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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革漁村編〜』  作者: くろめがね


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39/56

第三十九話「制度を拒むと、孤立する」

39話です。

変化は、

何も起きないことから始まった。


朝の浜。


舟が、来ない。


「……あれ?」

ランが沖を見る。


「今日、静かすぎない?」


静かだ。

波の音だけがある。


昨日までいた、

“様子見”の舟。

“少量だけ買う”舟。

全部、いない。


「売れない日?」

マリが言う。


「違う」

先生は首を振る。

「来ない日だ」


干物はある。

数も合っている。

品質も変わらない。


でも――

相手がいない。


「……噂?」

ランが聞く。


先生は、板を立てた。


制度を拒否

接触を減らす


「直接何か言ってくるわけじゃねぇのかよ!」

「それが一番嫌!」


昼。


よその村から、

一人だけ来た。


だが――

干物を見て、

何も言わず、帰る。


「買わないのか?」

マリが聞く。


男は、目を逸らした。


「……今は」


「今は?」


「関わらない方が、

 いいって」


「誰に言われた」


男は、答えなかった。


浜に、

嫌な空気が残る。


夕方。


逃げてきた村の男が、

荷をまとめ始める。


「……戻るのか?」


マリが聞く。


男は、苦笑した。


「ここ、好きだ」

「でも……」


「でも?」


「俺がいると」

「ここが、

 “面倒な村”になる」


沈黙。


「……それ、

 俺たちのせいか?」


男は、首を振った。


「王都のせいでも、

 宗教のせいでもない」


「じゃあ何だ」


「制度を拒んだ村だからだ」


男は、去った。


数が、減る。


先生は、

何も言わない。


夜。


見張りは、

いつも通り。


だが、

誰も近づかない。


遠くで、

別の浜の灯りが見える。


賑やかだ。

歌声が聞こえる。


「……向こうは、

 制度に入った村だな」


ランが言う。


「楽しそうだな」

「祈りもあるし」

「支援も来るし」


「安心もある」


先生が、静かに言った。


「その代わり」

「数えなくてよくなる」


沈黙。


翌朝。


干物は、

減っていない。


だが――

誰にも見られていない。


ランが、

ぽつりと呟く。


「……なあ」


「なに」


「俺たち、

 間違った?」


先生は、

すぐには答えなかった。


浜を一周し、

人を見て、

干物を見て、

海を見る。


「間違ったかどうかは」

「後でしか分からない」


「じゃあ今は?」


先生は、

板に最後の一行を書いた。


孤立

失敗


「……強がりか?」


「違う」


先生は言った。


「孤立は、

 選んだ結果だ」


波が、

静かに打ち寄せる。


この村は今、

支援も、

 噂も、

 人の流れも失った。


残っているのは――

数えられる現実と、

自分たちの選択だけ。


だが。


孤立した場所は、

監視もしにくい。


それに気づくのは、

もう少し先だ。


(つづく)


誤字脱字はお許しください。

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