら3人が、ストームの号令で一斉に飛びかかった。

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