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猫とくせ毛と秘密

「起床時間です。起きてください。」


寮の全部屋に女性役員の厳しい声が響き渡る。それと同時に学院生がバタバタとベッドから飛び降り、朝の支度を始める。

私も例外ではなく、学院から支給された制服の袖に腕を通し、ボタンを留めて食堂へ向かう支度をする。

……あれから九年、私はすっかりここでの生活に慣れてしまった。


「ちょっとマリア、くし貸してくれない?あたしのどっかいっちゃったの」

「……別にいいけど、またしまい忘れてシスターに没収されたんじゃないの?」


うちの部屋担当のシスターはきれい好きだからね。

ルームメイトのアティカは赤いくせ毛をうざったそうに私のくしで梳かしている。


「いっつも大変だね~、もういっそのこと切っちゃえば?」

「馬鹿ねあんた、切ったら余計に広がっちゃうわよ」


くせ毛のせいでアティカはいつも朝礼の時間に遅れている。

朝の九時に間に合っているところを、私は見たことがない。


「朝食また遅れてきたらアティカの分も食べとくね~」

「えっ!!ちょっと!!!」


焦った表情のアティカを置いて部屋を出る。私はいつも準備が早いほうなので廊下には誰もいない。

窓から差す光に、朝を感じる。


「……朝ごはん食べにいこーっと」





「……朝礼は以上とする。各自、朝食をとり、十時までには教室へ向かうこと」


間延びした返事をする者、元気よくハキハキと返事をする者、返事すらしない者、さまざまである。

私は朝食の食器をカウンターへ戻し、シスターに「おいしかったです」と伝えあいつを探す。

しばらくうろちょろとしていると目的の人物が目に入った。


「おっはよ〜、クラウス」


後ろから肩にぽんと手を置くと、彼は大げさに驚いてこちらを振り返る。


「なんだ、マリアか。おはよう」


少しいやそうな顔をしたのに私は気づいてるけど、あえて何も言わない。

そういえば、今週の魔法実習はクラウスとペアだったっけな。


「今日の実習、私とペアだよ。楽しみだね!」

「……あ、ああ、そうだな」


どんどん険しくなる顔が面白くて、つい話しかけたくなってしまう。

肩に置いた手を首へ移動する。

するすると撫でられる感触がくすぐったいのか、クラウスは微妙に反応する。


「……要件はそれだけか?もうどっか行けよ」

「…つれないなあ〜、またあとでね。クラウス」


本当に、クラウスは面白い。アティカほどじゃないけど、緩やかなくせ毛も、ちょっと吊り上がった猫みたいな瞳も、面白くてかわいい。


……あーでも、ばれたくないな。絶対言ってやらない。   

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