Cafe Shelly クリスマスツリーの下で
街中はクリスマス一色。どこもかしこも電飾で飾られ、お店からはクリスマスソングが流れてくる。
私はそんな中、あるところへと足を運ぶ。三年前に約束をした、あの地へ。果たして彼はやってくるだろうか?それとも結局、私一人なのだろうか?
期待と不安を胸に、12月24日の19時に向けて、私は足を急がせる。もうすぐその約束の時間が迫ってくる。彼との約束の時間が。
街は多くの人であふれている。これから飲みに行こうというサラリーマン。どこかで食事をしようとしている親子連れ。もちろん、カップルもたくさんいる。その多くが街中にある、とある場所に集まっている。ここは待ち合わせの場所としても最適なところ。そして、そこが私と彼の約束の地。
「着いた」
少し早歩きで来たので、息が荒くなっている。吐くいきが白い。それだけ気温も低くなっているってこと。けれど私の体温はとても上昇しているのを感じる。もちろん、運動をしたからというのもあるけれど、それ以上に期待が高まっているから。
私はこの場所に到着し、そして上を見る。そこには巨大なクリスマスツリー。電飾に飾られている、巨大なもの。ここが彼との約束の地だ。時計を見ると18時50分。
「きっと彼はやってくる。うん、ちゃんとやってくる。だって、三年前に約束したんだもん」
そう自分に言い聞かせる。
19時というのは待ち合わせにちょうどいい時間なのだろう。周りでも多くの人が時計を見ながらソワソワしている様子が目につく。友達同士、カップル、家族、会社の同僚など。そして待ち人と合流するや、どこかへ消えていく。その繰り返しだ。
私もあたりを見回して彼の姿を探す。が、それらしい人物はまだ現れない。
仕方ない、そう思っていると目の前のベンチが空いた。さっきまで座っていたのは若い男性。私と同じくらいの年齢かな。その男性、待ち合わせていたのは女性。きっと恋人同士なんだろう。女性が来るや否や、パッと目を輝かせて、笑顔で立ち上がり女性の方へと向かっていった。そして腕を組んでどこかへ去っていった。
私もあんな感じで彼を待ってみたい。その期待を胸に、空いたベンチに腰を下ろした。
そして思い出す。三年前に彼と出会ったときのことを。まだ私が二十歳そこそこだった頃のことを。
彼と出会ったのは、まったくの偶然だった。高校を出て就職をして、まだ二年目の時。会社のおつかいで銀行へ行き、その帰りの出来事だった。
「きゃっ!」
突然の突風。木枯しというものだったかな。その突風にあおられ、手にした書類が飛ばされてしまった。
「あっ!」
やばい。あの書類の中にはお客様に渡す大切なものが入っている。あれをなくすわけにはいかない。
「まって!」
書類を追いかける私。幸いにして書類は道路の真ん中に落ちた。それを慌てて拾いに行こうとした瞬間。
ププーッ
車の警笛。私が道路に飛び出した時に、スピードを出していた車が鳴らした音だ。その時、私はよければ良いものを、体がすくんで動かなくなり、道路の真ん中でフリーズしてしまった。
「危ないっ!」
誰かが叫んだ。と同時に私の体を何かがつかみ、そのまま後ろに引きずられた。
警笛を鳴らした車は、幸いにして私を避けて通ってくれた。そしてそのままどこかへ行ってしまう。私は茫然とそれを眺めていた。
「急に飛び出したりして危ないなぁ。もう少しで車に轢かれるところだったぞ」
その声でようやく我に返った。
「しょ、書類が…」
「あの封筒か。待ってろ」
そう言って男性が書類の入った封筒を取りに行ってくれた。私は道路の端で座ったまま。まだ立ち上がれない。私はとても危険なことをしてしまったということをあらためて自覚した。
「はい。ホントに気をつけてくださいよ」
男性から書類を渡されて、私は申し訳ないという気持ちでいっぱいになった。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言うだけで精一杯。ホント、私ってダメだなぁ。
「じゃ、これで。気をつけてくださいね」
そう言って去っていこうとする男性。この時、私はなぜだかこんな言葉を発してしまった。
「お、お礼させてくださいっ!」
この言葉で男性の動きは止まった。そしてくるりと振り返る。
「お礼って、そんなに気を使わなくてもいいですよ。それに見たところどこかに行く途中なんでしょ。その用事を早く済ませないといけないんじゃないですか?」
「そ、そうなんですけど…でも、私の気が済まなくて。お時間はありますか?」
「ま、まぁ。今日は暇だから街をブラブラしようかと思っていたところだったし」
「じゃぁ、10分くらい待っててください。すぐに用事を済ませてきますから」
幸いにして、この書類を届ける先はすぐ近く。急いでいけば10分も待たせることはないだろう。
「でも、用事を済ませたらすぐに会社に戻らないといけないんじゃないんですか?」
「大丈夫です。うちの会社、少しくらいの寄り道は大目に見てくれるんです」
「まぁ、そこまで言うのなら。そんじゃ、ここで待ってるから」
「あ、どうせなら私が今から行く会社の前まで一緒に行きませんか?その方が時間が無駄にならないですし」
「そうか、そうだね。じゃぁ一緒に行くか」
このときあらためて思った。私、なんて大胆なこと言っちゃったんだろうって。すごく強引な女の子に見えちゃったんじゃないかな。普段はそんな性格じゃないのに。
「きみ、いくつ?」
「えっ、私ですか?二十歳ですけど」
「じゃぁボクより一つ年下だ」
そう言う男性、あらためて見ると私と同じくらいの年齢には見えない。とても落ち着いていて、もっと年上かと思っていた。
「ボクはまだ大学生で。今日は休講があってね。それで暇だから街をぶらぶらしていたんだ」
「お友達とかと遊んだりはしないんですか?」
「友達ねぇ。まぁ普通にいるのはいるんだけど。なんだかあの連中とは今ひとつ合わなくて。多分ボクが変わっている人間なんだろうけど」
「変わっているって、どんなふうにですか?」
「それ、聞きたい?」
「えぇ、ぜひ」
なんだかこの人に興味が湧いてきた。見た目は悪くない。会話も面白そうだし。それに、私が今まで見てきた男性とは何かが違うって感じがする。
「ボクって、子どもの頃から理屈っぽいところがあってね。というか、逆に他の人がどうして物事をもっと理屈で考えないんだろうって、そっちの方が不思議なんだよ」
「理屈で考えるってどういうこと?」
「そうだな、例えばさっき君が書類を風で飛ばされてしまっただろう。あのような時も、どうして大事なものなのに封筒を裸で持ち歩くんだろうかって。バッグに入れて持ち歩けば、あんなふうに風で飛ばされることもないし、汚れることもない」
「そう言われるとそうだけど…」
彼の言葉に、自分の認識の甘さを痛感した。でも、そういう言われ方をすると、なんだかムッとしてしまう。
「今、ムッとしているでしょ」
「えっ!?」
図星だったので驚いた。
「やっぱり。ボクの周りに人が寄ってこないのはこういうところがあるからなんだよ。自分が思っているだけならいいんだけど、その理屈をつい相手に話してしまう。だから相手はムッとしてしまう。しかも、ボクの言っている理屈が合っているから、反論もできない。だから、上部だけの付き合いの友達はいても、親友と呼べるような人ってボクにはいないんだよ」
それを聞いて、なんだかかわいそうに感じた。なんとかしてあげられないかな。
「大学ではどんなことを勉強されているのですか?」
「ボクは将来、裁判官になりたいと思っているんだ。だから法学部に入って、今は司法試験の勉強をやっているんだよ」
「裁判官ですか。なんだか珍しいな。弁護士になりたいっていうのはよく聞くけど」
「確かに、ボクの周りのほとんどは弁護士になろうって連中だ。ドラマの影響で検事になろうってのもいるけど。裁判官になりたいって言っているのはボクくらいじゃないかな。そういった意味でも珍しい人種だと思うよ」
裁判官だったら、理屈で考えるこの人にぴったりの職業だな。この人にさらに興味が湧いてきた。
「あ、この会社です。ちょっとここで待っててくださいね」
私は急いで書類を会社の受付に渡してくる。ものの1分もかからない仕事だ。それをさっさと済ませてさっきの人のところに戻る。
「お待たせしました」
「大して待ってないけどね。それにしても、たったこれだけの仕事に人を使うんだね。どうして宅配便や書留とかを使わないんだい?」
「今日中に渡さないといけない書類だとかいっていましたから」
「だったらバイク便とかもあるのに。わざわざ人件費を使っておつかいに行かせるなんて、非効率な会社だなと思って」
確かに、言われたように非効率な仕事だとは思う。けれど、こうやっておつかいに出るってそんなことだけで考えるものじゃないと思う。でも、うまく反論できない。
「あー、ダメだなぁ。どうしてボクってこんな感じでしか話すことができないんだろう。またムッとしちゃったでしょ?」
「いえ、そんなことは…」
「そんなことはあるよ。だって、顔に出てるもん。この性格をどうにかしたいんだよなぁ」
私も、この人のこの性格をどうにかしてあげたい。なんだかかわいそうに感じてしまう。
「で、どこに行く?」
「あ、そうですね。どこか喫茶店にでも入りませんか?コーヒーでもご馳走しますから」
「そうだね、じゃぁこの通りを歩いて最初に目についたお店にでも行こうか」
今私たちが歩いているのは、街中にある路地。車が一台くらいしか通らない道幅だけど、両側にレンガでできた花壇があって、道もパステル色のタイルで敷き詰められている。通りの両側にはいろんなお店が並んでいて、ちょっとワクワクしてしまうところ。
「あそこに喫茶店らしい看板があるね」
彼が指差したところに、黒板で書かれた看板がある。チョークでコーヒーカップの絵が描いてある。
「じゃぁ、あそこで」
看板に近づいてみる。
「Cafe Shelly、カフェシェリーか。しゃれた名前だね。どうやらこのビルの二階らしい。珍しいな、こういったお店が二階にあるっていうのは」
「そうなんですか?」
「喫茶店なんて、ふらりと立ち寄るようなところだから、普通は通りに面したところにお店を構えるものなんだよ。二階にあるなんて、ちょっとした隠れ家的なところなんだろう。興味が湧いてきたぞ」
へぇ、こういうものに興味を持つんだ。男の人って面白いな。
先行して二階へと上がっていく彼について、私も階段を上がっていく。
カラン・コロン・カラン
扉を開けると、心地よいカウベルの音。同時に漂ってくるコーヒーの香り。その中になんだか甘い香りも含まれている。一気に異空間に入った感じがする。
「いいねぇ、このお店。ちょっとワクワクしてきたぞ」
彼の言うとおり、私もワクワクしてきた。
「いらっしゃいませ。お二人ですか?」
「はい、二人です」
「では奥のテーブル席へどうぞ」
綺麗なお姉さんが私たちを案内してくれる。店内はそれほど広くはない。カウンターとお店の真ん中に丸テーブル席。そして私たちが案内された半円型の大きなテーブル席。
「内装もシンプルでいいねぇ」
彼の言う通り、お店の中は茶色と白で統一されていて、余計な飾りがない。強いて言えば、カウンターの横の方に二色のボトルがずらりと並んでいる。確かこれ、オーラソーマとかいうものじゃなかったかな。
「それに、このいい感じで流れているジャズがたまらないね」
確かに、会話に邪魔にならない程度の音量で流れているジャズは、お店の雰囲気にも合っていて心が落ち着く。
「じゃぁ、コーヒーでいいですか?」
そう言いながらメニューを見ると、思った以上の種類のコーヒーがずらりと並んでいる。なるほど、ここはコーヒー専門店なんだ。そんな中でも、メニューの一番上に書かれているコーヒーに目がいく。
「これ、面白そうだな。飲んだ人が今何を欲しがっているのかがわかるんだって。これにしてみようか」
私も彼が言うのと同じものに目がいっていた。シェリー・ブレンドか。どんな味がするんだろう。
「すいません、このシェリー・ブレンドを二つお願いします」
「かしこまりました。マスター、シェリー・ブレンド、ツー」
「はい、シェリー・ブレンド、ツー」
カウンターを見ると、渋い中年のマスターがコーヒーを淹れる準備を始めている。とても笑顔が素敵なマスターだな。
「ところで、君はどうして今の会社に勤めているんだい?」
唐突な質問だな。
「どうしてって、まぁ高校を卒業するときに地元の企業に勤めたかったから、かな」
「じゃぁ、地元であればどんな企業でもよかったの?」
「どんなってわけでもないけど。そこそこ給料も出て、福利厚生が良くて、自分の希望に合った仕事内容があって…」
「まぁ、それは当然のことかもしれないな。で、それで幸せに働けているかな?」
何が言いたいのかな?疑問に思いながらも、とりあえず思ったことを答える。
「特に大きな不満はありませんよ。高卒の私でもそれなりに事務の仕事をさせてもらっているし。決して高給取りではないけど、そこそこのお給料はもらっているし」
「お金を貯めて、何かやりたいことでもあるのかな?」
「やりたいことって、まぁ普通に買い物をしたり、友達と遊んだり、そんなことに使っているけど」
「それで本当に、この先幸せを感じることができると思う?」
何だか哲学的な話になってきたな。
「それでって、今が幸せならそれでいいんじゃないですか?まぁ、強いて言えばこの先彼氏を作って、そのうち結婚して、幸せな家庭を築いて。そんな人生ならいいかなって思っていますけど」
「なるほど、それが君の幸せの形なんだね」
私の幸せの形。そう言われると本当にそうなのかなって思ってしまう。というよりも、今までそんなことを考えたこともなかったから。
「じゃぁ、あなたの幸せの形ってなんなのですか?」
今度は私が逆質問。すると、彼は神妙な顔つきに変わった。
「実は、それが見つけられなくて困っているんだ」
「さっき、裁判官になりたいって言っていたじゃないですか。それは幸せの形とは違うんですか?」
「裁判官になりたいとは言ったけど。それで人生が幸せになるかといえば、違うんだよね。裁判官はあくまでもなりたい職業。やりたい仕事に就いたからといって、それがそのまま幸せの形になるとは言えないだろう?」
確かに、そう言われるとそうかもしれない。
「じゃぁ、あなたは何をしている時が幸せって感じるんですか?」
「何をしている時、か。それがわからないんだ。強いて言えば、自分の理屈で相手をやり込めた時。これには快感を感じるけれど、幸せとは違う気がする」
確かに、そんな性格で幸せを感じられたら、やり込められた方はたまったものじゃない。できれば遠慮して欲しいところだ。
「ただ一つ、今思っている事がある」
なんだろう?
「今、こうやって君と話をしていると、幸せというものを感じられる気がしている。不思議な感覚だ」
な、なに、この人。さっき知り合ったばかりなのに。これって新手のナンパだったの?
ちょうどその時、店員さんがコーヒーを持ってきた。
「お待たせしました。シェリー・ブレンドです。飲んだらぜひどんな味がしたのかを教えてくださいね」
飲んだ時の味の感想を聞くなんて、何だか珍しいな。じゃぁ早速。
「いただきます」
そう言って、私はコーヒーカップを手に取る。ん、何だか今までに飲んだコーヒーとは違う感じがする。今の仕事を始めてから、職場でコーヒーはよく飲むようになった。また、街の大手チェーンのコーヒーショップにもよく行くようになった。けれど、そんなところのコーヒーとは香りが違う。
そしていよいよコーヒーを口に入れる。コーヒー独特の苦味を感じると思いきや、それが全然違う。何だろう、このホヤッとしたものは。温かみ、そして甘味すら感じる。この時、頭の中に浮かんだのは大好きな人の胸に包まれるという感じ。って、まだそんなこと体験したこともないけれど、ドラマやマンガでよく見るラブストーリーの場面が思い浮かんだ。
あ、これが幸せなんだ。
「これ、本当にコーヒーなのか!?」
その声で我に返った。彼の声だ。
「どんな味がしましたか?」
店員さんが私たちに尋ねる。すると彼が先に答えた。
「最初は香りも良くて、なかなか美味しいと感じたんです。けれど、口に入れると一瞬、スーッとする感じ。熱いコーヒーなのにクールな感じを受けました。ところがその味が突然熱くなったんです。そのとき、頭の中で熱い鉄が浮かんできました。真っ赤に燃える、あの鉄です。鉄は熱いうちに打て、と言いますが、まさにその状況が浮かんできたんです」
「鉄は熱いうちに打て、ですね。そこから何を連想されますか?」
「今、気持ちが熱くなっているうちに、すぐに行動に移せ、という意味ですかね」
「具体的には?」
店員さんからそう聞かれると、彼は一瞬私の方を向いて黙ってしまった。どういうことなのだろう?
「そ、それよりも、こちらの彼女の方の味を聞いてみてくださいよ」
照れ隠しなのか、急に私に話を振ってくる彼。
「では、そちらの方はどうでしたか?」
「私ですか?ちょっと恥ずかしいんですけど、温かみと甘みを感じました。大好きな彼の胸に包まれる。そんな幸せが浮かんできたんです。って、そんな彼はいませんけどね」
言ってしまって、ちょっと恥ずかしかった。今の私にそんな恋愛願望があるなんて、私自身気づいていなかったから。
「なるほど、お二人が今欲しがっているものがこれでわかりましたよ」
「えっ、どういう意味なのですか?」
私がそう店員さんに質問をする。彼もその理由を知りたそうにしている。
「このシェリー・ブレンドは飲んだ人が今欲しいと思っている味がするんです。人によってはそのイメージが頭に浮かんでくることもあります。このコーヒーにはそういう魔法がかかっているんですよ」
「魔法って、信じられない。けれど、確かにそうかもしれない。自分は今、ある思いが心の中に生まれつつあるって気がしていたんです。それをすぐに行動に起こさないといけない」
「じゃぁ、私は素敵な彼が欲しいっていうことなんだ」
そう言ったとき、彼がこちらを見つめているのに気づいた。その顔を見て、急にドキドキしてきた。
「お二人はとてもお似合いだと思いますけど」
店員さん、そう言う。
「いやいやいや、私たちってつい先ほど出会ったばかりで。私が車に轢かれそうになったのを助けてくれたお礼として、コーヒーを御馳走しにきただけですし」
慌てて否定をする。でも、本心じゃない。
「このコーヒーがどんな理屈でそのような作用が働いているのか、それはわかっているのですか?」
彼が店員さんに詰め寄る。
「うぅん、どんな理屈かっていうのはわからないんですけど。でも、このシェリー・ブレンドを飲んだお客様は今の自分に気づいて、そこからいろんなヒントを得ているみたいです」
「理屈はわからない、か。でも間違いなくそういった作用があるのだから。それは受け入れるしかないか」
この人、本当に理屈でなんでも納得しようとするんだな。逆に、理屈が通らないことに対しては、とことん追求していく。確かに変わった性格だ。私なんか、人から言われたらそうなんだって思っちゃうタイプだから。
で、店員さんからお似合いだと言われた時に、私は悪い気がしなかったのはどういう理屈なのか。これについてはもう自分でも気づいている。目の前の彼に対して、好意を抱き始めているから。
理屈家なんだけど、憎めないところもある。むしろ、そんな彼を可愛いとすら思えてきた。まぁ、外見がちょっとカッコイイっていうのもあるんだけど。だからこそ、そのギャップにちょっとだけ惹かれちゃったのかな。
「じゃぁ、今感じている熱い想いは、やはり事実なのか」
「今感じている熱い想いって?」
なんだか意味深な彼の言葉。すると、彼はこちらを向いて、私の目をじっと見つめた。
「君を見ていると、君と会話をすると、なぜだか心の中がすごく熱くなっている。今までいろんな女性と出会ったけれど、なんなんだろう、この熱い思いは。よくわからないけれど、この想いを口にしたいというのが今欲しがっているものなんだっていうのがわかった。このコーヒーのおかげで」
熱い想いって、それって恋って事?いや、まさか、だって出会ってからまだ30分くらいしか経っていないのに。
でも、そう言われて悪い気はしない。だって、私もなんだかこの人っていいなって思っているから。そう思ったら、急にドキドキし始めた。
「でも、ダメなんだ。どうしてこんな想いになったのか、その理屈がわからないから。理屈がわからないものに対しては、納得できないんだ。教えてくれ、どうしてこんな想いになったんだ?」
教えてくれって言われても、恋に理屈なんてない。そのことを言おうとした時、店員さんが先に口を挟んだ。
「恋しているのね。一目惚れっていうものかな。しかも、お互いにそんな想いを抱いているんじゃない?」
私の心も見透かされた。
「これが恋なのか?いや、今までそれなりに好きになった女性はいましたよ。でも、今までのそれとは違う感覚なんです」
彼、なんだか焦りながらそう言う。まるで、今の自分の気持ちが恋であることを否定するかのように。
「どう違うのかな?」
店員さんが優しく尋ねる。すると彼は一度深呼吸をして、目をつぶり冷静に考え始めた。
「まず小学一年生の頃、同級生の女の子を好きになりました。それは優しくて可愛かったから。けれど、その反面誰にでも優しくて自分の方をなかなか向いてくれなかったから、諦めてしまいました。次は五年生の時、転校生の女の子を好きになりました。たまたま帰る方向が同じだったので、よく一緒にいて何でも話をしてくれる人だったから。でも、あまりにもお喋り過ぎて疲れてしまったので、なんとなく離れてしまいました。その後中学からは私立の男子校に入ったので、これという恋愛はしていませんが。強いて言えば担任の先生に憧れを抱いたことはあります。が、周りのみんなと一緒に盛り上がっていただけで、卒業してからはその気持ちも冷めています」
淡々と自分の恋愛遍歴を話す彼。けれど、それは恋と言うにはあまりにも幼稚なものばかりだと思った。
「今度こそは、本当の恋なのかもしれませんね」
店員さんがそう言う。彼は照れ臭そうにはにかんでいる。私もなんだかちょっと気恥ずかしい。
「じゃぁ、これからどうすればいいんですか?本当に彼女に恋をしたとして、どんなことをすればいいんでしょうか?」
私を目の前に、そんな質問をするかなー。でも、これが彼の性格なんだな。彼は理屈でものを考えるから、常に正しい答えを求めていこうとする性格なんだ。恋についても同じなんだな。
「その答えはシェリー・ブレンドに聞いてみるといいですよ」
店員さんのアドバイス。そうか、このコーヒーは今欲しいものの味がするんだった。彼が今欲しいと思っているのは、次の行動だ。すると彼、意を決したようにコーヒーに口をつける。私もつられて、同じタイミングでコーヒーを飲んでしまった。
この時、私の脳裏に浮かんだのはロマンチックな光景。イルミネーションが輝く下で、彼と抱き合っている姿。きゃっ、恥ずかしい。でも、なんだか温かい。
「わかりました」
彼がそう言う。その言葉で我に返った。
「君、お願いがあるんだ。今日の夜、もう一度会えないか?」
「今日の夜、ですか?今夜はちょっと…」
今夜はすでに予定がある。
「じゃぁ、いつなら会える?」
いつなら、そう言われてスマホのスケジュール帳を開く。今日は20日、平日の夜は勘弁してもらいたい。となると今度の土曜日か。
「じゃぁ、今度の土曜日なら。時間は夜がいいんですか?」
「土曜か。昼間はアルバイトが入っているから、できれば夜がいいかな」
「わかりました。じゃぁ、どこで会いますか?待ち合わせなら街中のクリスマスツリーのところがわかりやすいかと思うけど」
「あのデパートの広場のところのだね。じゃぁそこにしよう。時間は夜7時でいいかな?」
「はい、わかりました」
予定をスマホに入れておく。そうしないと、私すぐ忘れちゃうから。
「なんだかこれでデート成立って感じですね」
店員さん、微笑みながらそう言ってくれる。変な出会いだったけど、こういうのも楽しいかも。
「あ、そろそろ会社に戻らなきゃ」
「もうそんな時間なんだね。じゃぁ、土曜日を楽しみにしています」
お金を支払い、私はお店を先に出た。彼と出会ってから、まだ1時間程度しか経っていない。なのに、なんだかウキウキしちゃっている私がいる。でも、よく考えたら彼の名前も連絡先も知らない。そんなことすら聞くのを忘れていただなんて。
その日から土曜日までがとても楽しみになった。おかげで会社でも
「なんかいいことあったの?」
なんて聞かれる始末。私、そんなに顔に出てるのかな?
そうして迎えた土曜日。この日、ちょっとおめかしをして街に出る。どこもかしこもクリスマス色に飾られ、耳に入る音も全てがクリスマス。時計を見ると18時50分。私は少し早めに、待ち合わせの場所に到着した。
彼、本当にやってくるのだろうか。突然あんな約束をされたけれど、彼を信じてもいいのだろうか。少し不安が頭をよぎる。万が一、彼が約束を守ことができない場合、私に連絡をする手段がない。とにかく信じて待つしかない。
時計はもうじき19時になる。ソワソワしながら彼を待つ。周りは私と同じように待ち合わせをしている人であふれている。もちろん、この大きなクリスマスツリーを見にきている人もいる。見上げるとイルミネーションが鮮やかに輝いている。とてもロマンチックな夜。
そして19時。デパートのからくり時計が時を告げる。そのからくり時計は時を告げる回数だけ、ピエロのような人が入れ替わりに出てくるというもの。私はその回数を数える。三回、四回、五回、六回…。
そしていよいよ最後、七回目。
「だーれだ?」
この時、私の両目が突然ふさがれた。ちょっとびっくりしたが、誰なのかはすぐにわかった。
「だーれだって言われても、私、あなたの名前ってまだ知らないんだけど」
「あはは、そうだな。よく考えたらこっちもあなたの名前、知らなかった」
目をふさいでいた彼の手を、私は優しくつかんだ。そして後ろを振り向く。すると、先日会ったときとは違う、にこやかな目線で私を見る彼がそこにいた。
「来てくれないんじゃないかって思っちゃった」
「そんなことはしないよ。時間ぴったりだっただろう?」
「本当あなたって理屈家なんだから」
なぜだか、気持ちの上ではもう何度も会っている恋人のような感覚になっていた。彼の性格、彼の癖が手に取るようにわかる。そんな感じがしていた。
「食事、まだでしょ。何か食べに行こうよ」
「うん」
彼の誘いに従って、私は彼の後ろをついていった。このとき、さりげなく彼が左手を差し伸べてくれた。私はそれに応えるように、右手を彼の手に重ねた。そして彼は私の手をギュッと握りしめる。とても温かい。そして安心できる。
しばらく歩くと、この前行った喫茶店のある通りに入った。
「この通りに美味しいレストランがあるんだよ」
彼の誘いのままに、案内されたレストランに入る。すると、彼はすでにこのお店を予約していた。このレストラン、雰囲気もいいし値段もそんなに高くはない。昼間はランチもあるみたいだし、今度から通ってみようかな。
「あのさ、一つ提案があるんだけど」
食事がすんで、コーヒーを飲んでいる時に彼がそんなことを言い出した。
「こうやって出会ったのはすごく嬉しいんだけど。この先司法試験に向けての勉強を本気で取り組まないといけないんだ。司法試験を受けるために、来年は予備試験を受験。その次の年に司法試験。受かれば一年間の研修期間がある。研修が終わっても、裁判官という仕事に慣れるまでには時間がかかる。だから、三年、あと三年待って欲しいんだ」
「三年…」
「そう、三年待ってくれれば、君を迎えにいける。その自信はある。もし、三年経っても迎えにいけない状況だったら、君を諦める」
「諦めるって、そんな…」
せっかく彼と出会い、彼と一緒に過ごすことができるって思えるようになったのに。ただでさえ三年も待たないといけない。しかも試験に合格しなければ、私を諦めるだなんて。
「なんだか勝手すぎるな」
ボソリとその言葉が口から出てしまった。
「勝手すぎるのはわかっている。けれど、本気で君のことを好きになってしまったから。だからこそ、本気でこの先も一緒に過ごしていくのなら、自分にはやるべきことがある。その壁を突破しないと、君のことを本気で愛してあげることができなくなってしまう」
彼の語っている目は本気だった。わずかな時間しか彼と過ごしてはいないけれど、彼の性格というのはなんとなくわかる。とてもナンパな感じではない。理屈家だからこそ、段階的に障害を突破していかないと前に進めないのだ。
「じゃぁ、三年間はあなたと連絡をとることができないの?」
彼はコクリとうなずいた。
「じゃぁ、三年後にあなたが自分のやるべきことをやったら、私を迎えに来てくれるの?」
「もちろん。出会ってまだ二回目だし、付き合ったとも言えない関係だけど。けれど君のことがこんなに好きになってしまった。そんな自分が信じられないくらいだけれど、それが事実だし。君には自分のワガママに付き合ってもらうようで申し訳ないんだけど」
三年か、長いな。長いけれど、私も彼のことがどんどん気になり出して。
「じゃぁ、一つお願いがあるの。せめて、一緒に写真を撮ってくれない?それを見て励みにするから」
「わかった。じゃぁ早速…」
「ここじゃなくて、もっとロマンチックなところがいいな。あ、待ち合わせしたクリスマスツリーのところ。あそこがいい」
「わかった。じゃぁ早速クリスマスツリーに行こう」
彼は私のリクエストに応えてくれた。そして二人でクリスマスツリーをバックに、私のスマホで写真を撮る。
「この写真、あなたにも持っていて欲しいの。せめて連絡先だけでも教えてくれない?」
「いや、それをしてしまうと自分の決心が揺らいでしまう。お互い同じスマホだから、こうすれば…」
彼はちょっとした操作をして、私の写真を彼のところに移してくれた。
「三年間、君を待たせてしまうことになる。けれど自分はやるべきことをやり遂げて、三年後必ず君を迎えに来る。だから、三年後のクリスマスイブの日、夜7時にこのツリーの下で待ってて欲しい」
私はコクリとうなずくことしかできない。彼は一切妥協を許さない、自分に甘えない、信念に向かって動く。そんな人なんだ。だからこそこの言葉も信じられる。私は彼を信じるしかない。
「もし、もしあなたが三年後にここに現れなかったら…」
不安がよぎる。
「大丈夫、必ず君を迎えに来る。その時に君の名前を教えて欲しい」
彼のその言葉を信じるしかない。私はコクリとうなずく。
すると彼、私のほっぺたを両手で包んでくれる。温かい手。そう思った瞬間、今度は彼の唇の暖かさが私の唇に伝わってきた。
「もうっ、こんなところでっ」
そう言いつつも、嬉しさがこみ上げてくる。
こうして私の三年間がスタートした。それから私は、彼に負けないような女性になろうと思っていろんなことにチャレンジをした。会社の資格試験、民間の資格、そして料理や礼儀作法など。気がつけば20もの資格を取得していた。おかげで会社ではスーパーウーマンと呼ばれるようになってしまった。
会社の仕事ももちろん一生懸命にこなした。周りからは
「我が社初の女性管理職が生まれるんじゃないか」
なんて囁かれたものだ。といっても私はまだまだ二十歳を過ぎた小娘に過ぎない。でも、管理職になるのが目的でやっていたわけじゃない。彼にふさわしい女性になろう、その一心で頑張ってきた。
そしてあと数分で、その彼と再会できる。きっと彼のことだから、三年前と同じようにからくり時計の時報が鳴り止むとともに現れるんじゃないかな。また私の両目をふさいでくるのかな。そのことを考えると、急に胸がドキドキしてきた。
そしていよいよ、午後7時。からくり時計が動き始めた。ピエロのような人が入れ替わりながら時を告げる。
一回、二回、三回…。
私は目をつぶって彼を待つ。きっと、七回目に現れるはず。
五回、六回、そして七回…。
けれど、私の身には何も起こらなかった。うそっ、そんなはずはない。いや、きっと目を開けると彼が目の前に立っている。そうに違いない。
かすかな望みを持って、恐る恐る目を開ける。
怖い、もし目を開けても誰もいなかったらどうしよう。いや、きっと彼はいるはず。笑顔で私の前に立っている。
そして目を開けた時、まったく予想もしなかったものが飛び込んできた。
「やぁ」
彼の声。しかし、その姿は私が予想をしなかったものだった。
「えっ!?」
確かに目の前に現れたのは彼。けれど、その声は私よりも低い位置から聞こえてきた。
「驚かせてしまったね。見ての通りの姿になってしまったんだ」
私が目にしたもの。それは車椅子に座っている彼であった。さらにその車椅子は普通のものとは違う。電動車椅子である。
「ど、どうしたの?何があったの?」
気が動転してしまっていることに自分でも気づいている。けれど、そうならざるを得ない。彼に何があったの?
すると、彼の後ろにもう一人いることに気づいた。それはまだ若い女性。私と同じくらいかな。
その女性、ペコリと頭を下げてこう言い出した。
「ごめんなさい。全て私のせいなんです」
「あ、あなたは?」
「妹だよ」
彼が言う。妹と聞いて安心した。
「兄がこうなったのは私のせいなんです。兄はあなたに会うために、一生懸命勉強しました。そして司法試験にも合格して、いよいよ裁判官になるために研修を受けようとした時に、こうなってしまったんです」
「お前のせいじゃないって。あれは事故だったんだから」
「何があったの?」
「私の運転で兄と出かけたときのことです。私、免許を取り立てで運転したくてたまらなくて。そんなとき、兄を迎えにいく機会があって。その日は雨でした。交差点に差し掛かったとき、赤信号を暴走してきた車が私の車にぶつかって。それで…」
ここで妹さんは泣き出してしまった。
「その時に、自分は助手席に乗っててね。車が助手席にぶつかったんだよ。幸い、妹は無事だったから良かったけど。でも自分は見ての通りの姿になってしまって」
「じゃ、じゃぁ、裁判官になる夢は?」
「残念ながら諦めなきゃいけなくなってしまったかな。何しろこの体だからね」
裁判官になる夢を諦めた彼。じゃぁ、この先どうなるの?
「裁判官になることは諦めた。けれど、法曹界で生きていくことに対しては諦めていないよ」
「えっ!?」
「この体だから、厳しい研修を受けるのは無理だろう。けれど、法律に携わる仕事をやることはできるかなって。例えば行政書士とか。弁護士ほどじゃないけど、ある程度の法律を扱う仕事にはなるしね。もちろん、自分一人の力ではできない。だから今日はそのお願いにも来たんだ」
「お願いって?」
「君に手伝って欲しい。こんな自分の支えになって欲しい。この三年間、君にもう一度会うことだけを考えてここまでやってきた。自分の中のその思いを無にしたくない。こんな一方的な押し付けだけど、無理を承知で君にお願いをしたい」
私もこの三年間、彼に負けないように頑張ってきた。いろいろな資格も取って、仕事でも一人前って言われるようになれるよう努力してきた。その思いを無にしたくはない。
「今すぐに答えを出して欲しいとは言わない。君の一生を左右することになるかもしれないんだから」
私、どう結論づければいいんだろう。この時、三年前に飲んだあのコーヒーのことを思い出した。あのコーヒーに聞けば…。
「わかった。この答えは、あの喫茶店のコーヒーを飲んでからにしたいの。きっとあのコーヒーが私に答えを教えてくれるはずだから」
すると彼、ニコリと笑って妹さんに合図を送った。すると、妹さんは小さなポットを取り出し、中身を私に差し出した。
「きっと君はそう言うだろうと思ってたよ。だから、あの喫茶店にお願いして、コーヒーを分けてもらってきたんだ」
なんと、中身はあのコーヒー。
「私も兄から聞いて半信半疑だったんですけど。実際にこのコーヒー、シェリー・ブレンドを飲んだ時にこうするのが兄のためってことに気づいたんです。ぜひ飲んでください」
私はコーヒーを受け取り、もう一度自分の頭の中を整理した。彼からの要望は、私に今後彼の仕事を手伝って欲しいということ。ということは必然的に、彼とこれからも付き合っていくということになる。私は電動車椅子でないと生活できない彼を支えていくことができるのだろうか。そもそも、彼のことはまだよくわかっていないのに。
けれど、心の奥では何かが見えている。その何かをはっきりさせるために、私は意を決してコーヒーを口にした。そしてしばらく目をつぶる。
すると、頭の中にある言葉が浮かんできた。
「あなたの要望の前に、私の願いを一つ叶えてくれませんか?これが叶うなら、あなたの望みを叶えてもいいかも」
「ど、どんなこと?」
彼と妹さんは、食い入るように私を見つめる。私はニコリと笑い、私の願いを口にした。
「あなたの名前、教えてください」
一瞬、えっという空気が流れた。が、次の瞬間、彼と妹さんは顔を見合わし笑ってくれた。
「ははっ、まだ大事なことを伝え合っていなかった。なんてバカなんだろうね」
「兄さん、ひょっとして名前も知らない人にこんな重要なお願いをしようとしてたの!?」
妹さんは半分呆れた顔をしていたが、私にとってはこれは大きな一歩だった。
「そうだね、自分の名前は…」
クリスマスツリーの下で三年前に誓い合った彼との約束。思ったものとは違う形になってしまったけれど、私はこれでいいと思っている。
これから始まる彼との生活。きっと大変なこともたくさんあるに違いない。それにまだよく知らないことばかりだけれど、三年間ガマンして待っていたことに比べれば、大したことはない。
来年もここに来よう。二人で、いや、いつかは三人、ひょっとしたら四人、もっとかもしれない。そんな日が来ることを夢見てツリーを見上げた。
<クリスマスツリーの下で 完>