メモリー:5~微笑みは優しい合図~
(こむぎのときと・・・同じ目・・・・・いま・・・悲しいんだ・・・お母さん・・・・・)
ビュオォォォォォォォォォォォォ――――!!
陽南乃は窓の外を見て思った。
それにしても、すごいスピード・・・
ここは高速道路だからいいんだけど・・・・・
(事故・・・しないかなぁ・・・)
こんなスピードで走っても事故なんかしたら元も子もないよ~!!
陽南乃は内心、焦った。
(でも・・・・・。)
陽南乃は助手席にいる子ぎつねを見つめた。
(この子のため・・・だよね!)
走り続けること約2時間―――・・・
バタンッ!ガンッ!!
乱暴な音が響いた・・・
間違いなくお母さん、焦ってるな~・・・
「陽南乃!!降りて!!」
「は、はいぃっ!!」
あ~っ・・・こわっ・・・
(お母さん・・・怖いよ・・・)
言い出しそうになった陽南乃は自分の口を押え、母の後に続いた。
ツカツカとだんだん早歩きになっていく母に
陽南乃は追いつけなくなった。
思いっきり走った。
だが、母のスピードには追いつけずに諦めた。
そんな陽南乃のことを忘れた母は病院の中へ急いだ。
(あ・・・お母さんが見えない・・・・・)
全く早すぎるよ~・・・お母さん・・・・・。
陽南乃はようやく母のいるところへたどり着いた。
「ま・・・まってよ・・・おかあさ・・・ん・・・」
母は息を切らした陽南乃を見るなり はっ と我に返った。
「ご・・・ごめんね!陽南乃!!」
「いや・・・お母さんは・・・一生懸命だから・・・しょうが・・・ないよ・・・」
「お母さん・・・き・・・キツネちゃんは・・・?」
わたしが聞くと、母は・・・
優しく微笑んだ・・・。