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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革漁村編〜』  作者: くろめがね


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第三十八話「制度にされると、逃げ場が減る」

38話です。

朝の浜に、

新しい紙が来た。


昨日の紙より、

薄い。

文字も少ない。


「……減ってる」

ランが言う。


「普通、増えない?」

「法律って、だいたい重くなるだろ」


紙の男が、

今日は一人で来ていた。

服も、少しだけ地味だ。


「おはようございます」

「制度案を、お持ちしました」


「案って言葉、信用できねぇ」

マリが即答する。


男は苦笑する。


「理解しました」

「皆さんのやり方は、

 とても“先進的”です」


一拍。


「……出た」

「褒めてから殴るやつだ」


先生は、黙って紙を見る。


男は続ける。


「代表を置かない」

「役割別」

「交代制」


「素晴らしい」

「ですので――」


紙を、机に置く。


「制度化します」


浜がざわつく。


「制度?」

「俺たちのやり方を?」


「はい」

男は頷く。

「“模範事例”として」


「最悪の褒め方だ!」

「広める気だぞ!」


先生が、初めて眉をひそめた。


「制度化とは?」


男は、紙を指す。


「王都認可の

 “共同管理漁業モデル”」


「名前長ぇ!」

「覚える気ない!」


男は気にしない。


「制度になると」

「守られます」


「またそれか!」


「ですが」

男は、言葉を選ぶ。

「守られる代わりに――」


沈黙。


「外れられません」


空気が、重くなる。


先生が聞いた。


「外れると?」


「違反です」


「罰は?」


男は、

視線を逸らさずに言った。


「支援停止」

「取引制限」

「人の移動制限」


「……囲い込みじゃねぇか」


男は、静かに頷いた。


「制度とは」

「そういうものです」


ランが、低く言う。


「……逃げ道、塞ぎに来たな」


先生は、板を立てた。


制度

理解したふりをした

固定


「嫌な定義だな!」

「でも合ってる!」


先生は続ける。


「制度は」

「守るが」

「動けなくする」


男は、穏やかに返す。


「動かないことが、

 安定です」


「安定って言葉、

 怖くなってきた」


先生は、紙を閉じた。


「この制度は」

「誰のためだ」


男は即答した。


「王都のためです」


一瞬、

浜が静まり返る。


「正直だな……」

「そこは評価する」


男は苦笑する。


「皆さんの村は」

「もう、例外です」


「例外?」


「普通の管理では、

 収まらない」


先生は、海を見る。


「例外は」

「囲われる」


男は頷く。


「ええ」

「囲わなければ、

 増えすぎる」


「……増える?」


男は、

先生を見る。


「同じやり方をする村が」


沈黙。


ランが、

ぽつりと呟く。


「……あ」


「俺たち」

「広げちゃった?」


先生は、

静かに答えた。


「数え方を、な」


男は、紙を差し出す。


「三日以内に」

「受け入れるか」

「修正案を出してください」


「拒否は?」


「可能です」


「条件は?」


男は、はっきり言った。


「非公式な村として扱われます」


「……それ、

 今より危なくね?」


男は答えない。


舟が去る。


浜に、

長い沈黙。


ランが、

頭を抱える。


「なあ先生」

「制度、飲む?」


先生は、

首を振った。


「その前に」

「数えることがある」


「何を?」


先生は、浜を見渡した。


「この制度で、

 減るもの」


沈黙。


マリが、

低く言う。


「……自由」


先生は頷く。


「制度にされると」

「逃げ場が減る」


波が、

強く打ちつける。


この村は今、

守られる檻の前に立っている。


次に選ぶのは、

中か、

外か、

それとも――

壊し方か。


(つづく)


誤字脱字はお許しください。

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