呪いの解除
ラーネルからステータスを戻して立ち上がる。
呪いの元凶である植物まで歩いて行って恐る恐る観察してみる。
「これ、根本から切ったらオッケー?」
ラーネルに聞いてみる。
「あぁ・・・。呪いの植物を枯らせば基本この手の人口的な呪いは大丈夫だろう。」
そういいながら腰の鞄から瓶を取り出す。
「ほらこれ。清めの聖水。本来は呪いを受けた人に使って進行を遅らせる状態異常回復用の薬なんだが、一応これを振りかけてから植物を切り取って潰しちまえ。」
「ありがとう。」
聖水を受け取って瓶の蓋を開ける。
無意識に臭いを嗅いでみる。
「おいおい、変なもんじゃねぇよ。清めの魔力を閉じ込めた、ただの水だ。」
[鑑定]してみる。
おお、[聖]属性の魔力なんてものが薄っすら溶け込んでいる。
・・・この世界の常識からすると[水]属性魔法の一種ってところか。
さっきの敵が使っていた斧へ魔力を閉じ込めるのと同じような使い方なのかな?
普通の魔法の使い方と違って魔力を本人が抑え込まなくても物質の中で滞留している。
疲労困憊で座り込みながら回復魔法を使っていたラーネルに見せる。
差し出されて無意識に聖水を見つめる。
「どうした?・・・へぇダイキの目を通すとこう見えているのか。」
「こういう魔法の使い方も出来る?」
ラーネルが眉間に皺を寄せながら考える。
「こういうのって高位の聖職者とか山奥に住む修験者が作るって聞くからなぁ・・・。まぁ魔力の流れを見ることが出来る状態なら、慣れれば出来るかも。」
剣の柄を両手で握り、目を閉じて集中する。
剣に水属性の魔力が集まるが、やがてマーブル状に聖属性の魔力も交じり始める。
圧縮や留めるために普通は抑え込む魔力を使うが、今の状態だと何もしなくても剣の中で魔力が反射しながら外に出てこないようになっている。
これで聖属性の剣を一時的に作り上げた事になる。
「ふぅ・・・。」
しばらくすると少しずつ剣から魔力が漏れ出して元に戻る。
「意外と出来るもんだな。まぁダイキのスキルあっての事だから、一人では難しそうだが。」
ラーネルが嬉しそうに笑う。
つくづく才能の塊みたいな人だな。
聖水を呪いの元凶である植物に振りかける。
呪いをかけている魔力が少し拡散されて弱まったようだ。
ナイフを取り出して根本を切ろうとしゃがみ込む。
「あー、一応根っこも抜いておいた方がいいな。」
すっかり傷を回復させたラーネルが一緒にしゃがみ込んで植物の周りを掘り始めた。
俺もそれに倣って掘る。
あっという間に掘り切るとラーネルが立ち上がって根を残さない様に慎重に植物を引っこ抜く。
抜かれてもまだまだ元気な植物に今度は炎の魔法を当てて焼く。
が、すぐに消えてしまう。
「やっぱ乾燥してない植物は燃えないな。」
ラーネルが呟きながら剣を振り下ろして細切れにしていく。
植物って細切れにされてもそれぞれが生きてるんだなぁ。
ある程度細切れにしたものをまとめて再度炎の魔法をかける。
植物が焼かれていくに従って呪いの魔力も段々薄れていき、ついに植物からは感じられなくなった。
周囲に舞っている花粉も元凶の植物が無くなったおかげで呪いの力を失ったみたいだ。
「何とか終わったな。」
「うん。」
「しかし、魔王軍か・・・。魔王軍ってあんな奴らばっかりなのか?」
分からないが、魔王が日本の文化を知っているのは確実だろう。
その魔王がやろうとしていることが世界征服で、自分の事を悪役だと自覚している、と。
まぁあの魔族の男女の言葉が正しいなら、だけど・・・。
しかし、魔族はこの世界の種族のはず。
それなのにあんなにノリノリで悪役を名乗るってのは忠誠心からだろうか。
何となく彼女達自身に生きてきた背景が感じられない。
魔王の欲望を叶えるだけの存在の様な、作られた存在の様な・・・。
名前も無かったし。
でも人形じゃなく、生きている本物の人なのは確かだ。
「ま、俺達冒険者は前線で戦うわけじゃないから別にいいけど、こんなことが世界中で起こっているなら問題だな。」
「確かに。」
魔王軍との戦いは強いやつに任せておけばいい。
関わり合い
これから向かうボルストンの街も同じような状況だと嫌だな。
何かあっても大きな街ならラーネルみたいな高ランク冒険者が沢山いるだろうから何とかしてくれてると思いたいな。
「さて、町まで戻るか。」
ラーネルが腰に手を当てて首を回してストレッチしながら話す。
「そうだな。みんな回復しているといいんだけど・・・。」
町から出てどれくらいたっただろうか。
俺が町に着いた時点で既に死人が出ていた。
出来れば、あれ以降犠牲者が出ていないといいんだけど。
「あいつらもだけど、ダイキも相当わけわからん存在だからな?」
とんとん、と握った拳で笑っているラーネルに肩を叩かれた。
転移者だし、そりゃあわけわかんない存在だよな。
言わないけど。
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