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精(霊)力をぶちかませ! ~妹幼女と精兄と~  作者: 岸野 遙
第二章 うさ耳兵士のご奉仕はいんぼうでした
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王女は放棄していた

「ツバサと」

「ゆりの」


「第一回、槍使い比較大合戦!」「だいがっせ~ん!」



○ 名前

アールド=ガードナー 対 ネブルフォーデ=フィナ=スェンディ


「おっさんも苗字付きで頑張ったけど、さすがに王族が相手では厳しかったな」

「うん。おひめさま、もじすうおおいの」

「あれ、勝敗って文字数?



○ 二つ名

ボーニア軍の一番槍 対 赤金しゃっこんの姫騎士


「おじさんの、ふたつな、なの?」

「違う気がするよな。勝手に名乗ってそうだし。

 ということで、土俵にも立てず姫様の圧勝だ」

「しゃっきんひめだと、おもってたの」



○ 槍の腕前


「打ち上げて払って強打、瞬殺でした」

「くらべるまでも、ないの。

 ぼけるすきさえ、なかったの」



○ 容姿


「さんぞくと、きらきらしたおんなきし、なの」

「詳しい容姿は、槍の腕前とともにもうちょっと後だ」



○ 総合評価


「そんなわけで、もう比べるのも馬鹿らしかったが。

 大差をつけて」



「さんぞくのおじさんの、だいしょーりなの」

「なんでだよ!」



「だってだって、びじんでのーきんのおひめさまとか、あきらかにはーれむわくなの!

 たぶんけんぞくわくなの!

 つまり、わたしのらいばるなわけ、わかる?」

「分からねーよ!

 というかお前はリアル妹枠だよ、お前の方がライバルになれてないよ」

「おにぃちゃんひどい、つっこみがようしゃないの。

 そういうわけで、わたしのけおとしこうさくにより、さんぞくのおじさんのしょーりなの」

「本音くらい隠せよ」

「しょーじきでじゅんしんな、せいとうはの、あいどるろせんなの」

「ないない、誰もそんなこと思ってないな」


「あ、でも、そっか」

「ん?」

「あのおひめさま、むねがないから、てきじゃないの」

「なんだと……」

「ひんにゅー、こえて、いたなの。てっぱんなの」

「由梨も大差ないけどな?」

「わたしは、おっきく、なるもん! ちょーおっきくなるもん!」

「日本での由梨のサイズは、な」

「てんちゅー!」



「わたしは、りーふぁに、おねがいしたんだからね!

 いまにみてなさい、ぜったい、だれにもまけないんだから!!」



―――   ―――   ―――   ―――   ―――



 王女は強かった。

 斜め下から突き出された兵士アールドの槍を、下から弾いて腕ごとかち上げ、上がった槍を横に払って体勢を崩し、側頭部を強打。一撃で昏倒させた。

 その間、せいぜい1、2秒程。目では追えたが、ツバサにあの攻撃を避けられたかは自信がなかった。


 刃の側面で殴っただけだから、おそらく死んではいないはずだ。部下に連れて行かれるアールドを追いもせず、黙って見逃す王女とツバサ。

 ぞろぞろと撤収していく兵団を眺めて、剣を納めようやく深い息をついた。


 今更ではあるが、息は上がっているし、腕も足もがたがたである。ただひたすらに疲れた。穏やかな日差しと涼しげな風が、火照った身体に心地よかった。


「さて、残ったお前だが」

「ああ、助けてくれてありがとう、ございます」


 しゃべりつつ、敬語にする。相手は王族らしいし、機嫌をそこねて良い事はなかろう。

 助けてもらった恩もあるのだから、先行した由梨達は気になるが礼儀は果たすべきだ。

 しかし、そんなツバサの考えを打ち砕くように


「助けたわけではない」


 冷たく言い放つと、ネルは馬上から槍をツバサに向けた。


「いくら蝕天が遠いとは言え、戦の最中、戦場を女子供と歩いてるなど正気の沙汰ではあるまい。

 何者だ、なぜこんなところに居た」


 自分の眼前に突きつけられた刃が、陽光を返しぎらりと光る。

 蝕天を遠く過ぎ、月は細く月光を照り返すほどではなかった。


(うーん、思ったより殺伐としてるのかな。

 戦争中みたいだし、そのせいだと思いたいんだけど)


 先ほど兵士たちに言われたのと同じようなことを言われて、心の中で唸る。


 辺りののどかで穏やかな風景、日本とは味が違うと感じる澄んだ空気や風。

 そんな中、自分に向けて鋭い刃を突きつける美女。

 場違いにも美しい光景の中、ツバサは王女を見上げた。


 まず目を引かれるのは、鋭い光を放つ黒みがかった青い瞳。睨み付けるというほどではないが、切れ長の目が迫力を嫌でも増している。

 夕日のような橙混じりの明るい赤髪は、肩にも届かず短く切りそろえられている。

 鎧に包まれよく分からぬが、腕や足はそうとう引き締まり鍛えられているのだろう。無駄な肉とか、太いという感想は一欠片も浮かばない。

 その身を包む鎧だが、胸部の膨らみがまったくなかった。

 いや、例え男であっても零ということはないはずだが。鎧を見る限りでは、男物というべきか、特別内部に余裕があるようには見えない。

 つまりまぁ、ぶっちゃけると、これっぽっちも胸が無さそう、ということだ。


(残念だ……こんなに美人なのに)


 そう、王女は美人だ。

 気も力も強そうで、迫力はあるが。それでも見る者を惹きつけ離さない、貫録とも似た美しさがあった。

 おそらく元の世界であれば、ファンクラブなり、同姓の崇拝者なりが多数できあがることだろう。

 ツバサエロゲー的に考えれば、高潔な姫騎士、触手に襲われそうな感じであった。

 もちろん、こんなこと由梨以外の他人にはけして言えないが。


 ツバサが考えてることなど知らぬはずの王女の目に、少し険しさがこもった。

 慌ててツバサが口を開く。


「オレ―――私と、連れ二人とで、旅をしています。戦争のことは知りませんでした」


 自分たちは森の中のエルフの村からやってきた旅人だ。

 森から出たことがないので戦争など知らなかった。知っているはずがないのだ。


「連れ二人というのは、あの宿場に向かっていた母娘で間違いないな?」

「はい。会ったのですか?」

「ああ、仲間を助けてくれと頼まれた」


 二人は無事なようで、眼前の状況を置いてまずは安心する。


「歩いていたらさっきの兵士達を見かけ、斥候だと言われていきなり襲いかかられたんです」

「どこから来た?」

「森からです。あっちの方の」

不帰かえらずの森だと……」


 ツバサが指さした方角に、王女の目が見開かれる。


(あれ、まずった?)


「……」

「……」


 遠い森と。

 宿場に向かわせた二人と。

 眼前の男を、一度ずつ見て。


「よし、わかった」

「は、はい?」

「連行しよう、大人しくついて来るがいい」

「え、あの、ちょっと?」


 思わず詰め寄ろうとするツバサの首に、ほんのわずかに触れる刃。

 下を向くこともできず、身を引くこともできずに。挙げている両手を誇示するように、もう少し高く挙げてみせた。


「奴らの仲間とは思えないが、万が一ということもある。

 森から来たなど、嘘をつくにしても内容があまりにひどい。

 私では判断がつかないし、そもそもこの場で判断するつもりはない」

「えっと……」

「黙ってついて来い、私に難しい判断はできん。他の者に判断してもらおう」


「……つまり、考えることを放棄した?」


 思わず突っ込んだツバサの首に、1ミリほど刃が食い込むと。


「私は考えるのが苦手だ。

 下手に考えて騙されるくらいなら、何も考えずに連れて帰って他の者に判断させる」


 駄目っぷり全開だが、ある意味で清々しいほど的確で潔い意見。

 ここまではっきり考えることを放棄されてはどうしようもない。下手に言葉を重ねるのも逆効果だろう。

 そう思うと、まぁおっさんよりは美女の方がいいよなと自分を納得させて。


「身の安全―――特に、仲間二人の安全が保障されるなら大人しく同行しましょう」

「いいだろう、お前達が我らに仇なす者でないなら、我が名に掛けて安全を守ると補償しよう」


 ずっと考えていた、一番大事なことだけ約束を取り付けた。


瞬く間に兵士を畳み、返す槍をツバサに突きつける王女。

王女とツバサの出会いは、何を意味するのか。

同行するツバサは、王女に何を見せるのか。


次回『姫騎士様はけがされた』


―――今、この作品の方向性が問われる


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