Ep.1 さるちゃんと夏祭り
初投稿です。
毎日連載できるよう頑張ります!
「さるちゃーん、夏祭り!」
「だな」
講義が終わったと同時にどすり、背中に鈍い重量を感じた。おも。申田は文句を言う元気もなく、昨日から走り続けている音ゲーのイベント譜面を叩いていた。
肩にぐでんと寄りかかっているのは同じサークルの同級生、新戸だ。猫毛の薄い茶髪が、視界の端に移っている。ふわ、とあくびをかみ殺した申田は、譜面が易しくなった瞬間にちらりと新戸を見やった。手元にはひらひらと何かのチラシを持っているようだ。申田は新戸が何かを言っていた気がしていたが、何も聞いていなかったのでとりあえず頷いておいた。
「ちょっと、」
新戸はどうにもそれが気に食わなかったらしい。額にしわを寄せて申田の眼前にそのチラシを提示した。
「夏祭り!!!」
「うん」
「なーつーまーつーり!」
「うるせー」
耳元で叫ばれて意識がそれた。
「あ」
右フリック入力の反応が送れ、450combo!の文字があえなく消えて0からのスタートになる。くそ、ポイントもったいなさ過ぎる。
「ねーえ」
妨害されるのはわかっていたので、ひょいと新戸の手を躱してスマホの画面を閉じた。まあ別に報酬カードさえもらえればそれでいいし。ちょっとぐらいサボったって間に合うはず。
「で?」
ようやく画面から目を外した申田は、肩に顎を載せたままの新戸を見て首をかしげる。わ。すげー不満そうな顔しててウケる。
「だから、夏祭りだって」
「それが?」
「あるの。7月15日に」
「そーなの」
うんともいいえとも言わない返答に、新戸の頬がみるみる膨れていく。
「も~!!!!こんなにかわいい俺が!夏祭りのパンフレットをもってきて、さるちゃんのことウルウルした目で見てるんよ?はい、模範解答は?」
「祭りって人多くて苦手なんだよなァ」
「......ふーん。いいもん。1人で行くもん。きれーなおねーさんと一緒に行っちゃうもんね!申田のことなんて知らないからァ~!!」
「うそうそ、行くよ」
「なぁに、お姉さんってって聞いて妬いたの?」
「や、迷子になって補導されそうだなと思って」
「何歳だと思ってるの俺のこと」