帰ってきた衆道
エシーナ。
赤髪ロングのエルフ子ちゃん。えっちゃんって呼ばれてたが、通称はエシィらしい。
オレにあーんしてくれた子で、食べ物を食べさせてくれる担当。
オレのことを勇者様って呼んでくれる。左隣で、寄り添うほど近くに座ってくれてるのがとてもいい!。
ウェナとフォーテ。
青髪を一束ねにしてるのが姉のウェナさん。他の子より口調が砕けてて、オレをツバサさんって呼んでくれてる。
飲物担当。なんていうか、4人の中で一番まなざしが魅力的。一番好感度が高い、かも? オレの右隣。
妹のフォーテちゃんは、同じ色の髪をショートにしてる。
特に担当はないけど、4人の中では一番胸が大きいのが良いよ。
まぁ、僅差だけどね。子供のいるマーリィさんよりはだいぶ小さいし。
ネーディア。
茶色の髪を、顔の両脇で束ねてる。背が一番低くて人形みたいって感じ。
担当は……ロリ? そこまで低いわけじゃないし、ちょっと失礼か。でもちいさ可愛い。
他の3人と比べると一歩引いた感じかな。一人だけベンチじゃなく椅子で、ちょっと遠いし。
この4人に、マーリィさんを加えたのがこの村の若くて未婚の子達らしい。
少ないなぁ……と思いつつも、寿命の長いエルフとしてはこんなもんなのかも?
そのマーリィさんは、今日はマユリちゃんをすでに寝かしつけ、ちょっと離れた所で他のエルフと話してる。
時折こちらを見てるっぽい? なんとなく、冷気とかそんな風な気がしなくもないような困っちゃうねモテ男。
―――ん?
今なんか、変なこと言ったような……
まあいいか、細かいことは気にしない。考えない。みんな可愛いから。
まさにこの世の春!
こんな幸せが、ずっと続いたらいいなぁ……
――― ――― ――― ――― ―――
「そんなに巨大な魔物を、一撃で倒すなんて!」
「あたしもあの白い光を見ましたよ。怖いけどとても綺麗だった」
「うん、すごく驚いちゃいました」
4人のエルフ子ちゃんに囲まれ、時々食べさせてもらったり飲物をもらいつつ。
乞われるまま、オレが一撃で主を倒した場面を話す。
スフィの存在は消して伝えた。すまん師匠。
ちなみに他のエルフの皆さんは、辺り中で飲んだり食べたり話したり。
十分に声や話す内容も聞こえるくらい近くにわらわらしている。
オレ達の会話を聞いてる人も居るだろうね。
「ツバサさま、本当にお強いんですね」
「さすがは勇者様です!」
「勇者……なのかなぁ?」
「はい、それはもう当然です!」
「遠い異界から来て下さって、主を一撃で倒す程の強さ。
勇者に決まってますよ!」
「そ、そうかー、決まってるかー」
「はい!」
なんだろう、褒められ過ぎて恥ずかしいやら照れるやら。
嬉しいんだけどこそばゆい!
「……ひょっとしてツバサさん、照れてる?」
「そ、そう……かな、そうかも? どうかな?」
「かわいー!」
「勇者って戦ってばかりでもっと怖い人かと思ってたけど、ツバサ様は全然違うんですね」
「やっぱり、強くて優しくてかっこよくないと勇者じゃないですよね」
「うー、ありが、とう」
「きゃー!」
両脇のエシィとウェナさんが抱きついてくるのにされるがまま。
くそう、嬉しすぎるけど緊張してどうしたらいいんだ!
イケメンとかこういう時どうすればいいんだ、押し倒せばいいのか!?
エシィの形のいいおっぱいに埋もれて、お尻に手を伸ばせばいいのか!?
「ツバサさまは、これからどうなさるんですか?」
「村に残って、私達と一緒に暮らしませんか?」
「ツバサさんが村に居てくれたら、あたし達も安心して暮らせるよね」
「いつも蝕天のたびに不安なんです」
―――そうか。
定期的に蝕天が起きるし、そのたびに戦いがあるんだ。
子供の数や育つまでの期間を考えたら、この村程度の規模じゃ成り立たないんじゃないか……?
いや、リーファディオルの秘術があるから大丈夫なのか?
「大精霊の秘術でなんとかなるんじゃないの?」
「今回使われた大精霊様の秘術ですか?
なんでも、今回が特別だっただけで、普通は全く使われないか、使っても2,3人にしか掛けられないそうですよ」
「そうなんだ、なんでなの?」
「精霊力が弱まっているせいで、大精霊様も力を思うように使えないんだそうです」
「あたし達が子供の頃は、大精霊様が姿を見せて下さる時もあったんですけどね」
「今じゃもう、オーワン様が専用の建物の中で、声を聞くのが精一杯なんだそうです」
「いつかはこの村もって思うと、すごく怖いです……」
精霊力が弱まって、大精霊の力も弱まってるのか。
それが本当だとしたら、相当まずいんじゃないだろうか。
……あれ、どうして今回だけ、全員に術をかけたりできたんだろう?
「だからツバサ様には、この村に残って欲しいなって思うんです」
「うん、やっぱりできれば残って欲しいよね」
うわ、断りづらい雰囲気だなこれは!
あれ、でも断る理由って……どうなんだろう、あるのか?
別にこの村に残って、エルフ子ちゃん達にちやほやされて暮らしても―――
「ごめんね。それでもオレは、行かなければならないんだ」
―――構わないんじゃないかな、なんて。
考えてる途中なのに、なぜかオレはそんな答えを返していた。
え、あれ。そうなの?
っていうか、なんでそんな、思わず答えちゃってるんだろう。
「そっかー……」
「やっぱり、行ってしまわれるのですね」
「あーあ、がっかり」
目に見えて落胆するエルフ子ちゃん達。
いや、あのね、ちょっとちょっと。
「でも勇者様は勇者様だから。
きっとこの村だけじゃなくて、世界全てを救ってくれるはずですよね」
「うん……そうだよね。
弱まった精霊力を戻したり、魔物だけじゃなく魔軍や魔王を倒してくれるはずだよね」
「ツバサ様、すごい……」
あ、あれれ?
え、なに、そういう話になるの?
あと、魔軍とか何? 魔王っているの? 戦うの?
「でもやっぱり、私は村に残って欲しかったな。
私達を見殺しにするんじゃなくて」
「フォーテ、言いすぎよ」
妹のフォーテちゃんの言葉を、ウェナさんが嗜める。
見殺し……に、なるんだろうか。
「ふーんだ。知らない」
そう言うと、フォーテちゃんは振り向きもせずに立ち去ってしまった。
微妙な沈黙が流れる。き、きまずい……
「ツバサさん、フォーテがごめんなさいね」
「いや……」
オレ自身、なんで断っていたのかもよく分からないし。
今回レベルの魔物がまた出たら、例え倒せたとしても、エルフの側にも少なくない被害が出るだろう。
それが続いたら、いつかは……と思うと、怖いのも当たり前だよな。
オレに残って欲しいと彼女が考えるのは当然なんだろう。
魔物が怖い、死にたくないんだから。
魔物を倒せる戦力がいるなら、是非とも村に残したい。村のために、自分の命を守るために働かせたい。
「彼女の言うことも当たり前なんだろうな。
オレが逆の立場だったら、死にたくないし、助けて欲しいと思う」
「勇者様……」
「期待させて落胆させたんだとしたら、オレは居ない方が良かったのかもね」
なんとなく自嘲気味に、そう呟いた。
少しだけ、胸が苦しい。
「そんなことありません!」
「そうです。
ツバサさんが居なかったら、今頃すでにこの村は無くなってたかもしれないんです」
「感謝こそすれ、恨むのは筋違いですよ」
3人の言葉に、少し涙が出そうになった。
それに気づいたからか、一番背の高いウェナさんがオレのことを胸に抱きしめてくれた。
お、おおお、頬におっぱいの感触が……!
「ツバサさんは優しいんですね、とっても」
両手がそれぞれ握られる。
優しく暖かく、柔らかい女の子の手。きっと、2人がそれぞれ両手で包んでくれてるんだろう。
「勇者様、気にしないでくださいね」
「ツバサ様が居なかったら、3人とも、村の人たちも、無事じゃなかったんですから」
「ありがとう、みんな。
嬉しいよぉ」
両手に力をこめ。
む、胸に押し付けられたまま、頬ずりを……!
「ひゃん、ツバサさんのえっち!」
「あ、ウェナずるーい!」
「ツバサ様、えっちなんですね……」
「締りのない顔で楽しんでおるようだな、馬鹿弟子よ」
そんな至福のひと時を楽しむオレに向け。
輪の外側から掛けられる、呆れたような声。
一緒に過ごしたのは戦闘中だけと、非常に短いけれど。なぜかテルス以上に聞きなれた気がする、師匠ことスフィの声だ。
「久しぶりだな」
断腸の思いでウェナさんの胸から離れ、スフィに向き直る。
名残惜しかったんだが仕方ない。ひじょーに名残惜しかったんだが仕方ない!
「スフィ、無事だったんだな」
「無論だ、汝に心配されるほどヤワではない」
ウェナさんのおっぱい、柔らかくていい匂いだった……もう臨戦態勢過ぎて押し倒しちゃおうかと、ウェナさん大好きだ!
「しかし、珍しいな」
いつも通り、年齢も性別も図らせない、淡々とした声で。
いつも通り、楽しそうに言うスフィ。
「ん?」
「汝は、女人に興味のない、男色家だろう?」
「……は?」
いや、淡々としてて声に変化はないんだが、それでも楽しそうだってのがなんとなく分かるんだよな。
それが分かるようになった辺り、馴染んだってことかなぁ。
―――って、それどころじゃなく!
「……あ、あの、勇者様?」
横から、恐る恐るといった感じで掛けられるエシィの声。
気づけば、包んでいた手を離し、気持ち一歩引いている。
離れた温もりが寂しくて切ないよ!
「その方は……?」
「あ、ああ。その人は―――」
「我が名はスフィ。旅の占い師にしてツバサの師匠」
そこまでは良かった。
そこまでしか、良いところはなかった。
「ツバサに初めてを教え、ツバサと尻を約束しあった者だ」
「し、してねぇぇっ!」
とんでもないこと言い出しやがるなこのスフィさんは!
オレの絶叫を聞いたか否か、ざざざっと離れるエシィとウェナさん。
待って待って待って、このちびっこの戯言だから!
初めてって魔法の事だし、尻の約束なんてないから!
「あ、えっと……」
「ああああたし、あの、洗濯物干してきます!」
こんな夜遅くから洗濯物干すのかよ!
という突っ込みの間もなく、ウェナさんが全力で走り去り。
「ゆ、勇者様の趣味がなんでも、あの―――
ごゆっくり!」
ちげー、オレの趣味ってなんだよおい!
こちらも全力でエシィ。
2人とも涙目、もしくは泣いてた!?
そして―――
「素敵……」
なぜか、先ほどまでと違って熱い―――不穏な眼差しを向けてくるネーディア。
って、少し離れた辺りを、ぐるりとエルフの皆さんが囲んで見ていた!
ひそひそ話をするもの、目を伏せるもの、むしろ目を輝かせる男女。
目を輝かせるなよお前ら(特に男)、軽蔑されるより超こえーよ!
「ちょっと待てお前ら、スフィも何言ってんだ!」
「照れるな弟子よ。
我の快楽に溺れ、五度も達しておいて『何もありませんでした』などと言われては、流石の我も傷つくぞ。
師弟の垣根を越え、あんなに激しく恋人として愛したのだからな」
「ちげえぇぇぇぇぇっ!」
いや実はなんとなく一応ところどころ違くないけど!
敵を倒すために必要な儀式だっつっただろ!
「……ツバサくん」
いつの間にどこから湧いたのか、オーワン。
ぽんと、肩に手を置いて。
「だからあの時、テルスが死んだと思ってあんなに泣いたのか……
君の望むハーレムメンバーは、男性でなければならなかったのだな」
「お前が死ねぇぇぇっ!」
超絶寝ぼけた事をほざいたオーワンの頬に、オレの鉄拳が突き刺さり。
混迷を極めつつ、夜はなお更けゆくのであった―――
宴も終わり、ぐったり疲れて翌日。
主にスフィのせいで、エルフの皆様から絶賛衆道疑惑の晴れないツバサ。
マユリにとって教育上よろしくない存在になったツバサに、マーリィは果たして。
次回『幼子との触れ合いなら興奮しません』
―――ついに、ツバサの魔手が幼いマユリに向かう
□ □ □ □
「こんばんは皆の衆。我はスフィだ。
突然だが、この場で募集をさせてもらおう。
当初の見通しから色々ずれ、絵描いた道筋から色々逸れたが。
我が大活躍中(うむ、大活躍だ)の本編も、ようやく第一章の終わりが近づいてきた。
第一章終了後の幕間企画として、皆の質問に答えて欲しいと我に対して依頼があってな。
我自ら、質問を募集させてもらうこととなった。
人物のこと、世界のこと、我のこと。なんでも構わない。
現時点で明かせる内容のみとはなるが、我の知る範囲、我の調べた範囲で答えてやろう。
応募してくれた全員の質問を、必ず一つは掲載するつもりでいることを約束しよう。
可能な限り『全員の全質問を掲載』としたいとも考えている。
我の許容量を越える数の応募なぞ、いただけるわけがないからな。くくく。
ただし、法的・規約的事由により掲載できない場合は勘弁して欲しい。
答を明かせない質問に対しては『明かせない』と答えるゆえ、内容問わず気軽に応募してくれると嬉しい。
宛先はこちら……と言っても、メールそのものというのは無粋であるな。
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伝わりさえすればなんでもOK。電話だって構わないぞ?
〆切は第一章終了話の掲載まで。
〆切を過ぎても、作者が原稿を執筆するまでなら我の権力でねじ込むが。できるだけ守ってくれるとありがたい。
『スフィ師匠に質問募集』コーナーまで、皆の応募を待っておる。
……もし、そんな幕間がなく第二章が始まったなら。
一通も応募がなかったものとして、不人気な作者のためにそっと涙してやってくれ……頼む」
スフィ師匠へのご質問他、評価・お便り等、いつでも大歓迎で募集してます☆
第一章も残りわずかだけど、メインディッシュはまだこれから。
最後まで毎日投稿を続けられるように、全力で頑張ります!




