異世界の解説は段階を追う必要があります
今にして思えば。
あの大精霊、すげー可愛かったしエロかったんだよなぁ。
着てるの葉っぱだけだったし。
もしかしてあの葉っぱめくってたら……ごくり。
後悔というかなんというか後悔。
あ、ぼくはエロだけど、ロリじゃないんだよ?
本当だよ?
だけどロリじゃなくたって、女の子のスカートがめくれたら見ちゃうじゃないか。
判断基準はロリかどうかじゃない、男かどうかなんだよ!
――― ――― ――― ――― ―――
「それじゃ、もうちょっと具体的な話をさせてね」
手を離して微笑むと、リーファは説明を始めた。
面倒なので読み飛ばしたかったが、妹の命がかかっているならそうも言えない。
「あなたには異世界へ来てもらって、そこで生きてもらうわ」
「生きる?」
「そう。
当面は、あれをしろとか誰を倒せとか、そういう指示はないわ。
好きにしてくれればいい」
「……それで、何のためにオレを招待するんだ?」
「いつか分かるわ。後で説明するし」
「いつかって、すぐに分かるんじゃんかよ」
「まぁまぁ、焦らないでね」
呆れて突っ込むオレを、余裕の表情で制し。
指を立てて振ると、リーファはいつの間にか置いてあった椅子に腰かけた。
勧められるままオレも椅子に座り、今度はテーブルにお茶を出される。
夢だか異世界だかよく分からなかったが、そういうもんだろうと気にしないことにした。
「異界の旅人、とあなたは呼ばれることになるわ」
「異世界の人間ってことか」
「そうよ。
異界の旅人は、強大な力と、強力な固有の能力を有する。
私たちの世界で、勇者や偉大な存在となりうるものよ」
「勇者か!」
悪くないな。
長年オタクをやってる身としては、ゲームのような世界は分かりやすいしありがたい。
由梨が生き返ることが約束されたのだ、少しは盛り上がったり楽しんでもいいだろうと思う。
「あなたの得る一つ目の力は、従姫勇王」
「メイデンマスター?
内容は?」
「眷属を得て、ともに力を高め合い心を重ね合う力よ」
リーファの言葉を、ゲーム的に解釈すると。
「特に仲のいい仲間か家来ができる感じ?」
「そうねぇ……」
目を閉じて顎に指を当て、少し考え込むようなリーファ。
やがて考え終わったのか、オレを見てにんまり。
「あなたの好きなゲームで、女の子達が傅くような。
メイドでもハーレムでもいいわ、そういう感じね」
「お、おおお……!」
この瞬間だけ、本当にこの一瞬だけは、由梨のことを忘れてました。ごめんなさい。
でも、まじか!
メイデンって言われて女の子たちを一瞬想像したんだが、そんな甘い話があるのか!
「あなたは、眷属とした女の子に様々な加護を与え強化するとともに、女の子達があなたを強化する。
そんな、パーティとして強くなるジョブよ」
「ジョブ?」
「そういうもん、ってだけ思ってくれればいいわ」
言葉で大体の意味合いは分かるから、まぁいいか。
「それから、異界の旅人として、莫大な精霊力があるわ。
これは私が与えたわけじゃなく、あなた自身の資質みたいなものね」
「精霊力?」
「あなた達の概念の、魔力とかまじっくぽいんと?とかになるわ。
魔力はまた別にあるから、違いは向こうに行ってから追々覚えてね」
「わかった」
お茶を飲んで一息つき、ここまでの情報を一度整理する。
「異世界へ行って、メイデンマスターになって、大量の精霊力で強くなって。
で、妹を探してその後は好きに生きればいい、ってことであってるか?」
「ええ、それでいいわ」
オレの理解に、勉強ができたことを褒めるようにリーファは微笑んだ。
外見で見れば、オレがリーファに物を教えてる方が自然な年齢差だけどな。
「ここまでの情報が、第一段階ね」
「第一段階?」
「そう。
妹さんを見つけて、一人目の眷属を得たら、ここまで教えてあげるって感じ」
「?
今教えてもらったけど?」
「記憶に封印を掛けるわ。
さっき言った条件を満たすまで、思い出せないようにね」
「そりゃまた、なんで?」
「生まれたばかりの妹さんを探して、あなたに暴走して欲しくないからよ」
リーファの言葉に、ちょっと渋い顔をする。
暴走って……
ああ、でも何も言われず自由にしていいなら、まずはなんとしても由梨を探そうとするわな。
「そこまで心配してるわけじゃないんだけど、妹さんの側にも時間は必要だしね。
前情報なしで、まずは世界を見て楽しんで欲しい、ってことで納得してくれると助かるわ」
「必要ってことなら、分かった。
後で思い出せるんならいいさ」
「ええ、条件を満たしたら思い出せるわ」
そこまで言ってから、可愛らしい眉間にちょっとしわを寄せて。
「本当は、条件を満たすたびに私が姿を現して、その都度教えられればいいんだけどね。
姿を現すには精霊力が弱まり過ぎてるし、まして森から離れられたらそう簡単には話せないから。今のうちに全部伝えて、封印を掛けさせてもらう方がいいのよ」
「なるほど。そっちも色々大変なんだな」
「ええ。異世界から、勇者の卵を招待するくらいには、ね」
溜息をつくリーファに、なんとなく同情する。
外見はただの少女でも、大精霊とか言ってたし。苦労してるんだろうなぁ。
「他に、何かあるか?」
「そうねぇ……
思い出した未来のあなたに、私からメッセージよ」
そういうと、リーファはオレに向けて微笑み。
「チュートリアル、いかがだったかしら?
風向きの村は、よくも悪くも世界から隔絶された村。
そこで学んだことは遠い過去の知識だったりするから、頼り過ぎないようにね」
そこで言葉を切ると、可愛らしくウインクして。
「あなたなら村を救い、妹さんと共に広い世界へ旅立てると信じてるわ。
次の眷属を見つけ、異世界旅行を楽しんでね」
「……チュートリアルとか、どこで覚えたんだよ」
「あなたの知識から学んだわ」
オレの呆れた声に、悪びれもせぬ大精霊様。
まあ、オレや由梨のことを知ってたんだし。何を知ってても驚く必要はない、って納得しておくしかないか。
でないとツッコミどころが多すぎるしな。
「それじゃ、第一段階はここまで」
「了解した。
これ以降、第二段階とやらの情報を思い出すには、どうしたらいいんだ?」
「まずは、眷属を増やすことね。
眷属となってくれる、あなたに全てを捧げると誓ってくれる、そんな女の子を」
女の子限定で良かった。
本当に良かった。
「あ、男でも大丈夫なはずよ?」
「大丈夫じゃなくていいよ!」
男メイドや男ハーレムなど、頼まれても願い下げだ!
むしろ焼き払う。
「男の子だって、可愛いし気持ちいいと思うけどなー?」
「知るか、知りたくもない!」
ええ、本当に。
知りたくもありませんでした……
「それじゃぁそろそろ、区切るね」
「わかった」
「次回は、可愛いリーファちゃんといっぱいエロエロで気持ち良くて喜びまくっちゃうから、頑張って思い出してね?
「―――え?」
異世界へ旅立つことを決めたツバサ。
与えられた力や役割、記憶封印の意味を知り、第一段階を終える。
続く第二段階への期待とどきどきを胸に、舞台は再び現在へ。
次回『母親と赤子』
―――次回のいっぱいエロエロで気持ちいい予告なんて、どうせ釣り




