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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革漁村編〜』  作者: くろめがね


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第四十八話「正義は、期限を切る」

48話です。

紙は、

三枚だった。


同じ朝。

同じ浜。

同じ机。


だが、

置き方が違う。


左に一枚。

正面に一枚。

右に一枚。


「……並べ方、

 わざとだな」


ランが言う。


「わざとだ」

マリが即答する。

「選ばせる配置だ」


先生は、

板を立てない。

紙を見る。


左――王都。

正面――宗教。

右――帳面屋。


三つとも、

同じ言葉で始まっている。


期限


王都の男が言う。


「七日以内に」

「管理形態を決めろ」


宗教の女が重ねる。


「七日以内に」

「祈りを受け入れるかを」


帳面屋が、

楽しそうに言う。


「七日以内に」

「中立を維持する条件を

 明文化しろ」


「……口裏合わせてきたな」


ランが吐き捨てる。


「正義って」

マリが低く言う。

「期限切ると、

 同じ顔になるな」


先生は、

静かに紙を並べ替える。


三枚を、

重ねる。


「……おい」


「何してんだ」


先生は言う。


「期限は」

「一つだ」


「七日?」


「違う」


先生は、

浜を指す。


「次の満ち潮まで」


一瞬、

全員が黙る。


「……二日だぞ?」


「二日しかねぇ!」


王都の男が、

眉をひそめる。


「ふざけるな」


先生は、

淡々。


「海は、

 待たない」


宗教の女が、

困ったように言う。


「人の都合も、

 待ちません」


「人は」

先生は答える。

「都合を理由に、

 急ぐ」


帳面屋が、

興味深そうに聞く。


「で?」

「二日で、

 何を決める」


先生は、

浜の人間を見る。


誰も、

目を逸らさない。


「どれにも、

 入らない」


沈黙。


「……は?」


「七日あるのに?」


「二日で?」


先生は、

はっきり言った。


「期限を切られた時点で」

「選択肢は罠だ」


王都の男が、

低く言う。


「拒否は、

 制裁だ」


「制裁は」

先生は返す。

「時間が経ってから来る」


「今、来るのは――」


一拍。


「焦りだ」


帳面屋が、

くすりと笑う。


「……嫌いじゃない」


宗教の女は、

黙っている。


それが、

一番危ない。


先生は、

初めて全員に向けて言った。


「二日間」

「何もしない」


「……は?」


「何も?」


「何もだ」


「数えないのか?」

ランが聞く。


「数える」


即答。


「だが」

「外に出さない」


浜が、

ざわつく。


「事故があっても?」


「噂が来ても?」


「来させない」


「どうやって?」


先生は、

浜の入口を見る。


「閉じる」


「……物理的に?」


「心理的に」


夜。


浜に、

灯りが増えた。


外向きではない。

内向きだ。


見張りが、

増える。


干物は、

動かさない。


舟も、

出さない。


「……息詰まるな」


ランが言う。


「これが」

マリが答える。

「期限の正体だ」


先生は、

一人で板を書く。


期限

考える時間を

奪う技術


翌朝。


誰も、

来ない。


だが、

来ないことが、

圧になる。


「……来ないな」


「来ないな」


「来ないのが、

 怖いな」


先生は、

海を見る。


「正義は」

「待てない」


昼。


宗教の鈴が、

遠くで鳴る。


王都の旗が、

沖に見える。


帳面屋の舟が、

影になる。


誰も、

踏み込んでこない。


踏み込めない。


「……効いてるな」


ランが呟く。


「期限を」

先生は言った。

「短くすると、

 相手が動けなくなる」


「逆だと思ってた」


「だから」

「使われる」


夜。


二日目。


浜は、

静かすぎる。


先生が、

板に最後の一行を書く。


期限を切る者

待てない者


満ち潮が、

近づく。


次に来るのは、

選択肢ではない。


“最後通告”だ。


(つづく)


チョークシリーズは、他の先生の物語もありますので、よろしければご覧ください。

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