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夢と現実、ほんとの僕

……

 目の前の光景を必死に理解しようとする頭と、受け入れたくない自分。

 二つに引き裂かれそうな感覚。


 それを目の前の足と血で汚れた蛇の口が、頭の方に手を差し伸べる。

 嫌だ、そんなのは嫌だ。


 考えたくないのに頭は勝手に回る。


「アラト氏!」「早く!」


 嗚呼、僕は最低だ。

 優しくしてくれた人が目の前であんなになったのに。

 それを背にして僕は無我夢中で足を動かして、頭では必死に感情を探している。


 息が苦しい。


「フシャアアルァァ」


「「アラト氏!」」


 そうか。

僕はきっと、哀しいのか。

 何もできない無力さも。

自分に必死なところも、何もかも。



「よし、後は任せろ!」


 一瞬。

 目の前を何か、いや誰かが横切った。

 遅れて風。


 誰だったか、頭に人は浮かばない。

 だけど、強く印象づいていて……


 振り返るとそこには───


「うしっ」


 抜き身の剣を仕舞おうとする軽装の剣士と、静かに寝そべるヘビーゴーレム。


「あっああ……」「一撃で……」


 あれは───


「ガレド!」

「探したぜアラト!」

 どこかほっとしたような笑顔。

 きっと、僕のことを探し回ってたんだろう。


 いつもはまっすぐ見れるのに、今はとても眩しくて……


「こんなところで何してたんだよ?」

「え、えとその……このパーティーの人たちにお願いして、ダンジョンに潜らせてもらってたんだ」

「そうかよかったじゃねえか!で、どうだったんだ?」

「それは……」


 言葉に詰まる。

 口から出そうとする度に、あの光景に頭を奪われていく。


「ぼ、僕のせいで……ガーネさんが……」

 喉が熱い。

 鼻も詰まって、湧き上がれるものが抑えられない。


「アラト氏……」「……」


「?それってよ───」


 顔を上げる。

 するとガレドは、ヘビーゴーレムの中を漁り始めて───


「こいつじゃねえか?」

 人。

 力なくだらけている。そして、片足がない。


「ガーネさん!」「「リーダー!」」


 冷めきった心が、次第に溶けていく。


「ああ、よかっ───」


 そして意識も徐々に……


「アラト!」「「アラト氏!」」



◇◇◇



「──ト!」「───てください!」「─ラト!」


声。

 乱雑に混ざって、何を言ってるのかわからないけど、なんだか……

 悲しそうだ。


 聞いてると、不思議な気持ちになっていく。

 どこかに行かなくちゃいけないような、誰かが待っているような。



「「「アラト!!」」」

知らない天井。

 左右には、見慣れた三人の見慣れない表情。

 なんだろう、涙を浮かべている。


「起きた!」

「よかったぁ……」

「心配したんですからね!」

 でも何か、心配事が抜け落ちたみたいなほっとしている感じも。


「医者に言ってくる」

「任せたぞ!」「お願いします!」


 そう言って、ルーナが部屋から出ていった。

 そういえば、ここはほんとにどこだろう。


 ホテル……とはだいぶ様相が違うけど、今ベッドに横たわってるわけだし。


「ねえここって?」

「病院です!」

「あ、そうなんだ」


 ということは、ガレドがここまで運んできてくれたのか。


「ありがとうガレド」

「おう!」


 病院……


「あっ!ガーネさんは!───」

「それは私が説明します」

 扉。

 遮るように開いた。


 奥には白衣の女性。

 靴音を鳴らしながら近づいてくる。


「面会の皆さんは退出をお願いします」

 少し冷たく、淡々と告げる。

 とぼとぼと部屋を出ていく2人。


 扉が閉まるのを見送って、先生は僕の方を向く。


「ガーネさんの容体を説明する前に、ガーネさんとあなたの関係性と経緯について教えてください」

 横長の眼鏡越しにまっすぐとこっちを見ている。


「え、えと……ガーネさんは冒険者パーティーのリーダーで、皆さんがダンジョンに潜るっていうのを聞いて、臨時的に参加させてもらったんです。その時に、魔物から僕をかばって……それで……」

「なるほど」

「だから、僕のせいなんです!お金は僕が払います!だから、だからガーネさんを……」


 目の前がぼやける。

 自然と肩がしゃくりあがって、呼吸がつらい。


「いえその必要はありません。とりあえずガーネさんの容体についてですが」

「……」

「生きてます。まだ意識回復とはいかないですけどね」

「っ!!……うぐっよかったぁ……」

 下を向くと、シーツが濡れている。

 目をこすってもこすっても、勝手に零れ落ちる。


「あの怪我で生きてるなんて、相当奇跡ですよ。状況から見て、何かに圧迫されていた影響で足元の失血が止められたんでしょう。よかったですね」

「はいっほんとに!うぐっ」

「……だからまあ、そんなに自分を責めないであげてくださいね。ああそれとあなたも肋骨とあばらほとんど折れてますから、しばらくはここ暮らしですよ。じゃあ私は失礼します」

「ありがとうございました」


 扉、静かに閉まる。


◇◇◇


 あれから、3人からのお説教が続いた。

 そんな3人も最後は励ましてくれたけど。


 そして次に来たのは───


「全く、あんたかなり無茶すんだね」

 深いため息。

 ベルゼさんだ。

 手には果物の入った籠を持っている。


「ごめんなさい」


 ベッドの横の台に勢いよく置くと、近くの椅子を引いてそばに座った。


「で、何があったのさ」

 離さないと言わんばかりに、力強くこちらを見る。


「……僕なんかを受け入れてくれた人が、…僕をかばって傷ついて……僕のせいで……」

 罪悪感に押しつぶされそうだ。

 それでも……それでもまだ僕の罪は、有り余っているのか。

 心にはまだ、もやがかかっている。


「それだけかい?」

「……」

「言いな。全部吐いちまいな」

 優しく諭すように言う。

 まるで、全部受け入れてくれるように。


「……そんなのがあったのに僕は、僕はそれでも自分のことに必死で……最低ですよね、僕って」

 話すたびに、あの時のことが浮かび上がる。

 その度思い知らされる。

 誰かに見せつけられるように、自分がどんな人間なのか、見ようとしてなかったところまですべて。


「で、どうしたいんだい?あんたはどうしたい?」

「……変わりたいです」


 気づけば口に出していた。


「こんな自分を捨てて、僕は変わりたい!誰に頼らなくても、誰かを助けれるぐらいに変わりたいです!」

 僕は、夢を叫んだ。

 なりたかった、憧れていた自分。


 そう、きっとそうだ。

 憧れていた自分の……はずだ。


「……そうかい。あんたはそうなりたいんだね」

 そんな僕に対して、変わることなく応えるベルゼさん。


「でもね、これだけは覚えておきな」

 そして───


「私は、変わる前のあんたを、今のあんたを気に入ってんだ。あの3人だってそうさ。、出会って過ごしてるのはあんた、今と過去のアラトなんだ。未来の思い描いたアラトじゃない。あんただってそうだろう?」

「……」

「言ってみな。ほんとは、どうなりたいんだ」


「僕は……っ!───」


 僕は、夢を叫んだ。

 声高らかに。

 ごまかしてしまわないよう、僕に聞こえるように。


ありがとうございました!

ちょっと別のやつ進めるので投稿遅くなるかも!


じゃっ!

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