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僕はきっと、出来ないことの方が多い

前回は、ベテランの戦いを見せつけられた回でしたね!

今回もよろしくお願いします!

「アラト!ちょっと待ちな」


 魔物と報酬の受け渡しも終わり帰路につこうとしていた僕は、後姿をベルゼさんに止められた。


「はーい!ごめんみんな、先行ってて」

「わ、わかった」「気を付けてくださいね!」「しかたない」

 もう3人同時に喋るからなんて言ってるのかわからない。


 悲しそうな顔をよそ目にベルゼさんの方に足を進める。


「なんですか?」

「ほんとはちょっとわかってるんだろう?」

 いたずらめいた笑み。

 たしかに、なんとなく何を言われるかはわからなくも……。


「ま、まあなんとなく……」

「だろう?今回の討伐依頼見てどう思った?」

「いやーもう、ほんとにすごかったです!」

「だろう?あんたは、ついて行けると思った?」


 その言葉を聞いた瞬間。

 杭で止められた人形のような無力さが僕を襲った。


「そ、それは……無理、だと思います……」


 どこかで、考えないようにしてたんだろう。

 辿り着かないよう、いつも頭を真っ白にしていたんだ。

 そこにいたらいけないって気づいてしまうから。


「戦闘じゃ役に立たない。だから、他のことで支える。勉強も兼ねてでいいさ、うちに来な」

「……」


 どうしよう。

 心が揺らぐ。

 断ってはいけない、そしたら本当に僕は……


「い、一回だけ、なら……」

「よし!じゃあ明日のいつでもいい。この先で待ってるよっ!」

 そういって、小さな紙を僕の手に押し込む。

 僕はそれを握りしめて、ホテルに向かうのだった。



◇◇◇



 それから翌日。

 すっかりと晴れ渡った今日に、昨日渡された紙のところに僕は来ていた。

 道すがらには娼館らしき建物がたくさんあって、なんだか緊張してしまった。


「えっと、ここかな?」


 住所しか書かれていなかった紙。

 何かもっと書いてくれればよかったのに、家の特徴とか。


 そんな邪念を抱えた僕の目の前には、豪邸───とまではいかないまでも普通じゃありえないような大きさの家が建っている。


 2階建て……いや3階建てなのか。


「でっかあ……」


 辺りを見回す。


(……どうやって呼べばいいの?普通にノックしていいのかな)


 間違ってても、ベルゼさんだ。

 怒られないだろう。


 ドアを鳴らす。

 しばらくして出てきたのは───


「なんだ」

 僕より少し大きい男性、いや男子か。

 髪は、あまり気にしない僕が言うのもあれだけど整えられていない。

 頭頂部にぴょろっと出ているのも寝癖だろう。


 それよりも、さっきから僕を見る目が怖い。

 睨まれてる。


「あの、ベルゼさんのお誘いで来たんですけど……」

「ああベルゼリア様の。入れ」

「し失礼します」


 中に入ると……普通だ。

 てっきり貴族のようなエントランスを期待してたけど、左はごく普通のリビングとキッチン。そしてトイレらしき部屋。 

 変わってるで言えばテーブルが少し大きいくらいだ。

 右の方にはおそらく会議用のソファとテーブル。


「靴はそこで脱いで、そこに入れろ」

「はい」

 壁には時計や何かの絵などの装飾も。

 動物の剥製は……なさそう。


「なんだキョロキョロして」

「あっいえ!広いなって」

「まあクランだからな。当然だろ。俺らの執務室は2階だ」


 階段を上がっていくとそこには廊下と、左右に向かい合わせの部屋が4つ。


 僕らの部屋は───


「こっちだ」

 左みたいだ。

 あの人が扉を開けて待ってくれている。

 そんな優しい一面もあるなんて。


「お前が呼ばれた理由は聞いた。ベルゼリア様は勉強のためとおっしゃったが、俺にはそんなつもりはない」

 席について、ペンを走らせながら。

 目。左から右、下へ。素早く機械的な動き。


「お前は以前抜けた者の穴埋めだ。体験気分なのだろうが、そんな生ぬるいものをさせるつもりはない。先輩兼世話係の俺がこき使ってやる」


 そして、書類の束を突きつけて───


「覚悟してついてこい、駄犬」

「は、はい!」

 なんというか……


(これで合ってるのかな……)



◇一方その頃◇



 いつもの如く、アラトと遊ぶ───基い依頼を受けに来た私たち。

 しかし……


「アラト、どこ……」


 最初はホテルに向かった。

 しかし───


───「アラト君なら、随分前に退勤しましたけど」


───そして、次に向かった冒険者ギルドも同じようにもぬけの殻。


 正直、もう打つ手がない。

 一つあるとすれば、もう依頼を受けて外に……


「ま、まさか危険な依頼を受けて今頃……!」

 ロゼルが怖いことを。


「それはねえんじゃねえか?」

「で、でも!」


 どちらも憶測。

 しかし私には、大丈夫だという確信がある。


 なぜなら……


「くんくん……」

 私が、ネコ科だからだ。


 外へ向かう方にアラトの匂いがしない。

 ということは、まだ来ていないということ。

 つまりアラトは───


「こっち」


 匂いの方向を辿ればいる、ということだ。


「「おー!」」


「(ねえあの子、床の匂い嗅いでる)」

「(変な子―)」



───そして、私たちが着いたのは……


「こ、ここってもしかして……」

「娼館通りか」


(……え?)



◇一方その頃◇



「……はあ」


 疲れた。

 ものすごく疲れた。

 ずっと座って、報告を読んで要点をまとめて書くとか。

 支出を見て、計算して合ってるかとか……その他諸々。


 やることは多いけどタイムリミットはそんなにないから気持ちのストレスがあるわけじゃない。


 ただただ時間が延々と続いてるように感じる。

 お尻がとても痛い。


「今日はこのくらいでいい」

 そう言われて外を見る。

 すっかり夕方だ。


「あ、ありがとうございました!」


 お尻が痛い。

 やっとの開放に喜んでいたら、扉が開いた。


「……おい、ロス」

 ベルゼさんだ。


(ロス?)


 先輩が立ち上がった。


(あっこの人のね!)


 そして、ずんずんと近づいて───


「何してんだいあんたはーー!!」


 すさまじい横蹴り。

 耳元で風が鳴った。


 轟音。

 壁に激突したんだ。


 そこからも追いうち。

 這いつくばるロス先輩に上から踏んづけるように何度も。


「こいつはっ新人だろ!お前のッ仕事押し付けてんじゃっないよ!」

「あ、あぐっありがとうございます!」

「ご褒美じゃないんだよっ!」


 めっちゃ喜んでる。

 結構鈍い音なってるくらいなのに、ご満悦の顔。

 最初僕のこと睨んでたのが嘘みたいな。


「ええ……」


 ただちょっと、親近感のような……なんだろうこの気持ちは。



◇◇◇


「どこだ?ここ」

「しょ。娼館通りなんて……ほんとにこっちから?」

「……多分」


「「不安―!」」


◇◇◇


 そして、そんなことがしばらく続いたと思ったら……


「アラト、あんたはもう帰っていいよ。悪いねえこいつの手伝いさせちまって」

「いえ全然!すごく勉強になりました」

「そうかい、それなら良かったけど。あっそうそう」


 ベルゼさんはこっちに近づいて、小袋を突き出す。

 財布を振ったような音。


「これ、今日のお礼さ」

「ありがとうございます!」

「よし、気をつけて帰るんだよ」

「はい!」


 なんというか、今日一日を褒めてくれたような不思議な感覚。

 ウキウキとしながら荷物をまとめ、部屋を出る。

 一歩一歩が心地いい。


 駆け足気味、階段を下りる。

 玄関に着いた。


 扉を開いたその先にいたのは───


「「「アラトー!」」」

「えっみんなどしたの?」


 いつもの3人だ。

 なんでこんなとこに……

 娼館に用とか、そういうのではないだろうし。


「いやお前こそだよ!」

「え?」

「ほら、昨日約束したじゃないですか」

「んー……」

「忘れた?」

「えっと……」


 必死に頭を回す。

 そう、昨日何か言ったんだ。


 映像。

 巡る度、これでもないと次々と移り変わる。


 一つの画、これが現れた瞬間僕は───


「あっ!」



◇そう、それは昨日の帰り道◇


 何とか、というかみんながわざわざ遅足で帰ってたから普通に間に合い……


「はあ…はあ…やっぱ……一緒に帰ろ」

「おう!」


 4人横並びで一緒に歩く。

 少し暑いけど、夜風が何とも心地いい。


「あ、そうだ!」

 ロゼルの思いついたような声。


「アラト、明日暇ですか?」

「?多分?」

「じゃあ明日、この街の探索でもしませんか?あまり来たことないから、おいしいお店とか見つけておきたくて」

「うんいいよ!楽しそうだし!」

 もちろん行くとも。

 僕自身暮らしのことばっかで精一杯だったから、ちょうどいい機会だ。

 

「じゃあ俺もー!」

「ずるい、私も行く」

「えー……まあいいですよ。みんなで行きましょう」


◇◇◇



「ご、ごめん用事忘れてた!」

 勢いよく手を合わせ、頭を上げる。

 

 なんで僕はその直前までしてたことを忘れてたんだろうか。

 ほんとに、自分の愚かさときたら……


「いや大丈夫ですよ!そういうこともありますよ、うんうん!」

 慰めようと必死なロゼル。

 ほんとに心が痛い。


「そうだぜ!っていうか、何の用だったんだ?」

「えっとなんていうか……事務のお手伝い?みたいなこと」

「私たちを置いて?」「アラトを責めるんじゃありません!」

「ごめんよー!」


 そう、ルーナは易々とは逃がしてくれないのだ。

 いや、これがきっと当たり前。

 約束をすっぽかした僕が圧倒的に悪いのだから。


「よし、じゃあ今日の飯奢ってくれたら許してやるよ!」「こら!」

「え、ほんと?」


 何という折衷案。

 きっと僕のことを思ってもあるんだ。

 こういう隠れたやさしさも、ガレドのいいところ。


「じゃあ今日は奢らせてもらいますっ!」「いえーい」

「い、いいんですか?」

「うん!お金も入ったし!」

「おっいくらだいくらだ?」

「えっとねー」


 小袋を開け、皆でのぞき込む。


「「「「おー!!!」」」」



◇◇◇



「いやあ……困りましたなあ。人手不足といいますか」


 ギルド。喧騒としたギルドの中、静かに呟く者。


「そうですな,、何せダンジョンですし。うーむ、何か良い方法はないものか」

「とは言いますが、拙者らにた、頼れる者など居りはせぬよグフフッ」


 しかし、静かゆえに聞こえてしまうのだろう。


「(おい、あいつらなんか変だよな)」

「(ああ、なんつうか……よくわかんねえっつうかな)」


「フフッままた噂されておりますぞ」

「バッお前バッ!そんなことはい、いいんですぞグフッ」

「うむ、何か良い策はないものか……」


 異質。あらゆる人が集まるがゆえに異質なのか、それとも彼らがか。

 向けられる目には、侮蔑・恐怖・迫害とは別の、何とも言い難い眼差しなのであった。


今回もありがとうございました!

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