16 戦乱のスタートライン
あ、あ…あ、……な、なんで来ちゃったのよお!!」
青髪の少女はそう叫ぶとじわっと目から涙が溢れ出し、その場の3人は全員泣き続けてしまった。
かなりの時間が経って、僕は溢れる涙を拭きつつ少女に尋ねた。
「君は…?ここは一体?」
すると少女も服の袖で目をぬぐい、ここではなんだからと別の部屋を案内してくれた。
「私はシイナ。よろしく。」
シイナと名乗るその少女はブカブカの白衣を身に纏い、特徴的な長い青髪を持っており、発言からはしっかりしている雰囲気を感じる。
そういえば先に名乗らせてしまったと思い、慌てて僕も自己紹介する。
「僕はハル、こっちはフェルって言います。よろしくお願いします。」
するとトルトは、ハル君のことは知ってたんだーと言いその後、
「で、この場所についてだけど、ここはギル国にある、私の秘密基地だよ。」
僕は驚きで、えっ!と声が出てしまった。僕がさっきまでいたアルセート国と、そもそも国が違う。ギル国と言ったら、アルセート国の隣国だ。なんでこんなところに?と尋ねると、シイナは僕の腕に指を差した。
「それ。」
僕は自分の腕に目を落とすとそこにはアサルトさんに貰った、青のブレスレットがあった。
「そのブレスレットには、術式が組み込んであったの。術者が死亡した時、装着した人を特定の場所へとテレポートさせる術式よ。私はアサルト様がライグウ支部に行く前にここに来て、『もし私に何かあったら、ここに来るであろうハルの手助けをしてくれ!』って頼まれてたのよ。」
アサルトさんは自分を犠牲にして僕達をにがしてくれたということか。
心の中の悲しい気持ちが、だんだん自分に力がなかったことへの悔しさに変わっていった。
「そういえば、他の革命軍の隊員さん達は?」
「残念だけど、全然わからないわ。あの研究所の爆発に巻き込まれてるだろうから、無事かどうかはかなり怪しいかも……。まあそこのお姉さんはハルとくっついてたから一緒にテレポートして来たみたいだね。」
フェルを見るとまだ手で目を覆っている。
「さてと。」
シイナは椅子からヒョイと飛び降りてこちらに歩いて来た。
「君は今からどうしたい?」
「ど、どうって……」
「君には今選択権がある。
一つ目、今日をもって始まった世界戦争から逃げて、終戦か機械共に殺されるまで平和に暮らす。
二つ目、ゴミみたいなミラク研究所とアルセート国をぶっ潰す。
どっちがいい?」
「僕は、アルセート国を…ミラク研究所を倒したい。」
「いいの?その道は茨の道だよ。君は生きていられるかもわからないし苦しいことにも直面する。全部が無駄になる可能性だって大いにあるよ。」
「それでも、僕はやるよ。」
僕の心はブレることはなかった。
シイナは僕の目をじっと見て、ニコっと笑った。
「やっぱり、そう言うと思ってた!アサルト様に似た正義感がとても強い人だ。」
僕はシイナに聞きたいことが山ほどあったが、一番気になっていたことを聞いた。
「僕のお母さんって、あ、アサルトさんなんですか?シイナさんも僕に似てるって言ったし、何より僕のことを自分の子だって言ってたんですけど、僕なんか何も思い出せなくて……」
シイナは少し俯いた後言った。
「……い、いや、それは多分自分の隊員って意味だと思うよ。」
「なるほど、そうだったんですね。」
「じゃあ君達は私の研究室に行ってて。その角を曲がった所よ。私も後から行くから。」
僕らが部屋を出た時、シイナは言った。
「これで…いいんですよね、アサルト様。自分のことを彼に話さなくて…いいんですよね、でも、それじゃあ忘れられてしまったアサルト様が……可哀想過ぎます。いくら彼に影響を与えたくないからって……アサルト様……もっと、、自分のことも……」
部屋から出ていた僕は、よく聞こえずシイナさんに尋ねる。
「あれ、シイナさん、何か言いました?」
「い、いいえ。何にも言ってないですよ。さあ、私の研究室に行きましょう。」
フェルはまだ俯いたままだったが、本当は僕もアサルトさんが死んでしまったということが、まだ受け止めきれていなかった。おそらく、シイナさんもアサルトさんと仲が良かったのだろう。だから、フェルには皆んな何も言わなかった。
「さあ、着いたよ。」
ほの暗く土を削ったような周りの壁に似つかない機械の自動ドアを開くとそこには驚きの光景があった。
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