勝也の敗北 ~バスケ編~
「時間がないぞ!」
シュートを決めた勝也は、自陣に戻りながらチームに発破をかけた。
現在は48対48の同点だが、スタミナは明らかに勝也のチームの方が消耗しており、
延長戦になれば不利である。
相手チームの修がドリブルでボールを運んでくる。
絶対に勝つ。
勝也の脳裏に、昨日、修が美奈と楽しそうに歩いていた姿が浮かぶ。
あんな泥臭い修なんかに美奈が惚れるはずがない。
修に勝って、美和を映画に誘うんだ。
勝也は修からボールを奪い、速攻をかける。
修が追ってくる。
勝也はゴール前でフェイントをかけ、修が引き付けられた隙にジャンプシュートを決める。
「ピ、ピー!試合終了!」
修は反動で尻もちをつく。
勝った。勝ったぞ美奈!
コート脇を戻っていると、美奈が小走りでやってきた。
勝也が声をかけようとすると、
「修!惜しかったね」
「いや、完全に俺の負けだよ。あんな技が出るとは思わなかった」
修に駆け寄る美奈。
「何だよ、勝った俺には一言も無しかよ」
「あっ、勝也・・・、おめでとう」
「よそよそしいな。お前ら付き合ってるのか」
「うん、実は昨日から・・・」
照れる修。
「一生懸命練習する修を応援しているうちに・・・」
照れる美奈。
「なっ!・・・そうかよ。幸せにな」
砕け散った勝也。
勝也の方が練習している自負はあったのだが、それを隠す性格が裏目に出た。
何のための優勝だ。
試合に勝って、勝負に負けた勝也だった。