11 ライグウ支部殲滅作戦②
「あゔゔっ」
脳裏に映るのは死。
まだ死ねない。
『シャットダウンまで、残り約1分です』
「はあっ、はあっ、」
動力ユニットが損傷したことによって、息をするのもままならない。
「カハッ、ゴホッゴホッ、」
咳が出たかと思ったら、口から血と青い液体が出てきた。
「ハルさんっ!!」
揺らぐ視界にはフェルの姿が見える。
「フェルっ…」
「あの、私はどうしたら!!」
「一階の…機械兵の死骸の中で、損傷の少ないコアのような物を持ってきてくれ…」
機械兵の動力機構を僕の動力機構と入れ替えれば、復活できるかもしれない。が、そもそも動力機構は抜いて少し耐えられるのか抜いた瞬間死んでしまうのかわからないので、かなり賭けだ。
「はいっ!!」
フェルは階段の方へ走って行った。
今はフェルを信じて待つしかない。少しでもシャットダウンを遅らせるため傷口を手で押さえる。削れた機械の中にも、グジュグジュとした感触があり、その中に心臓のように脈打つものがある。おそらくこれがコアだ。今は暴れず少しでも体液の流出を防ぐ。左目で周りを見るとゴーレムが他のみんなに引き付けてられているが、かなり苦戦を強いられている。銃が効きそうにないので、打開策が無いのだろう
『シャットダウンまで残り約30秒です』
死のカウントダウンとは悪趣味な。
「ハルさんっ!」
フェルが帰って来た。
「ゔ…フェルっ!」
「こ、これですか!?」
その手には、青く輝き脈打つ小さなボールのような物が乗っていた。
「ああ、それだ。それを今僕の手があるあたりに同じような物がある。」
「それを外したら、すぐに新しい物をはめてくれ。」
「はい!」
全身の血液のようなものが体外へ流れる様子は、機械人間となった僕にどれほど影響があるものかわからないが、その様子はまさに血が引けるものだ。周囲には強烈な鉄の匂いがする。
『シャットダウンまで残り約15秒です』
「い…いきますよ!」
グッと胸元を引っ張られる様な感触。
次の瞬間、体の気力が抜けるような感覚と共に息ができない程の痛み。
目の前のこの世界は現実かあの世か。意識を保て!と自分に言い聞かせる。ここで意識が飛んだらもう二度と戻って来れないかもしれない。
次の瞬間、胸の奥に何かが押し込まれた。
真っ暗になっていた視界は、だんだんと色彩を取り戻す。
目の前には、涙を浮かべたフェルがいた。
「私の前で、死んじゃ嫌です」
僕の血で滲んだ赤い左目から、血と混ざった涙が目に溜まった。
「ああ、約束する」
「絶対ですよ!」
右目を閉じると、割れた目玉が周りに刺さった。痛いな。
涙の滲むもう一方の目で戦闘の音がする方を見る。
先程のゴーレムが暴れている。ゴーレムが目からビームを発射すると、起こった砂埃が血の赤で染まる。
早く倒さないと、被害はどんどん広がってしまう。
だが、ゴーレムはこちらに背を向けている。今がチャンスだ。
体は凹んだままだが、好機を逃す訳にはいかない。
加速の準備をし、ゴーレムの背中に飛び乗る。
相手の動力機構に近そうな胸に電撃を撃ち込むと、ゴーレムはゆっくりと前に倒れていった。
近いてみると、ゴーレムの目の部分は、僕の目と同じような目が20個ぐらい集まって1つの目として見えていたことがわかった。
その内の一個をそこから取って自分につける。
『更新点を表示します。』
視覚ユニット1500型→4200型
透視1を獲得しました。
一気に千の位が上がったのは、ゴーレムだったため視覚ユニットの種類が違うのか?
透視1という能力を獲得したが、壁の裏が見えたりするのか?とにかく今は自分の体を心配しよう。動力機構は新しくなったが、いまだに胸は動力機構が丸見えの状態で、大きく凹んでいる。一階に降りて機械兵を探し、同じ位置をくり抜いて自分に付けた。かなり不恰好だが、ないよりはマシな気がする。
「死にかけてた人がっ!無理しなでくださいっ!」
フェルが怒った顔でこちらを見ている。
「少しは自分の心配をしてください!」
「ああ、ありがとう。もう大丈夫だよ」
この戦いが終わった後ドルガさんに、入った瞬間死にかけましたよ。と言ったら、
「行く前にあんなにかっこつけてたのにな!」と笑われそうだ。いや、絶対笑われる!そう思って笑うと口に残った血が出てきて、フェルに「やっぱり無理してる!」と言われてしまった。
大丈夫だと言うと、ほんとですか??と疑われてしまった。
実を言うと怪我は相当痛むが、今回はその足を止めるわけにはいかない。
何としてもミラクの陰謀を阻止し、囚われた人を解放しなければ。
この物語を発見そして読んで頂きありがとうございます
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