魔界に迷い込んだらなぜか魔王に求婚されているけど(注:思い込みです)、結婚は(ヤンチャな年頃の)未成年だから『まだ早い』~なお、結婚しないとは言ってない(からまだまだお世話になります)
私はストリチナヤ王国の第3王女ストロワヤ、10歳。今は魔王様の城にごやっかいになっている。
ここまでのことを少し話す。うまく言えねーがありのままに話すぜ。
私は第2王子の兄ズブロッカの辺境視察に、ワイルドボアを狩って食べたいと勝手についていったのだが、そこで突然現れたワイバーンに魔界へとさらわれてしまったのだった。キャッホー!
空中散歩を楽しんでいると、途中で魔族っ子どもがアイスアローを撃ってきたのでファイヤーボールで応酬しているうちにワイバーンにうっかり落とされてしまった。
湖に落ちた私に、あのハナタレどもがロックスピアを投げてきたので、トルネードハンマーをお見舞いしてやったら、やるなお前友達になってやってもいいぞというのでこいつらの秘密基地に一泊。
そのあと湖の主を捕って焼いて食べたり、件のワイバーンを乗り回したりしてるうちに自警団と衝突。結局食い物にだまされ捕まってしまい、「こいつは俺たちの手に負えるガキじゃねえ。お城に連れて行くしかあんめえ」とか言って城まで連れてこられた。転移魔法で。
そしてそこは魔王ヘンドリックス様の城でした。…という訳で最初に戻る。
魔王の城。一瞬ヤバいとこ来たんじゃないかと思ったが、ヘンドリックス様は親切に国まで送ってくれるという。
ほっといてもいつか帰るから大丈夫だと言ったら、「頼む! この城の中ならずっといてくれていいから、外には危険だからもう出るな(注:領民が)」と言われる。
え、何これプロポーズ? と思って改めてよく見るとヘンドリックス様の顔はうん、割と好みのタイプ。
でも残念。私はまだ10歳。それに父上の許しも必要だろう。
やっぱり一度帰らなきゃと言うと、プロポーズにOKしたと思ったのか(注:違います)、ヘンドリックス様は安堵の表情を浮かべ、少し涙ぐんでいた。幸せにしてあげたい。
そしてヘンドリックス様は地上に城を転移させ、私がこの城にいることを王国に知らせた。何で城を転移させたかって? だってヘンドリックス様のスゴイとこみんなに見せたかったし(ポッ)。
ただ転移した場所が王都から遠かったせいか、なかなか迎えがこない。
まあ向こうの事情だろうと、私はその間も城内の木に登って生命のリンゴをもいで食べたり、魔物とアームレスリング大会を開いたり、魔石でストラックアウトをしたりと城の生活を楽しんだ。
しばらくして勇者カストリと名乗る一行が城にやってきた。
そしてどこでどうなったのか分からないが「魔王を倒す!」ということに彼らの目的がすり替わっていた。
混乱する私にヘンドリックス様が言う。
「勇者の使命は魔王を倒すこと。そこには理由も理屈もない。そういう人種だというほかない。わしは死んだふりをしてやり過ごす。お前は勇者について国に帰りなさい。
それにこうなっては結婚どころではないだろう。どうしてもと言うなら、時間をかけて父上と話してみるんだな」
うん、分かった。とことんぶつかってみる(物理含め)。
「がはっ! …見事だ、勇者よ」
玉座の前にどうっと仰向けに倒れたヘンドリックス様が、紫の炎に包まれていく。
「終わった…のか? いや、念のためとどめを…」
え? ちょ! ゆ、勇者さま! お会いしとうございましたぁ!
私はさらに追い打ちをかけようとする勇者を押しとどめる。
「え、生きてた? あーずいぶん怖い思いをさせてしまったね。…さあ、帰ろう」
「「「「せーの、勇者サイコー!」」」」
外で立ち止まった一行は、城壁に刻んだ『勇者参上!』の文字をバックに並ぶ。
その姿を私が記録のマジックアイテムを借りて収めた。
「コレやっとかねーと締まんねーからな! じゃあ解散! お疲れさまー」
そう言って勇者一行は歩き出す。バラバラに。
え? 王都に帰るんじゃないの? 私はどうなるの?
そう言うと勇者は決まり悪そうに話し出す。
「あー、俺たちこのためだけの即席ユニットなんだよねー」
「そ。イベントごとの現地集合、現地解散」
「それにそこまでは報酬に入ってないんだよ。契約外ってやつ」
「ぶっちゃけて言うと、あんたこの前まで死んだことになってたし。ぷっ」
ほう? で、ここ笑うトコなんだ…
私は4人を秒で沈め、踵を返す。ごきげんよう。
城にたどり着くと衛兵が血相を変えて城内に飛び込んでいく。
『魔王さま、大変です!』
『一体何事だ!』
『勇者に愛想をつかされた王女が戻って来ました!』
イヤイヤイヤ、逆だから。




