大精霊は比較的ロリでした
外では、清楚でお淑やかで儚げ、完璧大和撫子の由梨だったが。
家の中で、オレの前ではただの妹だった。
いや、ただの妹、なんてもんじゃないな。
シスコンと言われても否定する気はない。
生活やらバイトやら、わりと全て由梨のためだった。
入院してからは、休日は全て由梨と一緒に過ごした。
正直に、溺愛していたと言っていいだろう。
しかし当の由梨は、オレ以上に、そりゃぁもうやばかった。
オレと違って、直接的に非常に色々世間体とかやばかった。
何度理性が決壊しかかったか分からないくらいやばかった。
ブラコンとかそんな言葉はどうでもいいくらいやばかった。
決壊しかかっただけで、ただの一度も、決壊はしなかった。
その事は、兄として必要な態度で、オレ達の関係に大事な事だったと思うけれど。
由梨を見送った、あの日。
頑なに断り続けた事に、疑問を覚え深く後悔したことも、事実だった。
――― ――― ――― ――― ―――
それは、由梨を見送った翌日の夜、眠った後の出来事だった。
夢なんだと思う、その場所で。
オレは、精霊を名乗る存在と出会った。
「こんばんは、ツバサくん。初めまして」
「……」
白と緑のまじりあった、淡い光を放つ空間。
何もないそこに、オレと少女だけがいた。
お尻ぐらいまである長い長い緑髪を揺らめかせ、宙に浮いている。
服装……と言っていいのかよく分からないが、胸と腰に大量の葉を巻き付け、今にして思えばかなりエロい姿だ。
見た目は、中学生くらいだろうか?
由梨よりもずっと小さく、幼い。胸も同じくらい小さい。
そう考えて、由梨はもういないと思い出し。
夢の中で、また泣きそうになった。
「異世界へ、あなたを招待しに来たの。
私は大精霊リーファディオル、リーファでいいわ」
「……」
「この世界に、もう望みも期待もないなら。
あなたの力を貸してくれないかしら?」
大精霊と名乗ったリーファの言葉に、少し顔を上げる。
確かに、望みも期待も、その時は何もなかった。
「力を貸してくれるなら、私の力の範囲で、あなたの願いを叶えてあげるわ」
「由梨を」
反射的に答えていた。
「由梨を生き返らせられるのか?」
「この世界で、単純に生き返らせるのは無理ね」
オレの言葉は、予想通りだったのだろう。
冷静に、淡々と。でも明るい声で、リーファが答えた。
「肉体自体が生存に絶えず、命もすっかり弱って力尽きた。
この世界で私が振るえる力の量を考えたら、蘇生は無理だわ」
よく分からなかったが、つまり蘇生は無理。
それだけ分かれば十分、もう用無しだと、オレは俯いていた。
「けれど」
そんなオレに対し、調子を変えずリーファが続ける。
「魂だけを異世界へ招待し、そこで新しい身体で生き返らせることなら出来るわ」
「なに……?」
由梨を、生き返らせられる……?
「あなたと一緒に異世界へ招き、一緒に行動する。
2人揃ってこの世界へ戻ることは、ものすごく難しいけどね」
リーファの言葉を、よく考えて噛み砕く。
「由梨が、他人の身体で生き返る、ってことか?」
「あってるような、ちょっと違うような?
今までの記憶を持ったまま、赤子として生まれてくるってことよ」
「……」
記憶を持ったままであれば、それはきっと、間違いなく由梨なんだろう。
記憶があることが由梨にとって幸せかどうかは良く分からないけど、記憶はないけど生まれ変わりましたーとか言われるよりよほど信じられる。
「オレは?」
「あなたは、今の肉体のまま世界を移動することになるわ。
由梨ちゃんの生まれた場所の、それなりに近くにね」
「分かった」
由梨が、身体はどうあれ、生き返るのならば。オレは答えた。
「力を貸そう、いや協力させて下さい。
由梨を生き返らせて、一緒に生きられるならどこへでも行く」
「即答ね。気に入ったわ」
今までも笑顔だったリーファが、華やぐようにくすりと笑った。
性別とか年齢を越え、誰もを惹きつけて離さない、天使のような笑顔だった。
まあ、この時のオレは必至すぎて、そんなこと考える余裕はなかったんだけどな。
「本来、招待者以外の異世界への移動は、相当な対価が必要なの。
まして死者を転生となると、通常では到底受け入れられないわ」
「どうしたらいいんだ?」
「一つは、本来だったら得られたはずの他の能力や物品に制限を付けること」
「了解、構わない」
「あとは、あなたの力の一部を、私に貸してもらうわ」
「貸すほどあると思えないけど、わかった」
オレの返事に、嬉しそうに頷くリーファ。
由梨を生き返らせられるならなんでもいいし、よく分からない能力だか力だかは最初から無かったと思えば気にもならない。
と言うか、思ったより遥かに安くて拍子抜けなくらいだ。
「じゃあ、改めて。
異世界へ、あなたを招待しに来たの。
力を貸してくれないかしら?」
「喜んで貸そう」
「わかったわ。
ならば私は、あなたの妹さんを、異世界のあなたの近くへ転生させてあげる」
大精霊の柔らかい手と、握手をかわす。
こうして、オレと大精霊リーファとの、異世界への契約がなされたのだった。
由梨を見送った、次の日の夜。
思い出した異世界への招待。
全ては、妹への愛情と後悔から始まっていた
次回『異世界の解説は段階を追う必要があります』
―――中学生くらいは、比較的ロリでいいですよね?




