『ローンデイル騎士学園』~探索終了~
さて、テンテンさんVSレベル30の大剣持ち生徒だが、初動は何度か見た流れで大剣持ちが正面からテンテンさんに切りかかっていく。
正直レベルが上でもあまり知性を感じない動きな為対処しやすそうだ。
それに対してテンテンさん、俺と大体同じ考えなのか先程と同じように『土壁』で大剣持ちの踏み込みに合わせ、足元に小さな土の壁とも言えない塊を発生させて躓かせようとする。
「――――」
「おっと」
流石に先程見た様な魔法に対処する知能は有るのか、大剣持ちは踏み込みから軽やかに跳躍し、テンテンさんに狙いを定め上段からの大振りで切りかかる。
「まぁ無駄ですけど」
テンテンさんは軽く二、三歩バックステップし、大剣持ちの着地に合わせて足が引っ掛かる様に膝下程の小さな『土壁』を発生させる。
着地点に『土壁』を合わせられた結果、不恰好な宙返りみたいな挙動になり、大剣持ちが頭から地面に墜落する。
「ほえー、痛ったそー」
『あれって防御用の魔法の筈よな』
『初戦からすでにはやてちゃんより魔法使いしてる』
『応用が凄い』
『言うてはやてちゃんも結構応用してる』
『それ全部検証班からの助言じゃん』
『やはりアホの子であったか』
『助言無しにアホアホな行動すんのが楽しいんじゃん』
「最後のやつ二人、おい、名前覚えたぞ。ノラと板チョコっての。後で呼ぶから」
『あーあ』
『お顔真っ赤で草』
『簡単に馬鹿に出来なくなったなあ』
『ごめんなさい、嫌です』
『呼べ呼べw楽しそうじゃんw』
『態度が正反対だなこいつら』
まぁ、板チョコくんは後で検証に付き合って貰うとして。
コメント横目にテンテンさんを確認すると、倒れた相手が起き上がれないように下から発生する『土壁』で腕や足を跳ね上げ、隙をついて『風刃』で滅多切りにしている。
ハメじゃん、勝ったわこれ。
と、思うのだが懸念点が一つ。
「テンテンさーん、それ魔力持ちますかぁ?!」
「あー、多分削りきれると思うのですが。管理ミスって負けたら残りいけますかね?」
「ん、流石に余裕でいけると思うので気にせずやっちゃってください!」
「分かりました・・・あっ、言ったそばから魔力尽きちゃいました、ハハッ」
テンテンさん?!
とはいえ相手はもうボロボロである。
テンテンさんが負けても大丈夫だな。
と、思っていたのだがテンテンさんやべぇわ。
大剣持ちが起き上がろうとする度、手持ちの杖で関節や重心が掛かっている部位を狙い払ったり打ち据えたりする事で『土壁』でやっていた事を実行、そのまま杖で殴り続け五分程。
「―――ォ」
「成る程、霊体の様なものなので精神的なものはともかく、疲れも感じませんね。現実でもこの体なら大変便利なのですが」
まさかの無傷で生還である。
腕力もない純魔が殴りで大剣持ち相手に完勝。
もう俺じゃなくて全部テンテンさんでよくね?
大剣持ちが消えるのと同時に演習場の中央に宝箱が現れ、更に前方と後方の扉から解錠する音が聞こえた。
「いや、びっくり。最後の方何か考え事しながら作業プレイだったでしょ」
「何分、単調作業だったもので。後で行う検証の内容を考えたりしてました」
「ほえー、助かるなあ」
『検証班が何でも事前にやってくれるからはやてちゃん思考放棄しちゃった』
『アホ面はやてちゃんかわいい』
『実際検証班のコメントで操られてダンジョン潜った時高効率だったし』
『我々としては自発的に動いてくれた方が・・・』
『ですね、アドバイスする程度なのが一番成長に繋がりますし』
『あ、検証班の人達だ』
『もう保護者じゃん』
「やー、俺としちゃ楽で良いんだけども。今後もお願いしゃす、テンテンさんと検証班の皆」
いいじゃん、操り人形。
正直いつもそれで良いんだけど、この間自分で大まかな方針とかはちゃんと決めなさいって怒られちゃったしなぁ。
「こちらも暇な時は付き合いますとも。とはいえはやてさん、なるべく自分でも常に思考する癖をつけた方が宜しいかと」
「そうね、たまに思考放棄して突っ込んじゃうとこあるもんね、気を付けます」
『たまに?』
『たまにかなぁ?』
『???』
『・・・?』
『はい、今回はコメントの皆さんが正しいので反省して頑張りましょう』
「あい、しゅみませんでした」
大体の視聴者からのコメントは割りとどうでも良いのだが検証班の人達のコメントは割りと心にくる。
でも一応色々と考えて動いてるつもりなんだけどなあ。
ま、いいや(良くない)
「はい、んじゃ切り替えて宝箱の中身だけ確認して撤収すっぞ」
「はやてさん、罠の可能性が有るかもしれませんので私が代わりに解除しましょうか?」
「んー、経験上こう言うイベント報酬みたいな宝箱って罠だった事はないんですけど・・・お願いしても?」
「分かりました、では少し離れて見ていてもらえますか?」
「はーい」
ふと思ったんだけど最近気を抜いている時の返事の仕方が大分年相応になってしまっている気がする。
これはもしや過酷な環境に精神が耐えられずメス墜ちしかけているという事では・・・?
やべぇわ、洒落にならんし気を付けよ。
俺は男俺は男俺は男
「はやてさん?深刻な顔をされてますがどうしました?」
「ん?あ、ああ、うん、対した事ではないので。それで、宝箱の中身はそのそれなりの剣ですか?」
「ですね。因みに罠は有りませんでした。はいどうぞ」
剣を受け取り軽く確認。
分類は多分ロングソードかな?
あー、何かエンチャントされてるのかこれ。
魔力を流して効果を確認っと。
「んー、燃えてんな」
『炎エンチャか』
『ファンタジー』
『何を今更』
『ゲームと違ってエンチャ武器はコスパ悪いらしい』
『そうなん?』
『効果の割には魔力の消費がアレ』
『魔力特化型の人が緊急時に使う位だったんじゃね』
「そうそう、ホントに一部の道具や武器がまともに使える位でな。こいつもそんなに良さそうな剣じゃないし俺の魔力を全部使って20秒位しか持たない炎エンチャも正直微妙。しかもエンチャされた武器って耐久が大体残念な感じなのでこいつは売ってもそっち換算で2万位じゃね?」
『聞けば聞くほど残念感が増していく』
『もう普通の剣でいいじゃん・・・』
『普通の剣の方が売値が高いって酷いな』
『似たような剣売ったときは3万と少しだったよな』
『ゴミでは?』
『そりゃ一回二回の戦闘で壊れる武器なんか産廃だし』
『まさに緊急時専用』
まぁお小遣い程度にはなるし難易度考えてもこんなもんじゃないかね。
後で売りに行こう。
「はい、という事でね。一旦ここらで探索も配信も切り上げてね。拠点まで撤収して諸々の用事を済ませてまた後で・・・お前ら、いま何時?・・・13時な、把握。じゃあ大体三時間後位に検証配信するから宜しく」
「丁度召還時間も切れたみたいですよ。私の体も透けてきました」
「あ、了解です。召還時間は大体30分位かな」
「まぁその辺りも含めてまた後でですかね?」
「ですね。また宜しくお願いします・・・と、いうことでぇ!!一旦終わり!!コラボ配信でした!!配信していたのははやてとー?!」
「え、今までそんなノリで締めてましたっけ?いや、まぁいいんですけども・・・お相手のテンテンでした、では皆さん、また後で」
『急にどうした』
『テンテンさん苦笑いしてるじゃん』
『初めて配信意識して挨拶したなこいつ』
『コラボ(強制)』
『思ったよりテンテンさんのノリが良くて笑った』
『おつはやてー』
『おつはやてー』
【配信は終了しました】