↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精(霊)力をぶちかませ! ~妹幼女と精兄と~  作者: 岸野 遙
第一章 妹幼女の白パンはオムツでした
37/62

幕間 ウェナさんの覗きな日々

時系列としては幕間1開始後、門を通る数日前となります。

 窓辺から差し込む日差しに、まだ半分以上寝たまま身じろぎ。

 布団の温もりは手放しがたく、朝の微睡は至福のひと時。

 この時間は誰にも邪魔されたくない。


―――されたくない、と思っているのだが。

 乱入者は容赦ない。


「ウェナねえ、いつまで寝てんのよ」

「うー、寒い……」

「寒いじゃないの、ほら起きた起きた。

 早く朝ごはん作ってよね!」


 作ってもらう側がこの態度。

 さすがに姉も、少しイラっとくるのだが


「まったく、あの人間とヤってからすっかりだらけちゃって」

「ちょちょちょちょっとぉぉ!?」


 続く発言には、さすがに寝ていられなかった。

 狭い家の中、ばればれだったのは暗黙の了解じみていたが。さすがに直接口にされると耐えられない。


 飛び起きて、真っ赤な顔で口をぱくぱくさせる。

 いや、何を言えばいいのか分からないのだ。


「はい、おはよう。

 早くご飯作ってね」

「あ、あのね、あのねフォーテ!」

「はいはい、ウェナねえはご馳走様」


 付き合いきれないとばかり、腰に手を当てわざとらしくため息。


「あんまりだらけてると、オーワン様に言って水晶玉没収だからね?」

「それだけはご勘弁をー!」


 結局今日も、姉は妹に頭が上がらず。

 いつものように鍋を振るうのだった。




 水晶玉。

 ウェナの部屋にいくつも並べられたそれらは、魔術で用いる特別な道具だ。

 机の上に並んでいる数は、全部で10個。他にも箱の中には多数の水晶玉が入っていた。


 映術師、というジョブがある。

 映術師は特定の場所、あるいは特定の人を水晶玉に映し出すスキルを有する。

 また、水晶玉に映した映像を記録・再生することができる。

 映術のみでは音は記録できないが、それでも非常に有用な能力であった。

 この村唯一の映術師であるウェナは、普段は町の出入り口や発見された天の影を記録し、何かあった時には保存した映像をオーワンへ提出している。


 今月については、オーワンの依頼で村に来てからずっとツバサを監視していた。

 一つの水晶玉に録画できるのは、せいぜい1,2時間程度。

 録画が途切れぬよう、毎日複数の水晶玉でツバサの姿を録画し、毎日提出と報告をしていた。


「ツバサさん、か……」


 最初は、ツバサが村に来た時。

 他の村人達と同じように、遠目に眺めて。

 その時に、映術の対象として『登録』をした。


「あの時は、目が合っただけで恥ずかしくて。

 今思えば、惜しいことしちゃってたよね」


 音は記録できないため、その後の会話については良く分からなかったが。

 大笑いする村長や呆れ顔のテルスなど、ウェナからすれば珍しいものを見れた。

 そんな顔をさせる異界の旅人を、珍しくも興味深く―――どこかでドキドキしながら見つめていた。


 その後は、二日間だけの修行。

 午前の講義はだらけた感じであったが、午後の鍛錬は思ったよりもしっかりしていた。

 イサギを殺した時は、会話内容こそ分からなかったが、とても凛々しい表情だと思った。


「……あの時には、もう……」


 続きは、恥ずかしいから口にできないけれど。

 自覚こそいまいちであったが、今にして思えばその時にはもう惚れていたのだろう。


 そして、蝕天。

 戦いの場を見ることは初めてではない。毎月、蝕天の映像を記録しているのだから。

 それでも今月は、オーワンによる雑魚の瞬殺劇とは違った。

 いくら魔術で作られた分身のようなものとは言え、エルフの仲間たちがばたばたと倒れていくのは見ていて辛かった。


「……」


 その後のことを思いだして、思わず真っ赤になった頬を抑えるウェナ。

 主との戦い。

 テルスの大魔法。

 爆発と、そこでツバサを助けた謎のローブの人物。


 ツバサとローブとの、その後の行為。

 真っ赤になりながらも、瞬きもせず食い入るように見つめてしまったこと。

 繰り広げられた行為に、悔しいとか恥ずかしいとかえっちとか思いつつも、羨ましく感じてしまったこと。

 村長への提出前に、こっそりと別の水晶玉にも映像をコピーして、保管してしまったこと。

 その後にも、隠れて何回か見てしまったこと。

 そんなあれこれの全てが、心を乱し、顔を熱くさせた。


「でもその後の姿も、かっこよかったんだよ?」


 はしたない姿から一転。

 その後の主との連戦、特に二匹目の主を一撃で倒した時は思わず手を叩いてはしゃいでしまった。

 枯渇状態で倒れた時には思わず家から走り出そうとして、妹に止められたくらいだ。


 戦闘後は目覚めぬツバサをずっと水晶玉越しに見つめて。

 駆けつけて看病したいとか思いながら、苦しい時間を過ごした。

 目覚めてくれた時にはフォーテに抱き着いて嫌そうな顔をされたりもした。


 その後は療養ばかりで目立ったことはなかったけれど。

 村長から、ツバサの体力が回復した後に祝宴を行うと聞かされ、その日を楽しみに待ったものだ。


「初めて直接会って話せた時は、嬉しかったなぁ」


 祝宴。

 みんなと一緒に、ツバサを囲んで。戦いのこととか、楽しく話して。


 その後、村に残ってくれないことを、フォーテが文句を言って。

 辛そうにしているツバサを、思わず抱きしめてしまった。


「やっぱりえっちだったけど、すごく……」


 可愛かった、とは違う。

 かっこよかったとか、逞しかったわけじゃない。

 どちらかと言えば、弱々しく、悲しく。

 けれど、とても優しくて愛しかったから。

 そんな姿もまた、どんな姿であっても、好みこそすれ嫌うわけがなかった。


……まあその後のローブの乱入で、思わずあの時の行為を思い出して逃げてしまい。

 後でずっと悔やんで、部屋で少し泣いてしまったのもいい思い出、かもしれない。



 一歩間違えずともストーカーの如く、ツバサが来てからは毎日ずっとその姿を観察していたウェナ。

 そんなことを続けていれば、嫌でも相手のことを色々知ることになると言うもの。

『目を離している間に何かあったら困るから』とばかりに、入浴シーンまで恥ずかしいのを我慢してチラ見した(ばっちりだ)。



 伸ばした指で、一つの水晶をつつく。

 丸い表面にウェナの指先が映り、触れた箇所から波紋のように映像が広がった。


 これだけは村長にも提出していない、大事な大事な宝物。

 水晶玉に映しだされたのは、お風呂で寄り添って笑顔を浮かべる、ウェナとツバサの姿であった。




 話した内容は、よく覚えている。

 けして忘れられない。


『この村を離れることとなるので、きっともう、会えないのでしょうけれど』


 ウェナはツバサに、そう告げた。


 それは、ツバサがこの村を離れて旅立つので、という意味ではなく。

 ウェナが、この村のエルフ全てが、この村を離れることとなるので。きっともう、会えない。

 ツバサには伝えなかったけれど、そういう意味の言葉だった。


「それでも、きっと迎えに来てくれるって、信じてるから。

 プロポーズ、もう一度しっかり聞かせてね?」



 抱き合う自分たちの姿に赤面しつつ、それでも映像を止めることはせずに。


 水晶玉を持ち上げると、ウェナは映像の中の想い人にそっと口づけた―――


「タイトルがひどいよ!

 覗きじゃないもん、お仕事だもん!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。