過保護すぎる再会は、嵐のように
前回は初回、冒険者になった回でした!
それでは、よろしくお願いします!
この3人とはずっと一緒だった。
冒険者になりたくて、村を出た時だって……
「本当に行くのですか?」
3人の中で、一番大きな背丈の子、エルフで金髪のロゼル。
神官だからか、僕をよく心配してくれる。
助かることも多いけど、少しやりすぎと思うことがある。
「うん、ありがとね心配してくれて」
「怪我しないようにするのですよ?」
「んー、ちょっとしちゃうかも」
「……」
「無茶はすんなよ、アラト」
二番目に背の高い、赤い髪のガレド。
よく遊んでいて、僕の意見を尊重してくれる。
だけどもう少し、他の2人とも仲良くしてほしいとも思う。
今でも十分仲良くはしているみたいだけど。
「わかってるよ、ありがとう」
「おう。それなら、行ってこい!」
「……」
何も言わず、僕の腕を掴んでいる三番目に背の高い子が、獣人で青い髪のルーナ。
いつも無口だけど、僕のことを考えてくれているのを言葉以外で伝えてくれる。
僕が言えたことじゃないけど、もっと社交的になった方がいいと思う。
「……放してくれない?行けないんだけど」
「また、会える?」
「うん、絶対」
「わかった……いってらっしゃい」
3人の言葉を背に、僕は町への馬車に乗った。
振り返ると、手を振る3人だけじゃなくて、村の人達が駆けつけてきてくれたようだ。
「死ぬなよアラトー!」
「待ってるからねー!」
そんな村の人たちの声で、少し泣きそうになったのは僕だけの秘密にしておこう。
◇◇◇
あれからどのくらいだろうか。
王都に来てから、はじめは喫茶店で働きながら、2階の店主さんの家に一緒に住まわせてもらった。
2か月お世話になったけど、どんどん湧いてくる罪悪感に耐え切れなくて、出ていかせてもらった。
「応援してるよ」って言葉が、今でも忘れられない。
まあ、今でも定期的に顔は出しているけど。
次にお世話になったのは、スナックバー。
ここではただ住ませてくれたんじゃなくて、他のスタッフさんと同じ給金をもらったし、人脈を広げることもできた。
その中には、冒険者の人もいたと思う。
正直、快適すぎて堕落しそうになった。
それで、結局半年ぐらいお世話になって、出ていかせてもらった。
「あなたがいなくなったら、客足減っちゃうわあ」
去り際にそんなことを言われて、なんだか嬉しくなった。
まだお酒も飲める歳でもないからしばらく会えないけど、飲める歳になったら会いに行こうと思う。
それで今は、朝と夜の丁度忙しい時間帯に働くことを条件に、ホテルで住まわせてもらっている。
大体そんなことを1年と2か月してようやくなれた冒険者。
まさか初めての依頼で再会するとは。
「よっ!久しぶりだなアラト!」
「うん、久しぶり」
座り込む僕に、手を軽く上げて挨拶するガレド。
たった2か月だけど、なんだか懐かしい。
「っ!!頬に傷が!どうされたのですか?!」
「いや、戦ってちょっと切られただけだよ」
さっきの傷口の上に優しく手をかざすロゼル。
神官特有の白い手袋越しでも、なんだか温かいような。
「《聖なる癒し》」
手から出る光が頬を包む。
落ち着くような温かさが痛みを消していくと思うと、みるみるうちに傷口が塞がった。
「ありがとう」
「怪我はしないように言ったでしょう!?」
「いやあ……はは」
「アラト」
名前を呼んで手を差し出すルーナ。
その手を掴んだら、体がすいっと持ち上がった。
「ありがとう」
「うん」
間もなく、僕の体はルーナに抱えられた。
魔法使いらしい大きなつばの帽子が、影となって僕の半身を隠す。
これは、いわゆるお姫様抱っこというやつ。
「なっ!」
「そこまでしなくても僕大丈夫だよ?」
「歩いて足くじくかもしれない。それに小さいから、全然重くない」
「ルーナ、私にアラトを渡してください!」
迎え入れるように両手を前に出す。
「ダメ。ロゼルは胸が邪魔」
「なっ!」
「私ぐらいがちょうどいい。それに、背が高くて怖くなるかもしれない」
「そんなことないよ?」
主に片方が燃えるようにヒートアップし、激しい口論が続く。
「そもそも、あなた無口なのをいいことにアラトに不必要にくっついてますよね!?」
「い、今それは関係ない。論点ずらしは、敗者のやること」
「言わせておけばぁ……ッ」
今、何の話をしているか。
完全に置いて行かれた。
助けて、と媚びるような視線をガレドに向ける。
応えるかのような溜息。
そして、2人の間に入って━━━
「いったん落ち着けロゼル」
「今はルーナと話しています。少し静かにしていてください」
「アラトが困ってるぞ」
「え?」
ロゼルは、抱えられた恥ずかしい姿の僕を見つめる。
僕は、なんだか気まずくて目をそらしてしまった。
「そんな……」
「ロゼルは、感情をもっと抑えるべき」
「ルーナ、お前も大概だぞ」
「……そうなの?」
僕の顔を見る。
近い。かなり近い。
「まあ……とりあえず、下ろしてくれない?」
◇
無事口論も終わり、僕は依頼の達成報告のために、ギルドに向かっている。
「1年ぶりというのに、お恥ずかしい姿を……」
「いや、大丈夫だよ。もう気にしないで」
「本当にすみません」
恥ずかしそうに顔を隠すロゼル。
「ところでよ、どうなんだ?」
「ん?」
興味深そうに尋ねてくる。
「冒険者だよ!どこまでいったんだ?」
「……そのね、今日登録したんだ」
堂々と出てきたくせして、今日登録だなんて。
笑われてしまっても、文句は言えないだろう。
「だからまだできてもスライムぐらいで……でも、やっぱり僕には向いてな━━━」
「そうなのか!じゃあ俺らと同じだな!」
遮るように言う。
「え?」
「私たちも、登録する」
「え…ええぇぇ!?」
(僕の……僕の立場がっ!)
◇
「すみません……」
「ああ、もう帰ったんですか。で、どうだったんですか」
「はい。よいしょっと」
袋からダバッとこぼすように取り出す。
「おおすげえじゃねえか!」
「こんなにスライムが!」
「アラト、すごい」
僕を励ますように盛り上げる3人。
「あの、後の人たちは?」
迷惑そうな顔。
「友達で…す、すみません……」
「はあ……まあとりあえず、取りすぎると他の冒険者方の分がなくなってしまうので、次から気を付けてくださいね」
説き伏せるように、淡々と語る。
「すみません……」
罪悪感がすごい。
「なんだよ!そんな言い方ねえだろ!」
カウンターを叩き、怒鳴りつける。
「ガレド落ち着きなさい、他の方に迷惑です。ただ、あなたの発言は見過ごせません。アラトはただ、邪悪な魔物を狩っただけ。そこまで言われる筋合いはないはずですが?」
諭すように言っているが、怒りの感情が隠せていない。
圧がすごい。
「……」
静かに睨みつけるルーナ。
もちろん嫌だが、この中だと一番マシだ。
「はあ……魔物と言っても、ただのスライムです。それを生業にしている人もいるんですから、立場的に注意しただけです」
「そうじゃありません!言うにしても言い方があるでしょうという話です!」
ロゼルがヒートアップしている。
今僕の胸は、自分が悪いのにという申し訳なさと恥ずかしさでいっぱいだ。
「はあ……わかりましたよすみませんでした以後気をつけます」
「くっ…まあいいでしょう」
「アラトさんはもう行っていいですよ。で、あなたたちは何しに来たんですか」
「あ、ありがとうございます」
やっと解放された。
でも、あのままでいいのだろうか。
(んーまあ…いいか)
これ以上、何かあることはないだろう。
そんな思いで、次の依頼を探す。
「坊主!お前新入りだろ?」
「え?」
モヒカンみたいな見た目をしたマッチョが、急に肩を組んできた。
「いやあこのへんは怖えとこも面白ェとこもあるからよ!俺が教えてやろうと思ってなあ…どうだ?」
「え?ええと……」
「そいつはやめときな坊ちゃん」
次はすらっとした、恰好からして魔法使いなお姉さんが近づいてきた。
「そいつは田舎から来た男狙って食ってる、この辺じゃ有名な奴だよ」
「え?」
さすが冒険者。
話がぶっ飛んでいてついていけない。
「そんなやつより、うちに来ないかい?帳簿係の枠が開いててね、むっさい奴らと腹黒い女どもで、そろそろ花が欲しかったんだよ」
「ぼ、僕なんかでいいんですか?」
「別に戦いに行くわけでもない、構わないさっ。どうだい?うちはもう少しでBランクだから、金は払えるよ?」
(どうしよ……ちょっと行きたい…!でもやりたいことじゃ……)
迷う。
Bランクともなれば、帳簿係でも今のバイトより給料は格段にいい。
故に、迷う。
「待ってください!」
現れたのはロゼル。
結構ごった返しているのに、よく見つけられたものだ。
「なんだいあんた?」
「あなた、この子に何する気ですか?」
「どういうことだい」
「あなたからは…人を傷つけて喜ぶ、嗜虐家の気を感じます!」
本当に何を言っているのだろうか。
「はあ…今回はそんなつもりじゃなかったんだがねえ……まっいいさ。お仲間同士のようだから言うが、上手くやるんだよ」
「わ、私はそんなんじゃありません!」
そうして彼女は、カッコよく去っていった。
結局何の話だったんだろうか。
「アラト、あーいう人とはあまり仲良くしてはいけませんよ」
「ん?わ、わかった…?というか、登録はもう終わったの?」
「ああそれなら、これから試験ですよ」
「え?試験あったの?」
「ええ。何ランクからスタートするか聞かれたので、一番上のものでって……もしかして、なかったんですか?」
そんな話題、振りもされなかった。
多分、僕の見た目とかから、やらなくていいなって判断されたんだろう。
実際そうだけど、何か納得できない。
そんなジレンマに置かれ、混乱してしまった僕の頭は……
一旦このことを放棄した。
「うん、なかったかな」
「はあ……アラトも少しは怒るべきですよ?」
「そ、そうかな?」
「優しいだけでは、あなたが損してしまいます。まあ、そんなあなただから私たちは好きになったんですけどねっ」
「ありが…とう?」
しばらく諭されていると、奥から別の受付嬢さんがでてきて━━━
「えっと…ガレド・ルガンさん、ルーナ・メジアさん、ロゼル・アリアさん!
いらっしゃいますかー?」
少し忙しないような感じで三人の名前を呼んだ。
「呼ばれたので行ってきますね」
「うん、いってらっしゃい」
小走りで受付に向かうのを見送った後、僕はこの騒がしいギルド内で、唯一といっていい寂しさを感じた。
とりあえず、掲示板を見てみる。
(僕にもできそうなのは……えっと……)
隅々まで見るけど、それっぽいものは見当たらない。
「んーどうしよ……」
一応もう一回見てみる。
やっぱりない。
色々考えた結果、僕はまた受付に向かう。
「すみません、あそこに貼ってない依頼とか……」
「ええ?はあ…少々お待ちください」
手元を探す受付嬢さん。
途中途中で、ため息をつく。
その度に僕の胸に浮かぶのは罪悪感。
手が止まった。
ぺらっと出した紙は、掲示板のものより少し奇麗。
「貼ってなくてあなたができるのなら、これくらいです」
そうして出された紙を読む。
『依頼者名:ホテル・ヴェルデ
依頼内容:警備他諸々
達成報酬:日当銀貨2枚
ランク条件:不問
その他条件:フォルティア王国民のみ』
「…?どうされましたか?」
受付嬢さんが、僕の顔を覗いて問いかけてきた。
「これ、僕が働いてるホテルです…」
今話、ありがとうございます!
改稿後に読んでくださっている方はわからないと思いますが、前書きと後書きを完全に書き忘れてしまってて今急いで改稿しました。
ごめんなさい!でも、これは言わせてください!
もしよかったら、ご感想・ご指摘、ブックマークや評価などくれたらめちゃくちゃ嬉しいので、よかったら!
じゃっ失礼します!




