13 君は機械か。人間か。
黒い視界に光が差し込み、意識が戻ってきた。
「おはよう。」
目が覚めると目の前には男が立っていた。
「ここまでよく来てくれた。」
片腕が僕と同じ機械でできていて、白髪で髭を生やし赤い目をしているその男はギロリと僕を覗き込んだ。
「我が作品よ」
僕が男から感じたのは狂気。これほどこの男に合う言葉はないだろう。
「私はミラク研究所の総司令官アズサメア。よろしく。」
コイツが今までの悪行の元凶か。僕の体を無茶苦茶にしてみんなを危険に晒し、罪の無い人を殺した元凶。横を見ると、まだ意識を失っているフェルがいた。
「まあまあ。まるでそんな怒ったような顔をしないでくれよ。」
僕はエネルギーチャージをしてアズサメアにレーザーを放つ。
そのレーザーはアズサメアの顔を貫いた。
「おやおや。やはり若者は血気盛んですね。」
僕は青ざめた。
貫通した顔がボコボコと膨れ上がり、瞬く間に再生した。
「神具というものを知っているか?」
神具、そういえば1番隊隊長のノースさんも僕に毒の剣をもらったな。
「あれの中には不老不死になる薬という物があってな。」
「私はそれにより、無限の命を手に入れた。」
「私はお前らを見て面白かったぞ。」
「なぜならお前らの野望は一生叶うことはないのだからな。」
次の瞬間、頭がぐわんと動いた。
アズサメアに機械の腕で胸を掴まれ、壁に押しつけられた。
「私は君に聞きたいことがある」
「君はこのようなことを考えたことはあるかい。」
頭が打ち付けられた。
「自分のその意識は果たして人のものなのか…」
「それとも機械のものなのか。」
僕の息が上がる。
頭を打ち付けられたから……?
「君の体を動かしているのは人間の君か?それとも機械の君か?」
問いかけを聞いて頭がおかしくなりそうだ。
僕は、人間じゃなかった……?
「そこの少女に対しての気持ちは人の感情か?」
アズサメアはフェルを蹴り飛ばした。フェルは口から血を吐いている。
「!!!」
僕は激昂して顔が赤く染まる。
暴れようとしても頭を押さえつけられて動けない。
「それとも…」
「人の感情を模倣したただの機械か。」
僕の反応を見てニコニコと笑うアズサメア。
「その怒りもただの『反応』か?」
「どちらだと思う?」
いやだ。知りたくない。
「私はその答えを知っているぞ?」
やめてくれ。
「君の本質は、機械だ。感情を模倣しただけの。」
嘘だ。
「全部偽物だ。お前の感情は。君の本当の感情は『無』だ。」
信じたくない。
「人の君は私達が殺したからな。」
信じたくないよ。
「我々は人をまず殺し、それを機械と合わせ、感情を模倣したAIを搭載しているだけだ。」
僕は人?機械?
「さあ私の初めての成功作品よ。私と共に元へ戻ろう。」
次の瞬間壁で爆発が起きた。ガラガラと壁が崩れ砂埃が舞う。
その向こうに誰かいる。霧が晴れてくる。金色の長髪で探検家のような茶色の服に、武具を全身に装備している。
「それは違うな!アズサメア!」
そこにはアサルト隊長が立っていた。
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