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精(霊)力をぶちかませ! ~妹幼女と精兄と~  作者: 岸野 遙
第一章 妹幼女の白パンはオムツでした
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設定詰め込み回は余裕で読み飛ばしました

 どうしたって、さ。


 世界の違いについてだとか。

 魔法だとか、魔物だとか。

 戦闘、人種、文化、価値観、危険。

 その他、生活様式から何気ない挨拶まで、異世界は違いだらけなわけだ。


 それらを一個一個説明とかされたって、ぶっちゃけ読み飛ばすよね?

 うん、オレなら読み飛ばす。

 重要なとこだけ列挙してくれればいいと思うんだよ。


 そんなことをテルスに言ったら、ふかいふかい溜息をつかれたよ。

 いいじゃんかよ、面倒なんだもん!



―――   ―――   ―――   ―――   ―――



 エルフの女の子ために戦うことを決意したオレ。

 その後はとりあえず、最低限必要なことだけ聞いたり言われた。


・ 蝕天(魔物が出る日)は3日後

・ 村に居る間はテルスの家に居候

・ 蝕天までの2日間、午後は戦闘訓練、午前と夕方は異世界知識の勉強


 話の終わる頃にはそろそろ夕暮れ。

 今日は疲れたろうからと早々に解放され、テルスと共にオーワンの家を出た。


 鮮やかな赤い光に照らされた村の姿。

 村の中のあちこちに、おそらくは魔法の明かりが灯されていく。

 変な言い方だが、日本の明るい明かりと違って、ぼんやりとした不十分な明かり。

 それでも、どことなく温かみや居心地良さを感じるのはなぜだろうか。


 空を見れば、夕方にも関わらず随分高い位置に月があった。

 随分と大きい月だ。すでに半月より太く、あと2,3日で満月となるだろうな。


―――あ、もしかして。


「なぁテルス」

「なんだ、ツバサ」

「蝕天って、ひょっとして満月?」

「そうだ。

 月が満ち天の頂に輝く時、月光射さぬ天の影より魔物が世界に姿を現す。

 そのことを蝕天と呼ぶ」


 オレの推察に、少し感心したようにテルス。

 少しだけ詳しく説明してくれた。


「天の影とは、月の光があたっているのに影となる場所だ。

 特に場所を定めず、世界中に大小無数にできる」

「えっと、そこだけ光があたっても影になるのか?」

「月光に限ってだが、そうだ。

 日の出ている時間には、日の光で影が薄れて分からない」

「それって、月と太陽が一緒に空に出る時があるの?」


 いや、日本でも特に珍しいことじゃないけどさ。


「そうか、異世界では月は沈むのだったな」

「?」

「この世界の月は、けして沈まない。

 毎日一周、天を回り続ける」


 月が沈まない?


「いまいちよく分からないんだけど……」

「あそこに月が見えるだろう」


 テルスが指さすのにあわせ、空を見上げる。

 かなり高い位置にある、大きな月。


「あの月が、同じ高さで、一日かけて空を一周する」


 テルスの指が、すっと空に輪を描いた。


「なるほど……」

「正確には、円ではなく螺旋だ。

 蝕天の日に月は天頂に昇る。一日一周ずつ、螺旋を描いて」

「つまり、新月の時には下の方にあって、満月に向けてゆっくり回りながら上がっていく、ということか」

「そうだ。

 そして満月の後、また螺旋を描いて、昇ったのと同じだけの時間を掛けて下がっていく」


 一番低い時であのくらいだな、と。テルスが空を示した。

 だいたい45度くらいってとこかな。

 村の中ならほぼどこからでも見えそうだ。


「月が沈まず回り続けるってことは、世界は丸くないんだろうか」

「世界は円い、と言われているぞ。

 遙かな世界の果てには、壁があるとも水が虚空へ落ちるとも言われている」


 あー、まるいってそっちじゃないんだよね。

 この世界は球体じゃなくて円盤ってわけか。少なくとも、テルスの認識では。


 まさしく、月が回り続ける辺り、天動説ってことか。

 文明とか地動説とか色々やばいかもしれないし、突っ込まないでおこう。


「一夜から蝕天を経て零夜まで。この期間を一月と呼ぶ」

「なるほど」


 暦は月の満ち欠けなのね。


「一月って何日で、一年って何ヶ月?」


 いや、一年って質問は早計だったかな?

 でも聞いちゃう。


「一月の日数はその月による。

 過去最長で百日近く、最短で十日未満だ」

「うおう、それは面倒だな」


 月齢の速度が一定じゃないのか。なんて面倒な。

 そんなんじゃカレンダーは難しそうだなぁ。


「だから、一年が何ヶ月かはその時々だな。

 近年は大体一月数十日だから、一年には八~十ヶ月程度だろう」


 しかし、一年が何ヶ月かなんて数え方は誰もしないぞ、と付け加えられた。

 確かに日数が一定じゃないんじゃ、数えようもないよな。


「私の家に着いたぞ。

 これからしばらくはお前の家でもある」

「お、ここがテルスの家かぁ」


 テルスの家は、大きくも小さくもなく、なんの目立った点もなかった。

……いや、目立つ点あるか。オレの目は節穴だった。


「なんで、屋根も扉も緑なんだよ」

「入れ」


 うわ、超スルーしやがった!

 恥ずかしいとか、言いたくないんだろうか。むむむ……




 イケメングリーンこと、テルスの家。

 物が少なく殺風景だが、居心地のよさそうな空間だった。

 ただし、全体的に緑色は多い。

 むしろ予想より少ないくらいかもしれない。だって扉も屋根も緑だったんだもん。

 あ、壁は普通に木の色のままでした。


「ここをお前の部屋とする。足りないものや困ったことがあれば言え」

「ありがとう」


 それからすぐに、今度は洗い場へ通され。


「体は私より大きいが、今日のところは私の服で我慢してくれ。

 明日にでも、大きさのあったものを用意する」

「お、おう?」

「服を洗う必要があるだろう」

「ん?

 お―――」


 言われて思い出す。

 そういえば、ヒグイグマに、襲われた時に……!


 きゃふん。お婿にいけないわ。




 そんなわけで。

 その日は初めて洗濯板で服を洗い、テルスの沸かしてくれた風呂に入り。

 やや質素で味気ない、異世界の食事を堪能した。


 思ったよりも、疲れていたしお腹も空いてたんだろうな。

 がつがつ食べて、食べ終わったら居間でそのまま即寝ていたらしい。

 食べ終わってのんびりしていたはずが、気が付いたら布団の中で朝を迎えていた。

 テルスが運んでくれたんだろうな。感謝だ。


 もちろん、起きた後はぼーっとした。

 夢の中で夢も見ないで寝たよ、とか。

 ゲームにしては長いな、とか。

 どこかで、これはもう現実だと理解しているのに。ぐだぐだ考えて。

 それから二度寝しようとしたらテルスに起こされた。


 一緒に朝食を食べる。

 それから片づけをし、午前の勉強へ。

 今日は非番とのことで、勉強も訓練もテルスが見てくれることになった。


 ちなみに、週の概念はあるらしい。

 6日で1週間、1日が休日。




 今日の午前の勉強の成果。


・エルフの集落は、森の中に点在する

 この森の中には他の集落はないらしい


・人間の町は森の外、街道沿いに発展

 この森から歩いて一日半くらいで、小さな宿場町まで行けるらしい


・一番近い大都市は、ここから南西の王都スェンディ

 何ともきな臭い感じなので、あまり長居は進めないと言われた


・魔物と戦ったり世界を旅する者たちを冒険者と呼ぶ

 戦士とか魔法使いとか色々なジョブがあるらしい

 ジョブに就き鍛える(レベルアップ?)ことでスキルを得られるらしい


・テルスのメインジョブは森戦士。森術師も低レベルだが習得してる

 というか、エルフ限定のこの2職は、エルフなら持ってて当然

 他にもあるらしいが、内緒にされた


・天の影の出現場所は、毎月違うらしい

 一夜から蝕天までの間に天の影の場所を突き止め、大きいものは蝕天にあわせて兵士や冒険者を派遣して対処する

 基本的には、影の大きさと敵の量が比例する


・今回、この村の近くで対処の必要な天の影は2つ

 オレはテルスと一緒に大きい方の対処に駆り出されるらしい


・女の子の戦闘員の数は教えてくれなかった



「……覚えることいっぱいで疲れたよぉ」

「世界が違うのだ、仕方あるまい。

 知らずに罪を犯して殺されたくなかろう?」


 木を燃やしたようにな、と付け加えるテルス。

 オレはなんとも言えず、うーと呻いただけだった。


ギャル分ゼロのまま、着々と好感度を高めるツバサ×テルス。

テルス×ツバサではない。間違えないように。

まさかこのまま、あらぬ方向(自主規制)


次回『剣の重みは命の重み』


―――初めての蝕天まで、あと2日。それまでに、一体どれだけの事が出来るのだろうか。


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