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7/10

思ったよりもいい人……?

前回は図書館行ったやつでしたね

今話よろしくお願いします!

 あれから1週間とちょっと。


「ちょっと遅くなっちゃったな」

 今日は少しベッドメイキングに手間取ってしまった。


 僕は今日も今日とてギルドの扉を開ける。


 いつもの喧騒、昼間からする酒の匂い。

 もうすっかり聞き慣れたし嗅ぎ慣れた。


 そんな中、1人で掲示板まで歩く。

 そろそろ冒険者仲間の友達とか欲しいけど───多分僕じゃ無理だろう、人付き合い苦手だから。


 目の前にある数々の紙をひとつひとつ目を通す。


 ゴブリン、オーク、ゴーレム……ほとんどE~Bランクのもの、最低でもF。


(薬草探しとかないかなあ~……)


 そんなことを思っていると、僕の左肩に手が置かれる。


「よっ坊ちゃん」


 振り返ると、あの登録の時に話しかけてくれた人が左手を置いて中腰で僕を見ていた。


「あっどうも、えっと……」

「ベルゼリア、あんたはベルゼって呼んでいいよっ」

「あ、ありがとうございます」


 と言われても、そこまで話したことない人をあだ名で呼ぶのは流石にハードルが、人ひとり通れるくらい高い。

 しかし、もしかしたら冒険者友達を増やせるチャンスかもしれない。

 勇気を出して、言葉にしないと───


「べ、ベルゼさん」

(言えたああ!!)

「ん?」


 しまった。

 呼んだはいいものの、その先を何も考えていなかった。


「え、えっと……」

「そういえば、他の3人はどうしたんだい?」


 話が逸れた、いやきっと逸らしてくれた。

 それがわからないほど、僕は不器用じゃない……はず。


 そんな優しさが、冬場のシチューのように体に沁みる。


「あ、えっと後から来る……らしいです?」

「なんであんたが疑問形なんだよ。それより、この前の話覚えてるだろぅ?」

「い、いやあ……」


 そう言いながら目を逸らす。


「ごまかしてんじゃないよお。ほら、あの帳簿係の話だよ」

「え、えっとその…まだ決められなくて……」

「ったく、優柔不断はモテないよ」

 笑いながら背中をバシバシと叩く。

 なんだか、少しうれしい。


「というか、ここでずっとなにしてたんだい?」

「その、依頼探してて」

「ほーいいじゃないか。で、ランクは?」

「Gです」

 一番最低のランクだから、言うのが恥ずかしい。

 しかも目の前のベルゼさんはこの前昇級したBランクだ。

 恥ずかしさも倍増といったところ。


「なら……あーないね。どういうのしたいんだい?」

「えっと今は薬草採取とかですかね。あとはスライムも」

「薬草採取か……薬草採取はたしか、朝方と夕方の依頼が多いね」

「へー!そうなんです───」


 言葉を遮るように勢いよく扉が開く。


「ね」

「失礼するっ」


 鎧の音が喧騒の大半を塗り替える。


「じゃああんたこれからどうするんだい?」

「えっどうしよかな……」


「ふ、ふふ副団長様!?副団長様がどうされたのですか?!」

「実は、最近近くの森にA級の魔物が発見された!その目撃地域は日に日に拡大し、近々この街にもやってくるだろう。この問題は早急に片付けなければならない!」


 僕に向かって足音、鎧の音が近づく。


「待つったって貼りつけの時間まで長いよ」

「それって時間決まってるんですか?」

「ああ、一番近いので行ったら2時だね」


「しかし我々は、本日行われる貴族主催の大規模パーティーの警備に相当な人員を裂く。よって我々の対処は難しい。そこで!貴様ら冒険者に依頼を出す!」


 その言葉を皮切りに、ギルド内の空気が変わった。


「(おいおい貴様だってよ)」

「(これだから軍のやつらは嫌いなんだ)」


「あんた……あー名前は」

「アラトです」

「アラト腹は?」

「?ま、まあちょっと?───」


 僕の背中がトンと押される。

 全然痛くはないけど、思わず掲示板にぶつかってしまった。


「あっすみません」

 当たった方に向いて謝る。


「こちらの方こそ、ぶつかってしまって申し訳ありません」

 よく見ると兵士だ。

 街の治安維持や緊急時の対応をやってくれている、言わば国・この街の守り手で兵士学校を卒業した凄い人達。

 そんな人が僕にお辞儀をしているのに、これ以上咎めることはできない。

 悪意も全くなさそうだし。


「いえいえ、お気になさらず」

「ありがとうございます!」


「少し混んできたね。空いてるとこいくよ」

「はい」


 そうして、ギルドの端に移動する。

 さっきの場所よりほんのり薄暗い。


「腹減ってるんだろう?」

「はいまあ……朝から忙しくて」


「条件はAランクパーティー1組、またはAランク1名とBランクパーティー1組、またはそれ以上のもの1名。期間は今日この瞬間から1週間、報酬は大銀貨4枚、もちろん魔物自体の買い取りとは別だ。条件を満たした上で、受けてもいいという者はすぐこの場に現れてくれ!」

 そんな声が響き渡る。

 大銀貨4枚もあったら、2か月贅沢できるだろう。

 やっぱり、冒険者というのは夢のある仕事なんだ。

 

「(おいおいやけに羽振りいいじゃねえか)」

「(つってもAランクどころか、Bランクつっても……あっ)」

「(そういや最近、ベルゼリアのやつがBランクになったらしいな)」

「(アドベンテから来たっつう奴だろ?)」


「よしっメシ行くよ!」

「え?」

「だから、メシ行くよって、ほらっ!」


 僕の手を無理矢理引き、扉へと向かう。

 逆らおうにも、見た目では想像もつかないものすごい力。


 僕は、ギルドを後にするのだった。


 ◇


「あのっ」

 町の活気を謳うように強い日差しの中、僕はぽつりとつぶやいた。


 足取りがおぼつかない。

 それは、僕のペースで歩いていないからだろう。


「ん?なんだい」

 ベルゼさんが僕の方に振り向く。


 僕は続けて、言葉を綴る。


「いやその…手……離してほしいっていうか」

「ああそうか」


 右手が解き放たれ、僕の身は自由へと昇進。

 繋がれてた時からわかっていたけど、手汗が……。


 そう、きっとこれは日差しが強いからだ。

 日差しが強くて、暑いだけだ。


 だから、皆手汗をかいてる。僕だけじゃない。


(……それはそれで失礼……?)

 考えるのはよそう。


 とりあえず、手を放してもらえたとはいえ歩くテンポは変わらない。


「ったくみみっちいねえ。べついいさ手くらい」

「でも……」


 いや、放してほしいって言ったのは手汗だけじゃない。


「(ねえ、あの2人、カップルかしら?)」

「(あらまあ、女性の方が高いって……かわ尊いー!)」

「(え?何それ……でもかわ尊いー!)」


 さっきから、僕の手をつないでいたベルゼさん───もとい僕とベルゼさんへの視線が痛い。

 子供のころにやってしまった小さいミスを、寝る前に思い出した時のように痛い。


「で、何食いたい?」

「それは……んー……」


 お腹が空いているからか、頭にはあらゆる料理たちが浮かぶ。


(ハンバーグ───嫌でもちょっと高い?じゃあステーキもダメだよね……かといってサラダ系だと多分足りないんだよなあ……んーどうしよ)


 そんな間に、チラッとベルゼさんを見る。


「……」


 キョロキョロして、どこにするか決めているようだ。

 ベルゼさんが決める前に、僕が決めるのが礼儀というもの。


 急がなければ。


「よし、ピザ行くよ!」

 立ち止まったかと思うと、すぐ左斜め前の店を指さす。


 かと思うと、僕の右手はまた掴まれていた。

 そのまま引きずるにも近い形で、僕の体は進む。


 しかし、それを止めた人がいた。


「おっすそこのねえさんちょっといい~?」

 そう言葉で。


 なんともまあチャラそうな2人組が、僕らの前に立ちふさがったのだ。


「あ?なんだいあんたら」

「いやあおねえさんきれいだねえって」

「そーそー」


「あっそうかい」

 どうでもよさそうな返事。


 そして、すぐに去ろうと歩き出す。


 しかしチャラ男が、僕を掴んでない方の右手を握り、止めた───いや、掴まれた瞬間、ベルゼさんが止まった。


「ちっ気色悪い手で触るんじゃないよ。殺すぞ」

 いつもよりも遥かに低い、猛獣の威嚇のような声。

 

 ベルゼさんはその掴まれた手を素早く振り払い、僕の手も放した。

 振り払われた勢いで、チャラ男は揺らぐ。


「おっとぉいいじゃんかあちょっと遊ぶだけだぜ?」

「そんなやつより俺らと飲みましょうよお」

「チッ(ほんっとに気色の悪い……)」


 小さくつぶやいて、男たちに近づく。


「そーそーじゃあい───グッ!」


 そして何の躊躇いもなく首を掴んで、もう一人の方をとぶん投げた。


 勢いは止まらず、道を転がっていき、そのまま近くの店の壁にぶつかる。


「はあ……気分が悪いねえ。ほら、とっとと入っちまうよ」

「あっはい!」


 僕は、さっきの男たちを少しだけ心配しつつもピザ屋に入るのだった。



◇一方その頃ギルド内◇



 ギルドの受付嬢に憧れてやっとの思いで研修に来た。

 そして、段々と仕事に慣れてきたそんな矢先───。


「受ける者はいないのか!」


 まさか、副団長様がお越しになられるなんて……


 こんなもの、あの人から教わってない。


「すまんが、条件を満たす者はいないのか」

「えっえっと少々お待ち下さい!」


 とりあえず、あの人が昼休憩で帰ってくるまで、できる限りのことはしてみよう。


 そう思い、資料を漁る。

 手っ取り早くAランクパーティーの人がみつかればいいんだけど……


(これはC,あーD、E……もー全くいない!どういうこ───)

「あっ!」


 不意に扉がバンと開く。

 緊張のせいか、身体が上にはねてしまった。


「(おいおいあいつ……!)」

「(そうだあいつは……)」


「「アラトー!」「アラト」


 パッと前を向く。


「(あーでもあいつらCランクだ)」


 違った。

 こんな時に来たから、てっきりこの人かと思ってしまった。


(もー紛らわしい!)


 そう思った瞬間、ゆっくりと扉が開いて───


「さてっ依頼依頼~」


「(おいおいあいつって!)」

「(ああAランクの───)」


「あの人です!!」

 僕は小声で囁かれている対象に向かって指をさす。


「えっ俺?」

「貴様、突然済まない。私は軍に所属しているものだ。突然ですまないが、ランクは?」


 そう、あの男は───


「え、Aですけど……」

「よかった。ではこの依頼、受けるつもりはないか?あと1つ、Bランクパーティーがいれば早急に進めることができるんだ」

「あいちょっと失礼しますよぉ……え!受けます受けます!」


 岩砕きのグロブ。

 新進気鋭の、Aランク冒険者だ。



「うっ」


 時刻はわからないけど、多分2時くらい。

 僕は今、ベルゼさんに背負われながら移動するという非常に情けない行為をしている。


「ったく、あれだけ食べたってのに元気がないねえ」

「あれだけ食べたからですよ……ありがとうございますごちそうさまでした……」

「はあ……」


 そう、揺れるのがちょっと気持ち悪いくらい食べ過ぎたのだ。

 といっても、ご飯代を出してもらったのに残すわけにもいかない。

 これはもう、避けては通れない道だった。

 きっとそう。


「もっと食わないと、冒険者やってけないよ」

「にしてもL1枚は多いですよお……」


 僕に出されたのはL1枚のデカピザ。

 死力を尽くしたのだが、完食には至らず、残りはベルゼさんに食べてもらった。

 この人も同じもの同じ量頼んでいたはずなのに……さすがはBランク、規格外だ。


「おっそろそろ着いたよっと」

「ありがとうございます……」


 ゆっくりと中腰になって、僕を降ろす。


 ちょっとだけ、中までおぶってくれたらなっと思ってしまった。

 僕はなんて情けないやつなんだ。


 バンと強く開く。

 中には、見たことない……はずの人と兵士たち。


(あっまだいたんだ)


 そして奥には───


「あっ」


「「「アラト!」」」


 みんながいた。

 僕に飛び掛かってくる。


「あぷっ」

 人の波に埋もれた。

 あたたかい波だ。


「ギルドにいないから心配しましたよ!?」

「そうだぜーどっか行くなら行ってくれよぉ!」

「……女とピザの匂い……はっ!」

「ごめんごめん!実はね、このベルゼさんにピザ奢ってもらってたんだ!」


 僕がそういうと、3人の顔がベルゼさんの方にパッと向く。

 すごい、ほぼ同タイミングだ。


「「「……」」」


「なんだい敵意むき出しだね」

「いえ、そんなことありませんよ」

「……」

「まっありがとうはいっとくぜ」


(なんか……ピリピリしてる!?)


 その4人の間に割って入る僕。


「とっとりあえず中入りましょ!?ねっ!?」

「まっそうだね、ここじゃやりにくいか」


 4人が中に貼る後ろについていく。

 1歩2歩、中の雑多に紛れ出す。


 しかし、そんな僕の足を止めたのは───


「あっあなたは───!」


 目を輝かせてこっちを見る男性だった。


今話、読んでくれてあありがとうございます!

ちょっと遅れてしまった……


もうちょい頑張ります!


じゃっ!


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