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僕と、俺と、私の、春夏冬くん  作者: Q輔
夜夕代ちゃんの文化祭
81/117

81. じれじれ四角関係

★視点★ 櫻小路和音さくらこうじわをん 櫻小路愛雨さくらこうじあいう

 窮鼠。八方塞がり。崖っぷち。僕は、俺になった。春夏冬とキス? あああ、有り得ないっしょ。やい、愛雨、逃げるとは卑怯だぞ。今すぐ俺と入れ替われっちゅーの。あわわ、春夏冬が、焼けるような熱視線で俺の顔を見詰めている。やつの唇がどんどん俺に近づいてくる。

 おい、春夏冬。落ち着け。ほら、よく見ろ、お前が抱きかかえているのは、夜夕代じゃねえ。俺だ。和音だ。間抜け。気付け。とっくに入れ替わってんだよ、バカヤロー。

 ええい、くそったれ、喉に激痛。声が出ねえ。蛇蛇野の野郎、よほど強く首を絞めやがったな。ならば激しくもがいてキスを拒みたい。でも春夏冬が体を押さえ付けるように俺を抱きかかえているから、それも出来ねえ。

 マジかよ、神様。

 嘘だろ、仏様。

 なむさーーーん。

 ぶチュ。

 んんんんんんんんんんんんんんんん。

「ややや、やりやがった。本当に夜夕代ちゃんとキスをするとは」

 焚き付けた張本人の蛇蛇野が、まさかの展開に目を丸くしている。

 息苦しい。温かい。これがキス……………………………………………………………………………てか、なげえよ。いつまで口を吸い続けるつもりだ。おい、春夏冬、いい加減にやめろ。とっとと唇を離しやがれ。

「ね、ねえ、春夏冬くん。人前で照れも無くブチュっとしたけど、ま、ま、まさか君、既に誰かとキスを経験済みとか?」

「いいや、これがボクのファーストキスだ」

 存分に俺の唇を堪能した春夏冬が、目の前で腰を抜かす蛇蛇野に、声高らかに宣言する。

なんじゃこりゃ。なんじゃこの状況。え~っと、ちょっくら落ち着いて整理してみるか? え~っと……夜夕代は、春夏冬のことが大好きで。愛雨は、夜夕代のことが大好きで。春夏冬は、俺たち三人のことが大好きで。春夏冬のファーストキスの相手は俺。ななな、なんじゃこりゃ。なんじゃこりゃああああ。んもう、俺っち、意気消沈――――

――――ども、愛雨です。

 というわけで、いろいろありましたが(いろいろあり過ぎて何が何だかって感じですが)そんなこんなで(どんなこんなで)僕たち二年一組の文化祭の演目「悪役令嬢と陰キャの恋」は、無事に開演を迎えることが出来ました。

 ただし、開演時間になっても肝心の夜夕代は気を失ったまま姿を現さないし、和音は恥ずかしがって姿を現さないしで、仕方がないから、急きょ僕が主役の悪役令嬢を演じる羽目になってしまった。トホホ。

 僕たちは、記憶を共有出来るから、夜夕代が頑張って覚えた演劇の台詞は、僕の口からスラスラと出て来たのだけれどね。なにぶん演じるのが陰キャの僕だからね。我ながら、それはそれは地味でオドオドした悪役令嬢でござんしてね。

 それに加えて、春夏冬くんは、春夏冬くんで、練習の成果を十二分に発揮して、地味でオドオドした陰キャを全力で演じるものだから。舞台上では、陰キャの悪役令嬢と陰キャの王子が、蚊の鳴くような声でボソボソと何やら喋っているという地獄絵図。泣きっ面ですよ、まったくもう。

【登場人物】


櫻小路愛雨さくらこうじあいう 悩める十七歳 三人で体をシェアしている


櫻小路和音さくらこうじわをん 荒ぶる十七歳 三人で体をシェアしている


春夏冬宙也あきないちゅうや 幼馴染 怪物


蛇蛇野夢雄じゃじゃのゆめお クラスメイト 陰湿 悪賢い

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