読んでいた英雄譚や冒険譚のように
読んでないなら3話前から読んでくれた方がわかりやすいです!
では今回もよろしくお願いします!
小さい頃から、誰とも話せない人間だった。
小生が生まれ育ったような田舎だと、そんな人間は子供だろうと無下にする。
だから、父と母以外は誰とも話さない。
ずっとずっと孤独で、それが当たり前だった。
ある時、村に馬車が来た。
怪しげな恰好の女性。
気になって遠目で見ていたら、近づいてきて───
「君はきっと、この本が好きになる。だから、はい」
2冊の本をくれた。
“冒険譚”と“英雄譚”。
家に帰った小生は、することもなくそれを開いてみた。
今でも忘れない、この世界と出会ったような感覚。
のめり込むように、その中に入ってしまうように読み進めた。
何度も、何度も。
きっと、それを読んでいる時だけはこの醜い自分ではなくなれる。
誰とでも話せて、恋もできて町中から、世界中から称賛されるような人になれる。
そう思ったんだ。
2冊の本が擦り切れてしまったころ、村を出た。
冒険者に、本の主人公になるために。
街に出たら、何かが変わると思っていたから。
しかし、そうはならなかった。
誰とも話さずに紙を取って、モンスターを狩って本を読んで寝る。
紙を取って、モンスターを狩って本を読んで寝る。
その繰り返し。
何も変わらなかった。いや、変われたチャンスを掴まなかったんだ。
誰も寄せ付けない、自分から独りに進む。
冒険譚や英雄譚に憧れた小生の正体は、見ようと、変えようとしなかった孤独そのものだったから。
気づいたとて変わらない。
そんな日々を1年送った時に出会ったのがフレム氏とレン氏だった。
いつもの本屋で本を探していた時、不意に3人と目があった。
何か話すしかないが、言葉が出ない。
恥ずかしく思っていたら、向こうもそうだったんだろう。
10秒間、沈黙が続いた。
その時、人生で初めて気が合いそうだと思った。
それから3人で話していく中で、同じ冒険者だということがわかってすぐにパーティーを組んだ。
初めてのパーティー、初めてのチームワーク。
しばらくダンジョンをサクサクと進んでいける感覚に、胸を躍らせていた。
そんな日々が長く続いていたらすっかりいつもの日常、いつもの感覚へと戻っていく。
それはそのはず。
そこからなにも広げようとしない。
自分の正体は、何も変わっていなかったのだ。
ただただ仲間という仮面を被っただけ。
そして昨日の夜、ふと思った。
これで良いんだろうかと。
考えれば考えるほど不安になっていく。
そうして、たどり着いた結論。
(そろそろ辞めるか)
翌朝、いつもの如く冒険者ギルドに集まる。
「いやあ……困りましたなあ。人手不足といいますか」
いつもの如く、苦労を吐く。
「そうですな、何せダンジョンですし。うーむ、何か良い方法はないものか」
「とは言いますが、拙者らにた、頼れる者など居りはせぬよグフフッ」
「(おい、あいつらなんか変だよな)」
「(ああ、なんつうか……よくわかんねえっつうかな)」
噂話。
「フフッままた噂されておりますぞ」
「バッお前バッ!そんなことはい、いいんですぞグフッ」
耳に流すだけをして、心には止めない。
いや、止めちゃダメだとも思っていた。
「うむ、何か良い策はないものか……」
いつもの日常。
退屈、変わらない自分。
全てに嫌気が差していた頃───
「あの!」
アラト氏が現れた。
「な、なんですかな」
何かが、変わる予感がした。
探していた、夢にまで見ていた光がやっと差したような気がした。
「えっと、僕もその……連れていって欲しいっていうか……」
しかしそれは、弱弱しく……そして───
「僕をダンジョンに連れていって下さい!壁役でもなんでもやるので!」
大きく、光っている。
───そんな光が、今奪われようとしている。
暗闇の手によって、閉ざされようとしている。
「アラト氏!」
気が付けば、身体が動いていた。
大きく手を伸ばし、突き放す。
掴んじゃいけない、握りしめてはいけない。
まだ、消えてはいけない。
「ガーネさ───」
君はまだ、大きく光り輝ける。
多くの人を照らすことができる。
(ああ、小生はやっと……変われたのか)
……




