14 奪って奪って奪って
「アサルトさん!」
「少年!よくここまで来てたな!壁ぶち抜いたら誰もいないものかと思ってたぞ!」
肩に乗った瓦礫を払い落としたアサルトさんはにこにこした顔で僕を見つめてくれた。
「おいアズサメア。私の大事な隊員を虐めるなよ。」
「はっ!何を言う。私は事実を伝えてやっただけだ。」
「ははは!事実だって?お前面白いことを言っていたな!感情の完全な模倣?そんなのお前にできる訳ないだろ!笑わせないでくれよ!さてはお前馬鹿か!」
「!?」
「機械のことしか考えてないお前が人の感情なんて分かるのか!?例えるなら、
1+1も分かってないやつが、微分積分で思いっきり間違えてるのに自信満々で『出来たー』って言って来たような感じだ!実に滑稽だな!」
アサルトさんがアズサメアを挑発する。
「何を言ってるんだアサルト、お前そこの機械人間を見てみろ。そいつは私達が一度殺して、機械と融合させているだけ。つまり人の方は死んでる訳だ。感情がある訳ないだろう!」
「はは!お前がなぜそんなに自信満々で言えるのか疑問だな!」
「どういうことだ!」
「あー成程そうか!じゃあお前は機械人間作成を完成させたと言いたい訳だ!じゃあハル以外の機械人間はどこだ?見せてみてくれよ!」
「……」
黙り込むアズサメア。
「お前は二体目の機械人間を作れていないだろう!」
「!!」
「図星だろう!」
アズサメアが歯を食い縛っている。
実は、僕も感じていたことがあった。僕で機械人間は一度完成して、実験は成功しているはずだ。なのに、どこにも機械人間が見当たらない。なぜ二体目が作られないんだろう。
「アズサメア。ハルで作った機械人間は本来は失敗作だったんだ」
次の瞬間、周りの空気が重くなった。
「ハルが私の子じゃなかったらな」
アサルトさんがアズサメアをものすごい勢いで睨む。
僕はアサルトさんが言っていたことが理解できなかった。
僕が、アサルトさんの子供だと言っていたのか?でも僕にそんな記憶は無い。
「成程……そういうことか。」
「生き返りの輝石!!このガラクタ収集野郎が。」
「ガラクタとは心外だな!お前の不老不死も神具のおかげだというのに。」
「黙れこの邪魔者!!」
アズサメアが怒りをあらわにして叫ぶ。
「そういうことだ。アズサメア!よくもまあ私と私の愛する息子から全てを奪ってくれたな。」
アサルトさんの瞳は、燃えるような赤で染まっていた。
「ここで死ね。アズサメア。」
「悪いが君の望みは叶わないぞアサルト。ここで死ぬのはお前だ。」
「お前達は罪のない人達の命を奪い、私からハルを奪い、ハルから普通に生きることを奪って、一体どれだけ奪えば気が済むんだ。」
アサルトさんのその表情には抑えきれない怒りが見えていた。
「私は全てが欲しいんだアサルト。この世界の物は私の望みの為にあると考えていると言って良い。お前らは邪魔だ。私の望みへの踏み台の分際で邪魔をしおって。」
そしてアサルトさんはこちらを向いて、優しい目をして僕に笑いかけてくれた。
「案ずるな少年。君はしっかりと心を持っている人間だ。私が保証しよう。後ろばかり向かず、前を向いていてくれよ!」
アサルトさんの言葉に気持ちが安らぐ。
「アサルト。今日私が君達を呼んだ理由は3つある。」
アズサメアが話し始める。
「まず一つは、そこの機械人間を頂くこと。だが、もうその必要は無くなった。私の作品ではなかったのだからな。
二つ目はお前だアサルト。お前を此処で殺すことだ。そして、」
「三つ目に、お前らに見て欲しかったんだ。」
アズサメアがニヤリと笑う。
「世界への宣戦布告をな。」
機械とモニターで溢れて冷たいこの部屋が、さらに冷たく感じられた。
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