表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精(霊)力をぶちかませ! ~妹幼女と精兄と~  作者: 岸野 遙
第一章 妹幼女の白パンはオムツでした
35/62

旅立ち

 この世界に来てから、向こうの暦での一ヶ月近くが経ち。

 その間、色々なことがあった。


 そう、色々あった。

 元の世界とはあまりにもかけ離れた日常。

 自由であり、命がけであり。

 何でもできるけれど、全て自分で決めて頑張らなければいけないような。

 そんな、この世界の日常。


 旅に出れば、この先はさらにそれが顕著になるんだろう。

 何をするのか。

 どこへ向かうのか。

 止まるのか、進むのか。

 道しるべはなく、全ての道が全てに続いていて。


 この村での、ハードだが新鮮な日々は終わり。

 今日、そんな旅立ちを迎える―――



―――   ―――   ―――   ―――   ―――



 朝早くにウェナさんに起こしてもらい、ちょっとだけ一緒に過ごして。


「それじゃぁ行ってくるよ」

「うん、いってらっしゃい。

 迎えに来てくれるの、待てるだけ待ってるね」


 挨拶と、軽い口付けをかわし。そろそろ村人たちも活動を始める頃、テルスの家に帰るオレ。

 イケメングリーンはオレの朝帰りにも何も言わず、黙って朝食の用意をしてくれた。

 このまま誰にも言いつけたりしないでね?



 朝食後は、旅支度を整え、オーワンの家へ。

 旅に必要な非常食や道具類は、全てテルスが用意してくれた。イケメン様々だ。

 全ての荷物は自分たちで担ぐしかないし、ある程度減らすしかないのは仕方ない。


 いつかは馬車とかで旅ができるようになるといいな。

 あまり大荷物抱えてたら、戦闘できないしね。

……実際に戦闘になったら、その場に荷物下ろして戦うべきなんだろうか?

 悩ましい。


 そんなことをオーワンに話したら、なんとびっくり。


「ツバサくんは、アイテムをしまう魔法が使えないのかね?」

「え、なんですかそれ?」

「異界の旅人の固有スキルで、別次元にアイテムを出し入れできる魔法があるのだよ。

 アイテムラン、とか呼ばれていたかな?」


 そんなことを言われてしまった!


「全然知らないんですけど……」

「ふむぅ。

 私の知り合いは、初めて会った時から使えたのだが。レベルが足りないということなのかもなぁ」

「がーん」


 あれ、と言うかおっさんの知り合いに異界の旅人なんて居たのか。

 初耳だぞおい。


「使えないものは仕方ないな。必要なものは、全て抱えて運ぶしかないだろう。

 しかし、そうするとマーリィ達の荷物をどうするか……」

「ひょっとして、オレの荷運びの魔法を」

「うむ、もちろん当てにしていたのだ」


 うわぁ……

 オレが悪いはずじゃないんだけど、なんとも気まずく居心地が悪い。


 その後、急遽マーリィさんの荷物の再編成がされ。

 テルスにもらったより、一回り大きな背負い袋を受け取る。中身満載で。

……これ、真面目に戦えるんだろうか。不安だ。


「この世界の旅人達って、荷物とかどうしてるんだろうなぁ。

 異界の旅人以外は、そのアイテムランは使えないんですよね?」

「少なくとも、私の居たパーティでは他に使える人は居なかったな」


 少し懐かしそうに語るオーワン。


「そもそも普通の旅人は、幼子など連れて歩かぬし、オムツなど必要なかろう。

 食事も全員同じ非常食や現地調達だ」

「つまり、全ては由梨ってことか」


 ならまぁ仕方ないよな。

 人は人、オレはオレだ。


「うえーん、おにぃちゃんがおにもつあつかいするぅ」

「あーはいはい、よしよし。

 お荷物だとは思うが、荷物の中でお前が一番大事だからな?」


 頭を軽く撫でながら、むくれる由梨にそう告げると


「あれ?

 おにぃちゃん、それうれしくないよ?」


 真顔で切り返されてしまった。

 うん、誤魔化せなかったか。


「由梨が居なければ、そもそも旅立つ必要もないからな。

 いつだって、お前が中心でいいんだ」

「おにぃちゃん……こんどはうれしいよ」

「そうか、よかったよ」


 笑顔の由梨の頬を撫でてやると、くすぐったそうに目を細め。

 やおら、部屋の床に寝転がった。


「由梨?」

「しょうがないなぁ、おにぃちゃんは、わたしにべたぼれなんだからぁ」

「……ノーコメントにしておこう」


 べたぼれという言葉の意味合いとしては、きっと正しくないんだが。

 でも間違ってもいないんだろうな。

 あと泣かれるとめんどいし。


 そんなオレに足を向けて寝転がったまま、由梨は微笑み


「いいよ、おにぃちゃん。

 ゆりのぜんぶをみて……」


 オレの目の前で、見せ付けるように。

 その短い片足を上げて、ゆっくりと股を開いていき。

 めくれあがったスカートの中、徐々に顔を覗かせる―――


「白いオムツだな。

 まだ交換する必要はなさそうだぞ?」

「いやぁ、そんな、そっけないたいど、とっちゃいやぁ!」

「オムツ相手に、どーせいっちゅぅんだ」


 真顔で突っ込むオレに、数秒だけ沈黙し


「よくじょー?」

「するか、ばか。十年早いわ」


 悪ふざけが過ぎる由梨の足を掴んで閉じると。

 抱えあげ、頭に触れる程度の拳骨を落とした。


「またマユリにあなたはなんてことしてるんですか!」

「うおっと、マーリィさん」

「まーりぃさん!」


 ちょうど戻ってくるマーリィさん。間が悪いなぁ。

 オレから離れた由梨はとてとてと走り寄り


「おにぃちゃんが、わたしのしたぎによくじょーしてくれないの!」

「マユリも変なことばっかりするんじゃありません!

 あの人は変態なんだから、真似したり言うこと聞いたら駄目ですからね!」

「ちょ、オレそこまで嫌われてるの!?」

「あ、あたりまえです!

 その、えっちだし、えっちですし、あとあと、変態だし!」


 マーリィさんがオレのことをどう思っているかよく分かる発言です。

 あれ、なんだか胸が痛いよ?


「ちがうよ、おにぃちゃんはそんなもんじゃないよ!」

「由梨、それフォローになってない」

「ろりこんだよ! ようじょあいこうかだよ!」

「ちげーよ、どちらかと言えば間違いなく巨乳フェチだよ!」

「幼女で巨乳がいいとか、救いようがない変態です!」

「まっててねおにぃちゃん、わたしもすぐにきょにゅーになるからね

「あーもう、あんたら人の話聞けよ!」


 ぎゃーぎゃーと騒ぐオレ達に、苦笑するオーワンと、眉一つ動かさないテルス。

 だが―――


「昨夜ツバサが転がり込んで朝まで過ごした家には、若い娘だけが住んでいる」

「ちょっ、テルス!?」


 なんでそこでばらすの!

 あと、なんで知ってるの!?


「不潔です、最低です!」

「ひどい、ゆりといういもうとがありながら、ほかのおんなのところにいくなんて」


 ぐ、これは事実だけに否定できない、なんとも言えねぇ。


「旅立ちの朝にも関わらず朝帰りか。

 若いな、ツバサくん」


 笑いながら肩に手を置いてくるオーワン。

 そして、笑顔のまま


「いでででで、砕ける折れる、みしみし言ってる!」

「娘と孫のためにも、砕けた方がいいのではないかな?」

「全ては長の意思のままに」


 外そうとしてもびくともしない、ほんとこのおっさんなんとかして!

 くそう、しかもテルスもオーワンと一緒で腹黒かったのか!


「本当です、こんな人とマユリを一緒になんて居させられません!」

「ほんとーだよ、こんなおにぃちゃんとまーりぃさんを、いっしょにいさせられないよ!」


 互いを庇うように腕を出し、オレから離れるエルフの母娘。


「マユリの教育に悪いから近寄らないでください!」

「まーりぃさんに、てをだしたらだめだよ、だすならまずはゆりからにしてね!」


 似たような格好なのに、言ってることは違いすぎる。


「って言うか肩壊れるわ、いい加減離しやがれ!」


 妨害されないように&由梨に見えないように、突き出した手のひらにフラッシュを点す。


「うっ」


 くらったのは相変わらずテルスだけだが、咄嗟に緩んだかオーワンからようやく逃げ出す。

 あー、くそ。まだ肩がいてぇ。


「というか、おにぃちゃん!」

「お、おう?」

「はじめてはゆりといっしょにって、ちかいあったのに、ひどいわ」

「誓ってねぇぇっ!」




 結局、どたばたとひたすら騒ぎたいだけ騒ぎ。

 午前中に出発するはずが、昼の時間を過ぎ、オーワンが用意してくれていた弁当を家の中で食べて。


「テルス、世話になったな」

「ああ。またな、ツバサ」


 テルスと握手を交わし。


「おっさんには苦しめられたが、おかげで強くなった。ありがとう」

「うむ。二人をよろしく頼んだぞ、ツバサくん」


 おっさんとも、警戒しつつ握手し。


「それではお父様、テルス。行って参りますね」

「おじちゃんたち、いってきまーす」

「うむ、気をつけるのだぞ」

「いつか、また」


 二人の連れもまた、それぞれ挨拶をして。


「それじゃぁ、まずは森の外を目指して」

「はい」

「うん!」



 きっと。

 この世界に来てから今日まで過ごした、その日々以上に。

 ハードで理不尽で、時には泣きたい時もあるんだろうけれど。


 今度こそ、後悔しないために。

 自分自身で掴んだ結果に、胸を張れるように。


 由梨とともに、頑張ろう。

 仲間と一緒に歩いていこう。


 最愛の妹と、ほんのちょっぴりだけ、己の欲望のために。



「いざ、冒険の旅へ!!」




              ――― 第一章 終 ―――


チュートリアルも終わり、いよいよ三人は森の外へと向かう。

森の外に広がる景色とは、その地で待つものとは。

果たして、彼らの次なる冒険、彼らの運命とは―――


次回 精(霊)力をぶちかませ! 第二章

『うさ耳兵士のご奉仕はいんぼうでした』


ツッコミ2倍、エロ分3倍! 乞うご期待!!



          □ □ □ □ 



第一章のあとがきについては、活動報告または個人ブログの方に書かせていただく予定です。

以下、今後の予定を少しだけ。


第二章の開始前に、第一章のおまけ(という名の本編裏側)と、少しこの先を書き溜めたいと思っています。

再開後も、今後は毎日一話のペースではなく、2,3日に一話になる予定です。


ここまで読んで下さり、どうもありがとうございました。

第二章開始は 【11月21日】 を目標に頑張りたいと思います。




評価・ご感想・ご意見など、随時大募集なのです。

特に、誰が人気かとか、何が求められてるのかとか気になる限りでございますよ。

そう言えば、前にスフィ師匠も質問募集してましたし、ね……あはは……



それではこれにて。

ご縁(と言う名の執筆時間)があれば、また第二章でお会いしましょう。


皆様。良い秋を、良い冬をお過ごし下さい☆


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ