表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

魔王と魔女が仲良くなるまで

作者: みもこちと
掲載日:2011/05/01

オレの名前は白木優斗しらき ゆうと今日で16歳になったばかりだ。


突然だがオレは、恋愛に関してだけは向いてないと断言できる。

女嫌いなわけではない。

むしろ男女交際には多大な興味があるし、実際に行ってもきた。

ただ、やけに相性が合わないのだ。


初恋は四歳の時。

相手は父親の年の離れた妹、つまり高校生の叔母だった。

この時点でどうしようもない。

まだ純粋なオレは叔母とは結婚できないなど思いもしないで、毎日のように叔母に求婚していた。


「からこおねーちゃん、だいすき! 大きくなったらぼくとけっこんしてね!」

「そうだねー優斗がお姉ちゃんより年上になったらねー」


今思えばひどいなこの返事!

了承してるようで断ってんじゃねえか!


それでもあの頃のオレは結婚してもらえると思い込んでいた。

うかれて両親に報告して、見事に打ち砕かれた。


「……あのね? ゆうちゃん。ゆうちゃんと空子ちゃんはね、叔母と甥だから、結婚できないのよ」

「空子の言葉鵜呑みにしたのか。冗談に決まってるだろ。子どもって馬鹿だなー。ばーか、ばーか」


親父、うぜえええ!!

三十路近い男の台詞とは思えねえわ!


直後に母親にしばかれてた父親を見ながら、オレは結婚できないというショックに長いこと沈んでいた。


そうしているうちに、なんと叔母は交通事故で行方不明になってしまった。

車についた血も、道路に残った血痕もすべて叔母と合致したのに、どうしてか体だけが見つからない。

捜査はすぐにうち切られ、この事故はいまだ謎のままだ。


こうしてオレの初恋は、消化不良のまま終わりを告げた。


その後の恋愛は、告白されて付き合って、でも相手から別れを切り出されて、の繰り返しになる。


やっと好きになれそうだと思った同じクラスの女子は、後輩に紹介したらそっちと上手くいってしまった。


女同士で。


予想できるかー!!

しかもその後輩、オレの元カノだぞ!!

別れたときの、


「先輩なら大丈夫かと思ったけど、やっぱり駄目だったんです」


ってそういう意味か!!!


ついてないながらも、恋愛以外は順風満帆に過ごしてきた。

優しい両親に仲の良い友達。


それがだ、眩しい光と共にあっさり奪われてしまった。

オレの誕生日、くしくも消えた叔母と同い年になった日に。


「というわけだ、オレに何か言うことはないか、この痴漢女!」

「ええっと、誕生日に呼び出しやがったうえにキスまでしてくるとは何事だ! の一言で済む言葉を自分のちょっとトラウマな恋愛遍歴まじえて語るんですから、魔王さますごいです」

「感想言えって言ったわけじゃねえよ! さっさと説明しろ。キスの理由も、魔王ってのも!」


そう、オレは異世界に召還されたのだ。

どうやらこの少女に、たぶん理解できそうもない理由で。


「キスの理由は考えたらわかると思いますよ?」

「お前が痴女だからか」

「確かにキス魔ですけど」

「キス魔なのかよ!」


イラつきながら先ほど起こった出来事を思い出してみる。

オレが目を開けたとき、目の前には藍色の目をした美少女がいた。

黒いポンチョのようなものを着て、雨でもないのに傘をさし、ブーツではなく長靴のような物を履いていた。

理解できない言葉をしゃべってきたので、「何言ってるかわからん」と返した。


その少女は、少し黙ったあと、にやーっと嫌な笑顔を見せて、キスしてきた。

唇を合わせたのとは別の変な圧力を感じて、なんか気持ち悪かった。

相手は呆然とするオレから唇を離して、傘をくるりと回して言った。


「はじめまして魔王さま! わたくしはミネ・シグレ・アメノコウジ。またの名を闇の魔女。魔王さまの忠実な部下です」


はた、と気づく。


「言葉か」

「はい。言語が違うようでしたので無理やり刻んでみました。ちなみに魔王については説明しようとしたら、魔王さまが暴れ出しましたので言うタイミング逃してしまったのですよ?」

「いきなり異世界に連れてこられたら怒りくらいするわ!!」

「短気ですね」


ミネはこてんと首をかしげた。

自分がかわいいと分かってやってるのだろうから腹が立つ。


「ご察しの通り魔王さまを召還したのはわたくしです。まさか異世界からくるとは思ってなかったんですけど。理由は……もう言わせないで下さいよ!」

「意味わからん恥じらいを見せるな」


両手を軽く顎にあててぶりっこポーズ。

そんなもんで誤魔化されるか!


しばらく理由を言う言わないでもめたのだがミネは口を割らず諦めて魔王についての説明を聞く。


「魔王とは、魔を統べるものです。そして勇者と対峙します」

「予想はしてたがやっぱりいるのか勇者……! オレ、戦いとか嫌なんだけど」

「戦うかは勇者次第ですね」

「はあ……で? 魔ってのは? やっぱり魔王の手下になんの?」

「うーん。手下にはちょっと……。魔の眷属には魔獣と魔族がいまして、まったく別の生き物なんです。魔獣は最近、ある人物に統率されてるので上級の奴らはあまり言うこと聞かないと思います。魔族なんかはもっと自我強いのでなおさら魔王さまには従わないと思いますよ」

「だったら魔王誰も統べてねーだろ! 味方ゼロか!」

「わたくしは魔王さまの味方ですよ」


ふふふふふと楽しげに笑うミネ。

オレの額には青筋が浮かぶ。


「まったく信用ならねえ。これで勇者と戦うはめになったらオレにどうしろと……!」

「あ、大丈夫ですよ。あなたは闇の魔王なので、この世界を滅ぼす権利があります。振りかざせば多少無茶ききますよ」

「何その物騒な権利! いるか!」

「便利ですのに」


ミネは心底不思議そうな顔をして、オレはどん引きした。


この時、オレは知らなかった。

闇の魔女と呼ばれる彼女にもそのけったいな権利が与えられていて、その力から恐れられていたことを。


そして、それ以上にひどい悪戯好きで名をはせていたことも。


結局、帰る方法を探すという名目でオレは世界をまわることになる。

送還の方法は知らないとのたまったふざけた魔女と共に。

いずれこいつと親友のような仲になることなど思いもよらなかった。


なんだかんだ魔王として馴染んでいくオレは、異世界ですら見事に恋愛運のなさっぷりを披露していくのだが、それはまた別の話。






「ていうかお前、人の唇無理やり奪ったんだから責任とれ。オレと付き合え」

「お断りします。わたくしカエルにしか興味ないので。魔王さま、顔は好みなんですけど……」

「こんなのばっかりか!」


本当に向いてない。





読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ