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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革漁村編〜』  作者: くろめがね


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22/56

第二十二話「狙われると、仲間が増える」

22話です。

朝の浜に、知らない顔があった。


一人じゃない。

二人でもない。

三人……四人……。


「……増えてね?」

ランが言う。


「増えてるな」

「しかも全員、距離遠い」

「夜の距離感じゃない」


先生は板を立てない。

代わりに、浜を一周見た。


「何しに来た」


誰に向けた言葉でもない。

だが、全員が反応した。


最初に口を開いたのは、

昨日まで“噂を聞いて来てた側”の男。


「……逃げてきた」


一瞬、間が空く。


「は?」

「逃げ?」

「干物じゃなくて?」


「干物も欲しいけど」

「それより……安全」


マリが鼻で笑う。

「最近、それ流行ってる?」


男は苦い顔をする。

「昨日、あんたらのあとに“あいつら”が来た」


全員が、同じ顔を思い出す。

全部よこせと言った連中だ。


「条件を飲まなかった村が、夜に荒らされた」

男が続ける。


空気が、静まる。


「人は?」

先生が聞く。


「……減った」


誰も笑わない。


ランが低く言う。

「それで、ここに?」


男は頷く。

「ここは……奪えないって噂だから」


「それ、褒めてる?」

「命がけの褒め方だな」


先生は一歩前に出る。


「ここは、守る場所じゃない」


「え?」


「減らさない場所だ」


男たちは顔を見合わせる。


「……違い、ある?」


「大ありだ」


先生は淡々。

「守ると、戦う。減らさないと、数える」


「数えたら、何が変わる?」


先生は浜を指した。


「逃げてきた人数を言え」


「……七」


「元の村は?」


「……十五」


「減った」


男は黙る。


先生は続ける。

「ここに来るなら、条件がある」


「干物?」

「夜?」

「見張り?」


先生は首を振る。


「嘘を持ち込まない」


一瞬、沈黙。


「……それだけ?」


「それが一番重い」


マリが小声で言う。

「夜の話より重いな」


男たちは頷いた。


「分かった」


そう言った直後――


「……ねえ」


後ろから声。


女だ。

しかも、見たことがある。


「昨日、線の外から見てた人だ」

ランが言う。


女は肩をすくめる。

「追い出されちゃって」


「そりゃそうだろ」


「ここ、泊まれる?」


「夜は――」

「立入禁止」


「知ってる」


女は笑う。

「だから昼に来た」


「学習してる!」

「進化してる!」


先生は女を見る。


「何人?」


「一人」


「減らない?」


「減らない」


即答。


先生は頷いた。


「いい」


「軽い!」

「今の条件判定、軽い!」


その日の浜は、妙に賑やかだった。


知らない人。

知らない声。

知らない噂。


でも――

数えられている。


干物は減らない。

人も減らない。

夜は相変わらず静かだが、

昼はうるさい。


ランがぼそっと言う。

「……なあ」


「なに」


「仲間ってさ」


「うん」


「増えると、エロ減らね?」


「知らん」

マリが即答する。

「質が変わる」


「やめろ!」


先生は板を立て、

久しぶりに柔らかい字で書いた。


仲間

守らない

減らさない


「それ、どういう意味だよ」

ランが聞く。


先生は言った。


「守るために集まると、崩れる」

「減らさないために集まると、続く」


「深いようで深くない!」

「でも分かる!」


外からの目は、まだある。

奪う側も、消えていない。


それでも――

この村は、もう一段変わった。


狙われた結果、

“数えられる人間”が増えた。


それは、

武器より厄介で、

夜より健全な増え方だった。


(つづく)


誤字脱字はお許しください。

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