登録完了
ギルドで手続きやりました。
目を覚ますと心配そうな受付嬢とドメスが覗き込んでいる。
「登録した途端ぶっ倒れて心配したぞ。」
ダイキが見渡すと冒険者ギルド内の長椅子に寝かされていた。
他の冒険者がそれとなくダイキを見ている。
注目されていると分かって急に恥ずかしくなった。
「そんなに血、駄目でしたか?」
受付嬢が心配そうに聞いてくる。
「こんな倒れるほど苦手では無いはずなんだけど・・・。」
指を少し切っただけで大して血も出してないので貧血とも思えない。
「歩けるか?」
ドメスの問いかけにダイキは起き上がり数歩進む。
足取りはしっかりしている。
「おっし、じゃ、今日は帰って休め。いけそうなら明日から依頼受けてけばいい。」
ドメスがダイキの肩を軽く叩いてギルドの事務室に帰っていった。
「はいこれ、冒険者証ね。これも身分証明書になるから大事にしてね。」
小さなカードサイズの木片を渡される。
ダイキの名前と所属ギルド、ランクFと記載されていた。
「明日からよろしくね~。」
受付嬢も仕事に戻る。
「ふへぇ~。」
ギルドから出て通りを歩く。
暑くはないが日差しが強い。
既に昼を大分過ぎてしまったのだろうか、ギルドに入る前と何となく歩いている人の種類が違う感じがする。
倒れていたのはどれくらいの時間だったのか。
しかも眩暈を起こすとは軟弱だと思う。
一応高校でバスケ部所属でそれなりに運動していたのに。
悩んでも分からないものは分からない。
それよりも腹が減ったので食事を取ることにする。
少し探して小動物の看板がかかった建物に入った。
食事時ではないのか客は居ない。
てきとうな席を選んで座る。
一瞬閉まっているのかと焦るがすぐに店員が出て来た。
壁にかかったメニューの書かれた札を見て決める。
「え~と、牛肉と野菜炒めのパンスープセットで。」
「あいよ。」
しばらくして食事が運ばれてくる。
お箸は・・・無いのでついてきた木製のスプーンで炒め物を食べる。
そこで気が付く。
朝の食事までと明らかに違う。
旨いまずいではなく、明確に味が分かる。
見渡すとなんとなく視界もはっきりしている気がする。
夢から覚めて現実に戻った様な。
この世界に体が馴染んだような感覚。
「さっきの眩暈から・・・なのかな。」
帰ってガルドに聞きたいことが出来た。
陽が傾いて辺りを赤く染める。
駆け足で夜の薄闇が広がるまでひたすら歩いて街中を見て周った。
この城下町はそれなりに活況があるという印象を持つ。
屋台が豊富だ。
今度は食後のデザート替わりに何かの果物の皮を向いて串に刺したものを買って食べた。
苦味が少しあるがパイナップルの様な甘みと香りで美味しい。
200マーニーだった。
「ふむ。」
帰宅すると早速本を読んでいたガルドにさっき起こった事を話す。
少し考える様に手で顎を擦りながらガルドが答える。
「召喚された者がこの世界と強い繋がりを持った時、この世界に正式に組み込まれると聞いた事があります。」
「う~ん、今いちピンとこないんだけど・・・。」
「この世界に慣れた、みたいなものだと思いますよ。いいじゃないですか、気分的にもすっきりしているのでしょう?」
「確かにスッキリした感じはするね。」
そういうもんなのかなと納得する。
倒れてから体調も悪くなってない。
「明日からギルドで受けられそうな依頼受けてみるよ。」
ガルドがおお、と顔をほころばせる。
「何事も前向きに動くのは良い事です。」
そう言って机の上に置いてある、朝ガルドからもらったお金の余りが入った袋を指さす。
「ギルドに行く前に武器防具屋に行ってみてはどうですか?後で少し足しておきますよ。」
「え、いや、そこまで甘えるわけには・・・。」
ガルドが手を振る。
「いいんですよ、このくらい。それに冒険者として最低限の装備はしてないと。」
確かに今のダイキは布の服やズボンでどこから見てもただの町人Aだった。
「う~。分かったよ。この服じゃとても戦えそうにないし。」
そう答えてベッドのある部屋に戻る。
武器、防具選び。
これにワクワクしない訳がない。
ベッドに寝転がってどんな武器を選ぶか考えているうちに寝てしまった。




