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はじめての緊張感は、何にも代えがたいんだろう

今回もよろしく!

前回から読んだ方がいいかも!

 今日は何もない日。

 昼時。

 ホテルの仕事と言えば休みの日だし、まだベルゼさんへの返事も考え中。

 そんな暇な日、どうやら皆もそうらしく街はとても賑わっている。


 休みの日の特別感。

 僕はスキップをする。


「ふんふんふ~ん、ぷーりぴっぷーりぴっぷーりぴっつ~」

 お母さんが歌ってた鼻歌。

 結局あれは何だったんだろう。


 着いた。扉を開く。

 酒の匂いといくつかの見慣れた顔。

 誰も僕のことは覚えてないんだろうけど。


 いつもの足で掲示板前へ。


「えっと……」

 いつもながら、どれも僕じゃ受けられないもの。


(やっぱり朝来た方がよかったかな……)


 休みだからってダラダラしてしまったのが祟ったんだ。

 今日は素直に帰ろう。


 玄関へと足を進める。


「いやあ困りましたなあ……人手不足といいますか」

 右の席に小太り、瘦せ型、普通。眼鏡の3人。

 人手不足……

 耳に残る。


「そうですな,何せダンジョンですし。うーむ、何か良い方法はないものか」

「とは言いますが、拙者らにた、頼れる者など居りはせぬよグフフッ」


 まあ……ちょっと変な人たちそうだけど、もしかしたら僕もダンジョンに……


 そう思った時には足が進んでいた。


「あの!」

 割り込む。


「!」

「な、なんですかな」

 びっくりした様子。

 どうしよう、どうしよう……

 とっさに言ったとはいえ何も考えてない。


 こうなったら───


「えっと、僕もその……連れていって欲しいっていうか……」

「「「?」」」

 ごもごもしすぎて全然伝わってない。


 もっとはっきり───


「僕をダンジョンに連れていって下さい!壁役でもなんでもやるので!」


 視界が勢いよく下がる。

 地面、石畳。


「か壁役だなんてそんな」

「そそうですぞ!ちょうど荷物持ちを探してたのですし!なあ?!」

「全然!構いませんぞ!」


「えっ?」

 これはつまり、いけるってことなのか。

 初のダンジョン。

 ずっと本で見ていた世界……


「いいんですか!?僕力なんてないし体力も……」

「だ大丈夫ですぞ!」

「うんうん!そういえば力のブレスレット余ってましたなあ、グフッ」

「そーだ捨てようにも捨てれませんでしたからなあ」


 終始引き攣った笑顔。

 僕のこと励まそうとしてくれてるんだ……


「あっありがとうございます!よろしくお願いします!」

「グフッ」「フフ……」「グフヘッ」



◇◇◇



 森の中。獣道。

 木々・草々が生い茂っていて、遠くには断崖絶壁がぼんやりと見える。

 そう、ここはクルルの森。


「はあ……はあ……」

 服が纏わりついて気持ち悪い。

 足元が悪いからだろう、いつもより足取りが重い。


「大丈夫ですかな?」

「重いなら、少し持ちますぞ」

「だ、大丈夫です……」

「無理は良くないですぞアラト氏」

「あ、ありがとうございます……」


 肩の痛みをもうすぐ忘れそう。

 もう汗も出ていない。


「この先の開けた場所で休憩しますかな」

「賛成ですぞ」「小生も少し疲れましたしな」

「ご、ごめんなさい……」



 いい感じの少し開けた休憩地のような場所。

 僕らは地面に座って休憩をしている。


「大丈夫ですかな?」

「はい、おかげさまで少し落ち着いてきました。ごめんなさい時間取らせてしまって……」


「「「いやいやいや」」」

「拙者らも休憩したかったですし」

「そうですぞ」「ほんとほんとグフフ」

「ハハハ……」

 まだ喉元は熱いが、意識もはっきりとしてきた。


「あっそういえば皆さんお名前はなんていうんですか?」

「あー自己紹介がまだでしたかな」


 瘦せた人がすっと立ち上がる。


「じゃあまずは某から。某はフレム。24歳、冒険者は6年やっておりましてランクはD、趣味は神話に関するいろんな本を読むことです!何卒よしなに」

 流れるように。この人はフレムさん……

 そうか神話が好きなのか。


「へー神話好きなんですね!僕友達に神官の人がいて、何となくだけしってるんですけど、どういう所が好きなんですか?」

「そうですか!最近で言えば……そうですな、夜になったら見える8つの月は、神々がこの世界を見つめてくださっているというのがグッときましたなあ」

「へー面白そう!」


 話もひと段落して、次に立ったのは普通の体型の人。


「では次は拙者が。拙者はレンと言います。大体フレム氏と同じなんですが、24歳で冒険者は6年やっておりましてDランク。趣味は漫画という物ですどうぞよろすっくグフフ」

 この人はレンさん。

 そうか漫画か。なんだか気が合いそう。


「マンガ読まれるんですね!実は僕も最近読み始めたんですよ!」

「ほほう何を?」

「異世界プロレタリア革命記っていうやつなんですけど」

「おーいいですな!あの、主人公のレボルが前の世界では馬鹿にされたもので腐っている世の中を、ヒロインや仲間たちと改革していきながらその中で自分たちも変わっていく人間ドラマがなんともまあいいですな、おっと喋りすぎましたかグフへッ」

「は、ハハハ……」

 だいぶ熱が違ってたみたいだ。

 途中でやめてたし、帰ったら続き読んでみよう。


 そして、残ってた小太りの人も。


「最後は小生ですな。小生はガーネ。このパーティー、“知恵の集い”のリーダーで冒険者は7年やっておりましてランクはC。趣味はあらゆる冒険譚と英雄譚を読み漁ることですぞ。どうぞよろしく願い奉りますぞ」


 この人がリーダーなんだ。

 冒険譚に英雄譚……


「リーダーなんですね!僕も冒険譚と英雄譚大好きで!」

「おーそうですか!いやはや気が合いそうですな」

「アハハハ!」


 そうだ。今一度、ちゃんと挨拶をしなければ。

 丁度自己紹介の流れだし。


「改めて、皆さんこのパーティーに入れていただいてありがとうございます!僕はアラトと言います。少しでも皆さんの負担にならないように精一杯頑張るので、よろしくお願いします!」

「こちらこそですぞ!」

「よろしくお願いします!」

「無茶はしてはなりませんぞ!」


 ほんとに、優しい人たちでよかった。


「ありがとうございます!」

 心の中で、張りつめていた糸が一本切れたような感覚がした。



◇◇



「こ、これが……」

 冒険者の代名詞───


「そうですぞこれがダンジョン」


 そうなんだ、これが……

 でも、本で見たのとはだいぶ違う。

 脚色?


「まあその中でも洞窟型と呼ばれるものですけどな」


 暗い。

 そしてただ歩いてるだけでも躓いてしまいそうな岩肌の道。


 そんなことを思っていたらフレムさんが明かりをつけてくれた。

 小さな光。だけど辺りは昼時に山頂から見た景色のようにはっきりと見える。


「へー。それってどう違うんですか?」

「フフフ、やはり気になりますか。長いですぞ?」


 ガーネさんは、指を天に突き立てて───


「主にダンジョンは遺跡型と洞窟型の2種類がありましてな、中の構造や見た目の違いからそう呼ばれるのですが明確に違うのは“そこからとれる物”です。本や劇で取り扱われるようなものは大体遺跡型で、そこには“宝箱”と呼ばれる箱が時々出現し、開けた中にはコツンと当てるだけで岩をも切り裂く剣やスライム1体も倒せないようなナイフまで、多種多様千差万別な品々が!」

 なんて流暢な語り口。

 高尚な朗読劇を聞いてるみたいだ。


「対して洞窟型は少し地味でしてな……お分かりの通り大体の洞窟型には何もないのですよ。しかし、この洞窟型はある一部では大人気なのです!というのも、この洞窟型には鉱石が出現することがありまして、その中にはこの洞窟型にしか生成されないような鉱石・魔鉱石がヒジョーに貴重なのです!まあもちろんそれは一部の話、大体は何にも採れずに帰ることになるし採れたとしても大概が外れ。そんなわずかに光った石目がけて入ることから、洞窟型改めバカのアリジゴクダンジョンなんて呼ばれたりもするんですな」


「なるほど……勉強になりました!ありがとうございます!」

「グフフ、まあ詳しくは教習で教えてくれるはずですぞ」

「はい!」


 靴の音だけが響き渡る。


「おかしいですぞ……」

 ぼそりと呟くレンさん。

 全くもって順調なはず。

 何がなんだろう。


「たしかにそうですな」

「ここまで深いのに……」

 続くガーネさんフレムさん。


「何がですか?」

「いや、モンスターがいないのです。本来ダンジョンは魔物を生み出す生息地とも呼べるような場所。わんさかいて引き下がるようなことはあってもいないなんて滅多にないのですよ。(もしかして……いやこのダンジョンで?)」


 なんだか不穏な空気。

 でもここまで来たんだ。歩みは止まらない。

 粗雑に、ごちゃごちゃと靴の音が響き渡る。


 しかし、それもピタリと止んだ。


「分かれ道、ですか」


 3つに分かれた道。

 どれも先は見えないところまで続いている。


「んーどうしますかな?リーダー」

「まあ無難に真ん中にするとしまそ。別れるわけにもいきませぬし」


 そうして、一斉に進もうと足を出す。

 靴と岩肌が触れるという、その瞬間───


「っ!!」

「な、なんだ?」


 わからない。わからないけど皆さんが混乱している。


「ど、どうしたんですか?」

「奥から、大量の足音がするのですよ!」


 剣を握りしめるガーネさん。

 少し震える手で、僕も腰元のナイフポーチからそれを取り出す。


 構えた刃先に、僕の汗がぽたりと落ちた。


これから投稿頻度上がるかもです!

でも期待はしないで!

続きは早めにします!

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